昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四) 麗子からの手紙・二

2015-07-05 08:56:01 | 小説
彼には、「青天の霹靂」の如き文面だった。
思わず消印の日付を確認した。
“麗子さん、僕からの手紙、今の今まで読んでなかったのか?”

大きなため息をつきながら、麗子の指摘に対して
“確かに、言われてみればそうかも。
高嶺の花だった、麗子さんだ。
床の間に飾ってある人形として、見ていたのかもしれない。
だけどそうさせたのは、誰あろう、麗子さん、貴女だ!”
と、反論する彼だった。

急に喉の渇きを覚えた彼は、一時中断して冷蔵庫から麦茶を取り出した。
コップ一杯の麦茶を一気に飲み干した彼は、麗子からの手紙を再度手にした。

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武士さん、お願いです。純真さを失わないでください。
芳しくない噂を聞きました。私には、信じられないことです。
もしそれが本当だとしたら、麗子には悲しすぎます。

私には、無理に虚像を作り上げているように思えてなりません。
貴方をそこまで追い込んでしまったとしたら、麗子は謝ります。
貴方を傷つけてしまったとしたら…。
麗子は、今、後悔の念で一杯です。
本当に、ごめんなさい。
でもね、貴方が悪いのですよ。

武士さん、貴方は優しすぎるの。
でも、その優しさは、本当の優しさではありません。
生意気なことを言うようですが、怒らないで聞いてくださいね。
うぅん、貴方は決してお怒りにならないわ。
麗子には、わかります。

武士さん。貴方には自分というものが、ないの。
麗子には、良くわかります。彼とは、まるで正反対なのですから。
彼にしても、同じなの。
自己が確立していないから、己に自信がないから、いつも怒るのです。
猜疑心が、強いのです。

そんな彼だから、私が付いていてあげなければと、考えてしまいましたの。
でも、それは誤りでした。
今、麗子はその事に気付きました。


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