シン公は、アコの肩に手をまわして抱きよせました。
おんなものの傘は、ふたりで使うには、すこし小さいようです。
シン公の胸に顔をうずめるアコに、シン公のあたたかい体温がつたわります。
シン公の腕にも力が入っていきます。
おもわず、ポッとほほを染めるアコです。
そして、右手を、シン公の腰にまわします。
しっかりと、寄りそいます。
アコのハートが早鐘のように鳴っています。
聞かれはしないかと、心配なアコです。
「よく降るなあ……」
シン公の吐息が、アコの髪にかかります。
アコは顔を上げると、その吐息を思いっきり、すいこみました。
あまずっぱい、レモンのような味です。
アコは、シン公に寄りそいながら、思わず目をとじてしまいました。
シン公の手が、アコの肩に、グッと食いこんできます。
すこし痛いほどです。
いつものアコなら、
「いたいよ、シンちゃん!」。言ってしまいそうです。
でも、アコは嬉しいのです。
その痛みが、シン公の、アコに対する気持ちのように感じられます。
「し・あ・わ・せ」。ちいさく、つぶやいてしまいました。
シン公は、アコのかわいらしいふくらみーまだかたさの残るそれを、体に感じます。
心の中にざわつきを感じながら、歩きます。
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