昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (二十九)

2010-12-06 20:57:19 | 小説
しかし、
その頃の私には、
娘の居ない日々は
考えられなくなっておりました。
正直のところ、
毎日の学校ですら
苦痛でございました。
“片時も離したくない”
そんな気持ちでございました。

ですが、
娘のたっての希望
=合宿への参加=を、
頭ごなしに反対する妻に
味方することはありませんでした。
一度は反対いたしましたが、
結局のところ
娘の希望を叶えてやることに
したのでございます。

物わかりの良い父親を
演じてしまいました。
今にして思えば、
やはり反対すべきでしたが。

しかし娘の喜びようといったら、
それはもうありませんでした。
「お父さん、
ありがとう!
大好きよ!」と、
私に抱きついてくるのでございます。
その勢いの余り、
私が後ろに倒れるほどでした。

「好きよ、
お父さん。」と
耳元で囁かれた折りには、
天にも昇る思いでございました。
私の人生において、
この頃が最良でございました、
はい。


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