昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (三十二)

2010-12-09 21:03:45 | 小説
ところが事は
そんな生易しい事態では
ございませんでした。
娘を追いかけるように
顧問の先生が
見えたのでございます。
畳に頭をこすり付けての
謝罪でございます。
申し訳ございません、
申し訳ございません、
と唯々
謝られるだけでございます。
娘に傷でも付けたのかと、
気が気でなりません。
妻ですか?
さすがに妻も、
顔を曇らせております。
いえ、
曇らせるどころではありません。
見る見る顔が紅潮して、
怒鳴りつけるのでございます。
どうやら
仲の良い友達と夜の散歩中に、
複数の男達に襲われたようでございます。
幸いにもご友人がうまく逃げだして、
助けを求めたとの事。
未遂に終わったとはいえ、
そのショックは大きく、
失意の中立ち戻ってきたのでございます。
しかし妻は、
はなから犯されたものと決めつけて、
あろうことか
娘を非難致します。
やれ医者だ、
警察に訴える、
と大騒ぎして、
娘の純真な心を
傷つけるのでございます。
私は、
あまりの妻の狂乱ぶりに
呆気にとられておりました。
が、
何とか妻をたしなめて、
その騒ぎを治めました。
私にしても、
はらわたの煮えくりかえる思いではございました。
が、
娘の将来のことを考えて、
この騒ぎは
それで終わりにしたのでございます。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