(四)
「ほんぎゃあ、ほんぎゃあ!」
ひと際大きな泣き声が分娩室に響いたのは、その日の午後に入ってからだった。
分娩室に入ってから、二十時間近い時が流れていた。
幾度となく帝王切開の準備に入ったものの、踏み切れずにいた医師。
大きくため息を吐いた。
「ふーっ。みんな、ご苦労さん。良く頑張ってくれた、上出来だ。
切らずに済んで、何よりだ。婦長、ありがとう。産婆さん、助かったよ。
あんたの声掛けが、功を奏したようだ。ありがとう」
達成感とは程遠い安堵感を感じる婦長、
「頼みますよ、婦長。何とか、帝王切開だけは避けてください」
という武蔵の言葉が、ずっと耳を離れなかった。
「御手洗さんですか? 今、無事に出産なさいました。
えぇ、母子共に健康です。ナスが、ぶら下がってますよ。
体重が、三千グラムを超えていました。えぇ、大きい赤ちゃんです」
すぐに武蔵に連絡を入れる婦長に、医師から声が掛かった。
「御手洗さんかい? 奥さん、よく頑張ってくれましたと伝えておいてよ
。長丁場だったけど、ほんと、頑張ってくれたとね。
傷のない体でお返ししますよ、とね。」
言外に、医師の頑張りを匂わせている。
約束通りに、体に傷を付けることなく出産を終えさせたと、念押しのように付け加えることも忘れなかった。
「ほんぎゃあ、ほんぎゃあ!」
ひと際大きな泣き声が分娩室に響いたのは、その日の午後に入ってからだった。
分娩室に入ってから、二十時間近い時が流れていた。
幾度となく帝王切開の準備に入ったものの、踏み切れずにいた医師。
大きくため息を吐いた。
「ふーっ。みんな、ご苦労さん。良く頑張ってくれた、上出来だ。
切らずに済んで、何よりだ。婦長、ありがとう。産婆さん、助かったよ。
あんたの声掛けが、功を奏したようだ。ありがとう」
達成感とは程遠い安堵感を感じる婦長、
「頼みますよ、婦長。何とか、帝王切開だけは避けてください」
という武蔵の言葉が、ずっと耳を離れなかった。
「御手洗さんですか? 今、無事に出産なさいました。
えぇ、母子共に健康です。ナスが、ぶら下がってますよ。
体重が、三千グラムを超えていました。えぇ、大きい赤ちゃんです」
すぐに武蔵に連絡を入れる婦長に、医師から声が掛かった。
「御手洗さんかい? 奥さん、よく頑張ってくれましたと伝えておいてよ
。長丁場だったけど、ほんと、頑張ってくれたとね。
傷のない体でお返ししますよ、とね。」
言外に、医師の頑張りを匂わせている。
約束通りに、体に傷を付けることなく出産を終えさせたと、念押しのように付け加えることも忘れなかった。
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