人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

オペラの「演奏会形式」広がる~日経の記事から/藤谷治著「世界でいちばん美しい」を読む

2016年12月11日 09時03分46秒 | 日記

11日(日).昨日の日経朝刊・文化欄に文化部・岩崎記者による「オペラ  音楽だけの魅力 舞台演出なし『演奏会形式』広がる」という見出しの記事が載りました.超訳すると

「舞台装置や衣装を用いず,オーケストラがピットでなくステージで演奏する『演奏会形式』のオペラが,有力オケの公演で目玉演目として扱われるケースが増えている 歌劇場が少ない日本で,オケの表現の幅を広げる手法として定着しつつある.N響は名誉音楽監督シャルル・デュトワがビゼー『カルメン』を取り上げる(12月9日,11日).17年9月には首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィが演奏会形式でモーツアルト『ドン・ジョバンニ』を,18年には生誕100年を迎えるバーンスタイン作品を予定している 読売日響は昨年の『トリスタンとイゾルデ』に次いで,17年11月,サントリーホールとびわ湖ホールで常任指揮者カンブルランの指揮でメシアン『アッシジの聖フランチェスコ』を演奏会形式で上演する 東京フィルは昨年5月のプッチーニ『トゥーランドット』,今年10月のマスカーニ『イリス』に次いで,バッティストーニの指揮で来年9月にヴェルディ『オテロ』を取り上げる 演奏会形式は,オペラの音楽的側面を強調するのに有効であるのに加え,上演のためのコストも舞台オペラに比べると低い

私がこれまで聴いた演奏会形式によるオペラの上演で強く印象に残っているのは,数年前に東京シティ・フィルが飯守泰次郎の指揮で上演したワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」シリーズです ”ワーグナー指揮者”飯守泰次郎の名を不動のものにし,東京シティ・フィルのイメージを一段と高めた公演でした

もう一つは,これもワーグナーですが,毎年3~4月に上野で開催されている「東京・春・音楽祭」の「東京春祭ワーグナー・シリーズ」です 演奏はヤノフスキ指揮NHK交響楽団ですが,毎年 歌手陣が凄いのです ヤノフスキの指揮のもと,来年は「神々の黄昏」が上演されます

今日の午後,池袋の東京芸術劇場コンサートホールでジョナサン・ノット指揮東京交響楽団によるモーツアルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」を演奏会形式で聴いてきます アンサンブル・オペラの傑作を十分楽しんできたいと思います

ということで,わが家に来てから今日で803日目を迎え,廊下のCDラックの前で何かを期待して立ち上がるモコタロです

 

          

            何か芸をやればオヤツがもらえると言われたんだけど・・・

 

 

          

              立ってみたけど 何ももらえなかった  これが本当の立ち往生

 

  閑話休題  

 

昨日の夕食は「豚バラと白菜の味噌鍋」にしました.寒い冬は鍋ですね

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

藤谷治著「世界でいちばん美しい」(小学館文庫)を読み終わりました 藤谷治著は1963年東京生まれ.2003年「アンダンテ・モッツアレラ・チーズ」でデビューし,本作「世界でいちばん美しい」で第31回織田作之助賞を受賞しました 私がこの本を買おうと思ったキッカケは,本の帯に書かれていた「織田作之助賞受賞作」と「若き天才音楽家せった君の30年の人生」という”売り”言葉です

 

          

 

この小説の主人公は雪踏文彦(せった ふみひこ)です.周りの者は親しみを込めて彼を「せった君」と呼んでいます.幼い頃からの親友である島崎哲が,愛すべき「せった君」について語っていきます

いつもぼんやりしている「せった君」だったが,幼少期からピアノの演奏,その後作曲へと音楽の才能を発揮した それは音楽の英才教育を受けてきた島崎が嫉妬するほどの才能だった.中学・高校と違う学校に通うようになり 交流の機会が減ってきたが,大人になって「せった君」がアルバイトでピアノを弾く鎌倉のバーで頻繁に会うようになる そこで,「せった君」は永沢小海という女性と出逢い愛し合うようになる.一方,その小海の元カレ・津々見勘太郎が彼女を追ってそのバーに現れる 3人がらみで火災事件が発生して「せった君」は焼死してしまう.その後,島崎哲は小説家となり,永沢小海はキリスト系の団体に勤務するが,事件のショックから立ち直れないままでいる 彼女は毎年1月31日の「せった君」の命日にブラームスの「ドイツ・レクイエム」を聴くのを習慣にしている 「せった君」はオットー・クレンペラー指揮による「ドイツ・レクイエム」2枚組のLPを大切にして聴いていたのだった

