人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

フェルメールはカメラを使った?~朽木ゆり子・福岡伸一の対談「深読みフェルメール」を読む

2012年07月17日 06時54分48秒 | 日記

17日(火).今朝起きてもまだ風邪が抜けていないようで,喉が痛み,咳が出て,時々くしゃみも出ます.病院に行って薬をもらわなければ治りそうもありません.おまけに今日は夕方,仕事の飲み会が入っているのです.とてもお酒を飲める状態ではありません.とにかく病院に行かなくっちゃ

 

  閑話休題  

  

昨日は,まだ風邪が抜けきらないので,午前中はベッドで寝っ転がってアンヌ・ケフェレックの弾くエリック・サティのピアノ曲やシン・ヒョンスの弾くドビュッシーのヴァイオリン・ソナタなどのCDを聴きながら新聞や本を読んでいました ケフェレックはラ・フォル・ジュルネ音楽祭で毎年来日しているし,リサイタルも毎年のように開いているので日本人にも親しみ深い女性ピアニストです.彼女の弾く音楽はモーツアルトもバッハもベートーヴェンも,もちろんサティもみんないいです

 

          

 

          

午後は重い腰をあげて池袋に出かけました.というのは,3日ほど前,テレビのスイッチを入れたら,いきなりバリバリッという音とともに火花のようなものが出たので,これは危険だと思ってすぐにスイッチを切ったのです あらためてテレビの保証書を引っ張り出して見ると1996年11月13日発行とありました.まだ10年も経っていないと思っていたのに,16年近くお世話になったわけですそういえば,今のマンションに引っ越してきてから間もない頃に買ったのを思い出しました

というわけで,体調の悪い中,バスで池袋に出かけました.Bカメラの3階にあるテレビ売り場で品定めをして,結局,最近買ったブルーレイ・ディスクプレーヤーに合わせてPブランドの32インチ・テレビを買いました 一昔前はン十万円もしたものが,今では7万円ちょっとで買えます.古いS社のテレビを引き取ってもらうのに3,360円かかるとのことですが,リサイクル法上しかたありません  

学生時代,電気店でS社からの派遣アルバイトとして働いていたご縁で,2台続けてS社製のトリニトロンTVを使ってきましたが,当時”世界のS”と言われていたS社も,今やテレビ機器業界では見る影もありません.私もこれでS社製品とはお別れです.さびしいです 復活はあるのか”世界のS”

 

   も一度,閑話休題  

 

2~3日前の朝日新聞に「真珠の耳飾りの少女と私」という連載コラムが載っていて,生物学者・福岡伸一氏が次のように書いていました

「最も有名なフェルメールの作品”真珠の耳飾りの少女"の最も深遠な謎は,おびえているようでもあり,つややかな決意を秘めているようでもある彼女のまなざしが,いったい何に対して投げかけられているのか,ということです マウリッツハイス美術館の一室でこの絵を観た私には,その答えが自然にわかりました.彼女は,対面の壁に掛けられていたフェルメールのもうひとつの傑作”デルフト眺望”を観ていたのです」

 

  さらに,閑話休題  

 

朽木ゆり子と福岡伸一の対談「深読みフェルメール」(朝日新書)を読み終わりました 朽木ゆり子氏はノンフィクション作家で「盗まれたフェルメール」などの著書があり,福岡伸一氏は生物学者で「生物と無生物のあいだ」などの著書で有名です.この二人の共通点は,美術の専門家ではないが,フェルメールに強い興味を持ち,行方不明の≪合奏≫を除く全ての作品を実際に観た経験を持つということです

朽木さんのところにフリーライター中沢明子さんから「福岡伸一さんと対談しないか」という誘いがあり,対談をして今年2月の「アエラ」に載せたところ好評だったので,その後,2日間にわたり再び対談をした.それをまとめたのがこの「深読みフェルメール」であるとのことです

フェルメールの絵のモデルは誰か? フェルメールはカメラを利用したか? フェルメールの偽物はどれか? など,興味深い内容ばかりです.私が一番面白いと思ったのは「フェルメールはカメラを利用したのか?」というテーマです

レーウェンフックという人は顕微鏡を発明した人ですが,「カメラ・オブスクーラ」という機械も発明しました.福岡氏の説明によると,

「ピンホール(針穴)写真機に似ている箱型の光学装置で,レンズを利用して集光し,反対側のすりガラスまたは暗くした壁に,風景や部屋の配置や遠近を正確に2次元平面に写し取ることができる機械です 映し出された像の輪郭がぼやけるのが特徴で,この曖昧さがかえってニュアンスをもたらし,とても良い雰囲気に見える.フェルメール作品に感じる奥ゆきの深さに通じる美しさがあります

という機械です.フェルメールは「カメラ・オブスクーラ」を使って遠近法を研究していた レーウェンフックは同時代にフェルメールと同じオランダ・デルフトに住んでおり,2人の間に交流があったのに間違いないということです.これは非常に興味深いことです

もう一つ面白いと思ったのは,フェルメールは生活のために絵を描く必要がなかったらしい,ということです 福岡氏は次のように発言しています.

「どれくらい儲かっていたかわかりませんが,フェルメールは画商でもありましたよね.ファン・ライフェンというパトロンもいたらしい.《真珠の首飾りの少女》のターバンに代表される”フェルメール・ブルー”を出すために,当時,金よりも高価だった宝石のラピスラズリをふんだんに使っていたことのも珍しいこと つまり,さまざまな事情から想像すると,フェルメールは”絵を売って生計を立てる”ために量産する必要がなかった可能性がある フェルメールの妻カタりーナ・ボルネスの家は裕福で,お義母さんのマーリア・ティンスはお金持ちだった.そして,フェルメールは妻の実家に引っ越してから,プロの画家になっています

長い絵画史の中にはゴッホのような人もいるし,フェルメールのような人もいるのですね.同じ画家なのに生活の状況はまったく異なっています

さて,冒頭に紹介した福岡伸一氏の言葉は,この本の「あとがき」にも登場します この本を参考に,近々上野の東京都美術館に「マウリッツハイス美術館展」を観に行こうと思います

 

 

          

コメント (2)
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