昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十六) 謝らないでちょうだい

2013-12-27 17:54:10 | 小説
(二)

「とに角ね、お母さんやお姉さんの前では、決して謝らないでちょうだい。
もっともお二人の前では、竹田と口を聞くこともないでしょうけどね。

竹田、あなたに言いたいことがあるの。
あなたの話って、何ていうか、キリというものがないの。

何々して、何々してってね、文が終わらないのよ。
だからね、聞いている方は気が休まらないの。

分かる? まだ何か大事な言葉がでてくるのか? って、
身構えながら聞いてなくちゃいけないから」

「申し訳…あ、いえ、その…。小
夜子奥さまの前だと、どうにも、その、うまくお話ができないというか、その…」

しどろもどろになってしまう竹田。
武蔵の伴侶というだけでは片付けられない感情を抱いてることに、本人自身が気付いていなかった。

「あぁ、でも楽しみだわ。
お母さんのお料理も食べてみたいけれど、何といってもお元気になられたお姉さんよ。

早くお会いしたいわ。正直、あのまま逝かれてしまうのかって心配だったけれど、持ち直されたのねえ。
ほんとに良かったわ」

「はい、小夜子奥さまのおかげでして。
もう言葉もありませんが、家中皆、ほんとに感謝の言葉を並べておりまして。

でも小夜子奥さま、お疲れじゃありませんか? 
お帰りになられたその日に、あんなどんちゃん騒ぎになってしまいまして。

その翌日にまた、こうしてお越しいただこうとしまして。
ほんとに、申し…あ、言いません。
もう言いません。もう、口を開きません」

キッと睨み付ける小夜子をバックミラーに見た竹田。
慌てて口を閉じた。


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