昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十九) 一週間お家に居させて

2014-02-04 21:18:36 | 小説
(七)

「だからね、その微熱が出なくなったらって、お医者さまも仰ってたじゃないの。
そしたら退院だって、仰ってるでしょ」

勝子の祈るような仕草に胸を痛めつつも、叶えさせることはできない。
医師から告げられている
「いつ悪化するやもしれません。決してムリはさせないように」
という言葉が、重くのしかかっている。

「じゃあさ、こうしましょ。十日、いえ一週間お家に居させて。
勿論具合が悪くなったら、すぐに病院に戻るし。
お薬だって、キチンと飲むわ。ね、ね、そうさせて。
お母さん、明日、先生にそう言ってきてよ。あたし、お家で待ってるから」

「でもね、勝子。家に居ても、何もできないよ。
大人しく寝てなきゃだめなのよ。そんなの、いやでしょ? 
だから、もう少し辛抱してちょうだいな」

駄々をこねる勝子を叱ることはできない。
ただただ、気持ちを落ち着かせることだけだった。


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