この小説では,純粋無垢な「せった君」と,世の荒波にもまれ傷だらけになってもがく津々見勘太郎の対比が鮮やかに描かれています.大島真寿美氏の「解説」によると,語り手の島崎哲は作者である藤谷治氏を彷彿とさせる人物であるそうです 「音楽家の一族として生まれた者として,いくぶん屈折した音楽との関わり,長じて,得る職業・・」と書いています.音楽に関する記述を読むと ピアノ演奏をはじめ,相当な知識と経験がなければ書けないだろうと推測します

音楽好きはもちろんのこと,そうでない人にも広くお薦めします

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「マダム・フローレンス!夢みるふたり」を観る~絶世の音痴歌姫/佐藤正午「書くインタビュー2」を読む/本を6冊買う

2016年12月10日 10時27分51秒 | 日記

10日(土).昨夜,元の職場が入居している内幸町のNPCビル地下の焼き鳥OでW調剤薬局主催のクリスマス・パーティーが開かれ,参加しました 毎年12月の第2金曜日に開かれている会ですが,OBの私にも元の職場を通じてお誘いの声がかかりました

地下鉄内幸町駅で降りると,見たことのある顔に遭遇しました.元職場NPCのビル警備隊長S君でした.人事異動により来月から新しい勤務地に移るとのことでした.NPCビルは内外VIPの記者会見をはじめ他のビルにない緊張感のある警備が求められますが,S君は約10名の警備員を統率して本当に良くやってくれました ありがとうございました.新しい勤務先でも今までの経験を活かして頑張ってほしいと思います

開宴まで時間があったので9階記者クラブのラウンジに行ってみたら,T監査役,元職場OBのS氏,今年6月の株主総会で任期満了で退任するU顧問,今年いっぱいで定年退職する元E部長,先日このビル10階のレストランで結婚披露パーティーを開いたK君が歓談していました しばらくビル周辺のテナント情勢について歓談し,地下に下りました このパーティーの”お楽しみ”は「プレゼント交換会」です.参加者は各自2000円程度のプレゼントを用意し受付で渡して番号札を受け取り,後で全員が三角くじを引いて 書かれた番号のプレゼントを受け取る,というシステムです 私はW調剤薬局Tさんからのプレゼントが当たりました.家に帰って開けてみると「全国温泉の素セット」でした Tさん,ありがとうございました

私は一番奥の席で,U顧問,OBのS氏,元E部長と飲んでいましたが,途中からW調剤薬局の女性3人が加わり話に華が咲きました 楽しいことは時間を忘れさせるもので,いつの間にか10時半になっていました ご参加の皆さん,お疲れ様でした

 

          

 

ということで,わが家に来てから今日で802日目を迎え,スティック式インスタント・コーヒーの匂いを嗅いでいるモコタロです

 

          

             これはご主人のではないな インスタント・コーヒーは飲まないから

 

  閑話休題  

 

本を6冊買いました   1冊目は,伊坂幸太郎著「首折り男のための協奏曲」(新潮文庫)です 伊坂幸太郎の作品は文庫化するたびに購入して当ブログでご紹介してきたので,もうお馴染みの作家だと思います

 

          

 

2冊目は,佐藤正午著「永遠の1/2」(小学館文庫)です 佐藤正午は好きな作家の一人です.数年前に読んだ「身の上話」ですっかりファンになりました

 

          

 

3冊目は,佐藤正午著「事の次第」(小学館文庫)です 「書くインタビュー」にも登場した作品です

 

          

 

4冊目は,荻原浩著「ママの狙撃銃」(双葉文庫)です 荻原浩はご存知,直木賞作家ですね

 

          

 

5冊目と6冊目はジェフリー・ディーヴァー著「シャドウ・ストーカー(上・下)」(文春文庫)です この人の作品も出るたびに購入して当ブログでご紹介してきましたね どんでん返しの達人です

 

          

          

 

  も一度,閑話休題  

 

佐藤正午「書くインタビュー2」(小学館文庫)を読み終わりました この本は,目の前の相手にインタビューして記録を再現するのではなく,メールのやり取りだけで,ライターの東根ユミさんが作家の佐藤正午氏にインタビューしてその内容を再現するという企画の第2弾です

 

          

 

今回のメールのやり取りのメインは長編小説「鳩の撃退法」の執筆前夜から完成後までのドキュメンタリーです 東根ユミさんの「どういう理由で『鳩の撃退法』というタイトルを付けたのか?」という疑問から入り,「どうして小説を書くのか?」という根本的な質問へと移っていきますが,佐藤正午という小説家がどんな動機によって小説を書いているかというのが最後に明かされます まず,

