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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

テイラー・スウィフトを追うドキュメンタリー「ミス・アメリカーナ」を観る ~ Netflix / 中山七里著「おわかれはモーツアルト」を読む ~ 盲目のピアニストの練習室で起きた殺人事件の謎を追う

2024年02月13日 06時43分23秒 | 日記

13日(火)。 昨日、Netflixでラナ・ウィルソン監督「ミス・アメリカーナ」(85分)を観ました これは2020年1月からNetflixで配信されたアメリカのシンガー・ソングライター、テイラー・スウィフトのここ数年に迫ったドキュメンタリーです

どうでもいいことですが、腰痛のため長時間座るのは腰に良くないので、85分間立ちっぱなしで観ました

 

     

 

私がこのドキュメンタリーを観ようと思ったのは、「トランプ前米大統領が11日、SNSへの投稿で彼女に言及し『米史上最も腐敗した大統領である悪徳ジョー・バイデンを彼女が支持するなどあり得ない』と述べた」というニュースを見て、「米国民の約半数が熱狂的に支持するトランプに 大きな影響力を及ぼすテイラー・スウィフトとはどんな人物なのか」と興味を抱いたからです

この映画は16歳でデビューしてから30歳に至るまでのテイラーの音楽活動を通して、彼女の人間としての成長を捉えています

映画は彼女が13歳からつけていた日記の話から始まります 保守的な気質の土地で育ったクリスチャンらしく、「子どもの頃からの倫理観は良い人と思われること」で「正しいことをすること」と日記に書いています。これが彼女のその後の生きる上での指針となります

2018年のアメリカ中間選挙の時、彼女は地元テネシー州共和党の女性候補があまりにも時代遅れの差別主義者だったことから、周囲の反対を押し切って初めて政治問題に言及し、若者に選挙に行くよう呼びかけますが、民主党は破れ共和党のその候補が当選します 彼女はその悔しさを託した新曲「Only The Young」を発表します 2020年の米大統領選挙ではトランプを批判しバイデンを支持することを表明し、大きな話題となりました トランプの11日の投稿はこのことが背景にあったからです

彼女はセクハラを受け、裁判に訴えるという事件も経験します

また、彼女はデビュー当時、長身で細身というスマートなスタイルで若者の憧れの的でしたが、その裏では摂食障害という問題を抱えていたことも明かされます ある時期、彼女は「周囲からどう見られているかに振り回される必要はない 完璧じゃなくてもいい。自分らしくしているのが一番 食事をとる事こそが力の源だ」と自覚します それ以来、多少ふっくらした現在の身体で活躍しています

映画の中で本人も語っていますが「聴衆とともに成長してきた」ことが、世界中の多くのファンがいつまでも彼女から離れない要因ではないか、と思います

さて、今年11月の米大統領選について沈黙しているテイラーさんですが、今回は何らかの発言があるのでしょうか 世界中が見守っています

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で3317日目を迎え、米ABCテレビなどが11日に発表した世論調査で、11月の大統領選で再選を目指す民主党のバイデン大統領(81)が高齢過ぎて2期目を努められないとの回答が86%に達したが、一方、トランプ前大統領(77)も含めて高齢過ぎるとの回答が59%だった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     年齢だけじゃないと思うけど 最近バイデン氏の失言が多いからね  迷える米国民!

 

         

 

昨日、夕食に「豚肉のクリームシチュー」「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました 寒い夜はシチューですね

 

     

 

         

 

中山七里著「おわかれはモーツアルト」(宝島社文庫)を読み終わりました 中山七里は1961年岐阜県生まれ。「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞・大賞を受賞し2010年デビュー それ以降、「おやすみラフマニノフ」「どこかでベートーヴェン」「いつまでもショパン」などの音楽シリーズをはじめ、「御子柴礼司」シリーズ、「刑事犬養隼人」シリーズ、「ヒポクラテスの誓い」シリーズなど著書多数。その速筆は「中山七里は七人いる」とまで言われています

「全盲でありながらショパン・コンクールで第2位に入賞したピアニストの榊場隆平は、クラシック界の話題の中心となり人気を集めていた しかし、「榊場は、本当は目が見えているのではないか。自身の価値を上げるために障害を利用したフェイクではないか」と根も葉もない話をでっち上げるフリーライター寺下博之の登場により、コンサート本番でトラブルが発生し、遂に事件が起きる 隆平が暮らしている家の練習室で銃殺された寺下が発見されたのだ 榊場はヒーローから一転、殺人犯として疑われる立場に陥る そんな彼のもとに榊場同様、ショパン・コンクールのファイナルに名を連ねた岬洋介が、友人の窮地を救うためやってきて、謎解きに挑戦する

