昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~ (九十四) でかしたぞ!

2014-08-05 09:13:14 | 小説
(五)

「でかした! でかしたぞ! おぃっ、男だ、男を産んでくれたぞ!」
ぐるりと囲んだ男たちに向かって叫んだ。

「いゃあ、おめでとうございます、社長」
「うぉ~お!」

一斉に歓声が上がった。こぶしを突き上げて、声にならぬ雄叫びを上げる者も居た。
「ありがとお、ありがとお!」
受話器を持ったまま満面の笑みを湛えて、もう片方の手を激しく何度も突き上げた。

「婦長さん、ご苦労でした。先生にもお礼を言っておいてください。
お二人には、しっかりとお礼をさせてもらいます。
いやいや、何をおっしゃる。遠慮は無用ですって。
わたしの気持ちなんですから。規則? そんなもの、わたしには関係ないことです。
感謝の気持ちですから。自分だけ? 大丈夫ですって。他の看護婦さんにも、お礼はしますから。
婦長さんは、何時までの勤務ですか? もう帰られる? 
少し待っててもらえませんか。先生にも待っててもらってくださいよ。
これからすぐに出ますので」

受話器を置くやいなや、
「行って来る、今日は戻らんぞ。専務、後を頼むぞ」
と、会社を飛び出した。


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