次郎吉は、
そんな稲葉小僧という盗人とは異なり、
盗んだ金子等を知人に預けたり、
又隠したりということはしなかった。
そしてなにより、
町家を襲ったりはしなかった。
そのことが、
江戸っ子の人気を博した所以でもあった。
逃亡中に落とした一両小判が、
たまたま貧乏長屋の前であったことから、
「盗んだ金子を貧乏人にバラまく」という噂になったことも、
人気に拍車をかけた。
しかし実の所、
次郎吉も、
町家に一度だけ入り込んだことがある。
七十両を盗んだ迄は良かったが、
その後
「店を閉めてしまった」と聞き、
わざわざ再度忍び込んで、
金子を返したのである。
ある意味、
お人好しの盗人ではある。
もっとも、
町家を敬遠するのには、
大きな理由があった。
大店では生命よりもお金を大事にする習慣から戸締まりも厳重で、
入ることはおろか出ることすら難しい故でもあった。
そんな稲葉小僧という盗人とは異なり、
盗んだ金子等を知人に預けたり、
又隠したりということはしなかった。
そしてなにより、
町家を襲ったりはしなかった。
そのことが、
江戸っ子の人気を博した所以でもあった。
逃亡中に落とした一両小判が、
たまたま貧乏長屋の前であったことから、
「盗んだ金子を貧乏人にバラまく」という噂になったことも、
人気に拍車をかけた。
しかし実の所、
次郎吉も、
町家に一度だけ入り込んだことがある。
七十両を盗んだ迄は良かったが、
その後
「店を閉めてしまった」と聞き、
わざわざ再度忍び込んで、
金子を返したのである。
ある意味、
お人好しの盗人ではある。
もっとも、
町家を敬遠するのには、
大きな理由があった。
大店では生命よりもお金を大事にする習慣から戸締まりも厳重で、
入ることはおろか出ることすら難しい故でもあった。
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