昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十九) 無茶を言っちゃだめだよ

2014-02-03 20:09:17 | 小説
(六)

「姉さん、無茶を言っちゃだめだよ。
先生のお許しをもらわなくちゃ。

とりあえず今日は戻ろうよ。
明日にでも、先生に話せば良いじゃないか」

「勝子。我がままを言っちゃいけません。
もう少しでしょうに、もう少し辛抱すれば、ほんとに退院できるんだから」

「いやよ、もう。かれこれ、ひと月よ。
熱も殆ど出ないし、出ても微熱じゃないの。
それも、夕方でしょ?
動きすぎた時に出るだけなんだから」

三人の間で押し問答が続いた。
ひとり蚊帳の外の小夜子ではあったが、病で亡くした母親のことが思い出された。

いたたまれなくなった小夜子は、そっと部屋を出た。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