昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十)  医師に詰め寄る小夜子

2014-02-11 20:50:50 | 小説
(一)

そして翌日のこと。

「先生! どうなんですか、本当のところは。
勝子さん、回復に向かっているんですか? 退院できる目途は、本当にあるんですか?」
と、医師に詰め寄る小夜子が居た。

身内ではない小夜子に、勝子の病状を話せるわけがないことは分かっている。

「御手洗さん、家族以外の方に話すわけにはいかんです。家族にでも聞きなさい」

木で鼻をくくった態度を見せる医師、それでも小夜子は詰め寄る。
武蔵から多額の金員が渡されていることを知る小夜子だ、無碍な態度を取られることはないと考えていた。

「誰です? 竹田は知っていますか? 聞いても、快方に向かっていますと言うだけですよ。
私には、信じられません。母の最期と同じに感じるんです。
体調は良いのに、微熱が続いて。回復に向かっているように思えた後、突然に逝きました。
何か、その時と同じに思えて」

「お母さんに話してありますから。息子さんには話してくれるなと、懇願されましてね。
それじゃ私は忙しいので。君、御手洗さんのお帰りだ」
と、横を向いてしまった。

「申し訳ありません、患者さんがお待ちですので」
看護婦が戸口に手をかけた。



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