昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (七十四) 梅子お姉さんですか?

2013-12-15 10:50:14 | 小説
(七)

「あぁ、あの梅子お姉さんですか? 二三度、酔いつぶれた旦那さまを送ってこられたことがありました。
でも、いつも玄関先でお帰りになられて。キチンとした方なんですね。

旦那さまも、『あいつはじょけつ(女傑)だ!』って褒めてらっしゃいました。
『男だったら、俺の片腕にしたいほどだ』とも」

「やっぱり? そうよね、素敵な女性ですものね。
なんかこう、日本のお母さんって感じがしない?

でんと肝が座ってて、多少のことには動じないって。
あぁいう女性がね、新しい女に目覚めたら、きっとすごいことになると思うんだけどなぁ。

『あたしゃ、そんな難しいことは分かんないよ』って笑い飛ばされちゃったけど。」

千勢には、小夜子の言う新しい女がどんな女性像を指しているのか、皆目見当がつかない。
ただ口酸っぱく言いつづける小夜子を見ていると、こういう女性のことなんだと納得してしまう。

自由奔放に思いのままに行動し、それを周囲に認めさせてしまう女性。
それが、小夜子の言う新しい女なのだと思ってしまう。

もっとも、小夜子にしても新しい女というものを完全に理解しているとは限らない。
平塚らいてふ発刊の文芸誌〔青鞜〕を一読し、それですべてを理解したと思い込んでいた。

「そうそう、一度だけね、ほっぺにチュッ! ってね、してあげたの。
武蔵の嬉しそうな顔ったらなかったわ。

でも、焦らしてるつもりはなかったのよ。
その頃のあたしには決まった人がいて、そのことは武蔵も知っていたし。

だから、足長おじさん位に考えてたの。
それに、アーシアと一緒に世界を旅するとも決めてたし」


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