昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (十一) 牧子より

2015-04-05 11:35:22 | 小説
やっとの思いでアパートに辿り着いた彼は、玄関先の郵便受けに視線をやった。
いつもは空のそこに、白い封筒らしきものが見えた。
「お母さんからかな? そういえば、手紙を出していないや」
手にした封筒には、「ボクちゃんへ」とあった。
「えっ? 牧子さんからだ」
慌てて部屋に戻ると、封を開けた。

ボクちゃん

長いこと、ほったらかしでごめんね。
やっと残業から解放されると思ったのも束の間、実家に急遽帰ることになりました。
勿論、また戻ってきます。

唯、いつ戻れるか…はっきりしません。
というのも、ボクちゃんには話していなかったけれども、父が痴呆状態にあるのです。

母親が介護していたのですが、無理がたたったのか寝込んでしまいました。
入院しなければならないのです

。放っておくわけにもいきません。
隣のおばさんから、電話が入ったの。今から、帰ります。

ボクちゃんを一人にするのは、すごく心配です。
モテモテのボクちゃんだもんネ。

ホントは、ボクちゃんに会って帰りたいけれども、そうもいきません。
ゴメンネ! なるべく早く帰ってきます。

お姉さんの部屋で、お姉さんの好きなシルビー・バルタンでをいてくれなきゃ、厭だかんね。

戻ったら、いっぱい、いっぱい、イチャイチャしようネ。
浮気は、だめだよ。ウフフ… 
                      
大好きなボクちゃんへ                      牧子より 


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