昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

昭和の恋の物語り (十六)

2013-01-22 21:05:06 | 小説

(十六)

親元を離れての集団就職だと聞いた。
声の小さな娘で、まるで内緒話をしているように見えてしまう。

何でも青森出身らしい。
多分、例の方言で散々からかわれたのだろう。

前の職場では人間関係がうまくいかず、学校の斡旋でこの会社に入ってきた筈だ。
とにかく万事において控えめで、出しゃばるということを知らない。

女子は、こうでなくっちゃ。
会社の寮に入っていたらしいが、今は社長宅で寝泊まりしている。

で、社長の娘であるこの事務員が、お姉さん代わりに何やかやと世話を焼いているというわけだ。

その社長令嬢に対して、俺はため口を利いている。
他の者は、結構敬語を使っているけれども。

皆が皆、俺を変人扱いしている。

「仮にも社長令嬢だよ。
それに年上なんだから、そんな口の利き方はどうかと思うよ。」

例の彼が、ありがたくもお節介に忠告してくれるけれども、そうなると反骨心がムラムラと湧いてくるのだ。


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