昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十九) あたしなんか、厄介者なのよ

2014-02-06 20:49:41 | 小説
(九)

「でも、でも…。勝利の稼ぎの大半が、あたしの病院代に消えてるし…。
だから勝利、結婚もできないじゃないの。あたしは、あたしなんか、竹田家の厄介者なのよ」

 畳にワッと突っ伏す勝子、肩が大きく波打った。

「何てこと言うんだ、姉さん。
ぼくは姉さんが居てくれるから、変な言い方だけど、姉さんが病気だから、こんなに頑張れるんだ。

怠け者の僕がこんなに頑張れるのは、姉さんのおかげなのに。
姉さんが一日でも早く元気になってくれれれば、ぼくはそれで満足だよ。

だから、そんな哀しいことは言わないでくれよ」

大粒の涙をこぼしながら、絶叫するように竹田が勝子に言った。
場にいる皆が、うんうんと頷いている。

「勝利、ありがとう。ありがとう。
こんなあたしでも、生きてて良いんだよね? 分かったわ、戻る。
あたし、病院に戻るわ。戻って、病身で大人しくしてる。

そして早く退院できるように、頑張るわ。
そうよね。退院したら、楽しいことが一杯待ってるのよね。

小夜子さん、お約束したわよね。
百貨店に行ってお買い物して、それから美味しいものを食べましょうって」


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