かれこれ二時間近くをその店で費やした。
その間中、配送業務における心構えやら、デパートにおける人間関係を陶々と語った。
人間関係といっても愚痴にも似た事柄もあり、少々辟易することもあった。
社員食堂で女子社員達の噂にのぼる井上像ー生真面目すぎる・固すぎる・冗談が通じない等々ーそのものだった。
しかし井上の言も、至極当然のことのように思えた。
「今の女子社員は、デパートのことが解っていない。単なる大型の小売り店舗ではないんだよ。
物を売っている訳ではないんだ。『夢』を売っているんだ、非現実空間なんだ。
あらゆる商品を揃えているのは何の為だい? 一ヶ所で全ての商品が買える?
それだけじゃない。夢を見てもらう為なんだ。空想のショッピングを楽しんでもらう為なんだ。
『ウィンドウ・ショッピング』という言葉、知っているだろう? なのに、だ。
売り場の片隅でペチャクチャ喋っているなどと言うのは、言語道断だ。
わかるだろう? 俺の言わんとすることが。
まっ、彼女らは結婚までの短期間だという意識がなあ…。
我々男は、家族の為なんだ。必死なんだ」
その井上が、クラブに足を踏み入れた途端の変わり様だ。
二十歳を迎えたばかりの彼にとっては、理解し難いことだった。
ミドリの嬌態を堪能している井上と、デパートにおける井上とのギャップ、どちらが本当の井上なのか。
そしてユミに翻弄されている彼を見ては、
「そうだ、そうだ! もっと迫れ!」
と、けしかける井上でもある。
ユミもまた酔いのせいだろうか、彼がまだ若い故だろうか、攻撃の手を緩めなかった。
その間中、配送業務における心構えやら、デパートにおける人間関係を陶々と語った。
人間関係といっても愚痴にも似た事柄もあり、少々辟易することもあった。
社員食堂で女子社員達の噂にのぼる井上像ー生真面目すぎる・固すぎる・冗談が通じない等々ーそのものだった。
しかし井上の言も、至極当然のことのように思えた。
「今の女子社員は、デパートのことが解っていない。単なる大型の小売り店舗ではないんだよ。
物を売っている訳ではないんだ。『夢』を売っているんだ、非現実空間なんだ。
あらゆる商品を揃えているのは何の為だい? 一ヶ所で全ての商品が買える?
それだけじゃない。夢を見てもらう為なんだ。空想のショッピングを楽しんでもらう為なんだ。
『ウィンドウ・ショッピング』という言葉、知っているだろう? なのに、だ。
売り場の片隅でペチャクチャ喋っているなどと言うのは、言語道断だ。
わかるだろう? 俺の言わんとすることが。
まっ、彼女らは結婚までの短期間だという意識がなあ…。
我々男は、家族の為なんだ。必死なんだ」
その井上が、クラブに足を踏み入れた途端の変わり様だ。
二十歳を迎えたばかりの彼にとっては、理解し難いことだった。
ミドリの嬌態を堪能している井上と、デパートにおける井上とのギャップ、どちらが本当の井上なのか。
そしてユミに翻弄されている彼を見ては、
「そうだ、そうだ! もっと迫れ!」
と、けしかける井上でもある。
ユミもまた酔いのせいだろうか、彼がまだ若い故だろうか、攻撃の手を緩めなかった。
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