 

     

 

全盲にも関わらず世界的なコンクールで優勝した人気のピアニストと言えば、2009年「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行(1988年生まれ)を想像します また、「フェイク」という点では、聴覚障害でありながら交響曲やゲーム音楽を書いたとして脚光を浴びたものの、実はゴーストライターによる作品だったという1990年代の「佐村河内守 事件」を思い起こさせます   おそらく、中山氏はこの2つを要素にプロットを構成したのではないか、と思います

こんなことを書くのは不遜かもしれませんが、私はかなり早い段階で真犯人を当てていました 犯人がなぜ寺下を殺したのか明確な理由は分かりませんでしたが、寺下と真犯人との複雑な関係が最後に明かされるのだろうな、と推測していました これまで何十冊も中山作品を読んできましたが、こんな経験は初めてです 実際にお読みになって犯人捜しをしてみてください

さて、デビュー作「さよならドビュッシー」から続く音楽シリーズを読んで、いつも感じるのは「中山七里は本当に音大も出ておらず、楽譜も読めないのか」ということです

ストーリーでは、主人公の榊場はモーツアルトのピアノ協奏曲第20番、第21番、第23番の3曲を引っさげてコンサートツアーに臨むことになりますが、作曲者のモーツアルトのこと、それぞれの作品のことなどを含めて、中山氏はクラシック音楽全般に関する深い知識と独自の見識を持っていることに驚きます

例えば、モーツアルトの楽曲の特性に関して、指揮者でピアニストのアンドレ・プレヴィンがピアノ曲について語った言葉を紹介しています

「モーツアルトは指揮しようがピアノを弾こうが、とにかく演奏家にとって非常に難しい作曲家だ 確かに楽譜は簡潔、音符も決して多くない。しかし、その一つ一つの音の中に様々な意味が込められている 従って技巧としては簡単かもしれないが、フレーズ一つでも何百通りもの解釈が可能であり、だからこそ難曲なのだ あなたが世界中の指揮者に訊けば、みんなモーツアルトが一番難しいと答えるのではないか

これはモーツアルトの音楽の本質を突いている言葉です また 中山氏は、モーツアルトが活躍していた時代背景との関係で彼の音楽の特徴を述べています

「モーツアルトの時代、作曲家を含めた芸術家たちは教皇や貴族といった権力者をパトロンとして活動していた そもそもモーツアルトが幼い頃から各地を巡業していたのはパトロン探しが主たる目的だったくらいだ 当然、創作物の方向はその時々の流行やパトロンの趣味に左右される。モーツアルトの作品の多くが明朗な長調であるのは、その時代ひいてはパトロンの注文が明朗さを求めていたからだ

上記のことはある程度調べれば誰でも書けることかもしれませんが、音楽の描写については誰でも書けるレヴェルではありません 次の文章はモーツアルト「ピアノ協奏曲第21番K.467」の有名な第2楽「アンダンテ」を榊場が演奏しているシーンの(途中からの)描写です

「・・・次第に鍵盤を弾いている感覚も薄れ、ピアノの音にフルートとホルン、そして弦楽五部が静々と寄り添ってくる 転調すると、いったんメロディは立ち止まり、辺りを窺うようにそろそろとまた踊り出す。展開部に差し掛かると、メロディを短調に変え、哀しみの色を帯びさせる。優しげな転調とともに三連符が一瞬途切れる。隆平はこのフレーズが甚く気に入っている 明朗と哀愁、長調と短調、陰と陽。著名な音楽評論家はこの部分を『異様』と表現する。長調でありながら哀しいというモーツアルト独特の世界だ 相反する二つの要素が絡み合い、音楽でなければ形容できない感情を創生している

こういう文章は書けない 「目に見えない音楽を文字として表現することの難しさ」は、音楽評論家の方々だけでなく ブログを書いている私も痛感しています それを評論家でもない中山氏はいかにも自分が演奏しているかのように生き生きと文字で表現しています

ヘタなクラシック音楽入門書を読むより、本書を読む方がよほど面白く、意図しないうちに音楽の知識が身に着きます そういう意味でも、クラシックファンに限らず広くお薦めします

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