「あり得ない話に僕は魅かれるんです」

と書きます.その後で「現実には,あり得ない話などない,と言い切るほうが正しいような気がします」

と書きます.そして「小説に書くとまるっきり嘘になる,そういう話に僕は魅かれるんです」として,

「噂の話に僕は魅かれるんです」

と書きます.そして「そんなのあり得ないよ,と言われそうな話に僕は魅かれるんです」として,

「嘘を作ることに僕は魅かれれるんです」

と書きます.そのうえで,

「嘘をほんとうに見せることに僕は魅かれるんです」

と結びます

これは佐藤正午という小説家に限らず,小説を書く人に共通の動機ではないかと思います

 

  最後の,閑話休題  

 

昨日,池袋シネマサンシャインで「マダム・フローレンス!夢みるふたり」を観ました これはスティーヴン・フリアーズ監督による2016年イギリス映画(111分)です

 

          

 

資産家のフローレンス・フォスター・ジェンキンス(メリル・ストリープ)の夢はソプラノ歌手になることだった しかし,周囲の者が本当のことを伝えないため,彼女は自分が致命的な音痴であることに気付いていない 愛する妻に夢を見続けさせるため,2番目の夫シンクレア(ヒュー・グラント)はお人好しなコズメ・マクムーン(サイモン・ヘルバーグ)という若手ピアニストを専属伴奏者として採用し,マスコミを買収し,彼女の”信奉者”だけを集めた小さなリサイタルを開催する 歌が上手いと信じて疑わないフローレンスは ある日,世界的な権威のあるカーネギーホールで歌いたいと言い出す 実は彼女は余命いくばくかのを大病を抱えていた シンクレアは彼女の最後の願いを叶えるべく奔走し,1944年10月25日,世界的な音楽の殿堂カーネギーホールで76歳のフローレンスのリサイタルを実現させる 満場の観衆が耳を傾ける中,超絶音痴プリマドンナ,フローレンスのリサイタルの幕が開いた

 

          

 

私は「音程・テンポ・リズム」の3拍子揃った”世紀の大音痴”ジェンキンス夫人の存在につていは知っていましたが,この映画のような裏話があったのか,と実は感動しました 死んだ父親の莫大な相続財産にまかせて好き放題なことをやった人かと思っていましたが,「ヴェルディ協会」の設立をはじめ ニューヨークの音楽界のために尽力し,そのうえで夫・シンクレアの献身的な助力を受けながら自らの夢を実現したのでした

主演のジェンキンス夫人を演じたメリル・ストリープは,最初に正しい歌い方を習ってから下手に崩して歌ったといいますが,そうしなければ”上手く下手に”歌えないでしょう リサイタルで歌われるのは,J.シュトラウス「喜歌劇”こうもり”」から「伯爵様,貴方のようなお方は」,ドリーブ「歌劇”ラクメ”」から「鐘の歌」,モーツアルト「歌劇”魔笛”」から「夜の女王のアリア」等ですが,メリル・ストリープ本人が歌っています 口の中に飲み物を含んだまま聴いたら,思わず吹き出してしまうこと必至です とくに私が感服したのは「夜の女王のアリア」です 超絶技巧コロラチューラ・アリアが超絶音痴 殺ら注ら アリャ? になっていました

このほか,ジェンキンス夫人の伴奏ピアニストを選考する時に弾かれた曲は,リスト「ハンガリー狂詩曲」とサン=サーンス「白鳥」,伴奏ピアニストに選ばれたコズメとジェンキンス夫人が連弾で弾いたのはショパン「前奏曲第4番作品28-4」でした このピアニストを演じたサイモン・ヘルバーグはとてもいい味を出していました

フローレンス・フォスター・ジェンキンス夫人はカーネギーホールでのリサイタルの1カ月後に息を引き取ったといいます  彼女の歌ったアリアのCDが発売されていますが,残念ながらまだ入手していません 私の不徳の致すところです

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「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」のチケットを買う/是枝裕和監督「海よりもまだ深く」を観る~ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第14番」が流れる

2016年12月09日 07時59分05秒 | 日記

9日(金).昨日の朝日朝刊に,米『タイム誌』選出の「今年の人」に 次期米大統領に決まったトランプ氏が選ばれたというニュースが載っていました 表紙には本人の写真の下に「The Divided States of America」(アメリカ分断衆国)の大統領」と記したとのことです 今年は 大統領選を争ったクリントン氏やロシアのプーチン大統領らが最終候補となっていたそうですが,トランプに決定する時に「ちょっとタイム」と叫んだ人もいたのではないかと推測します.しかし,トランプ以外の候補者にはトランプのような”切り札”が無かったようです

ということで,わが家に来てから今日で801日目を迎え,米国株式市場でダウ工業株39種平均が7日,前日比297ドル上昇し,3日連続で過去最高値を更新したという記事を見て感想を述べるモコタロです

 

          

           期待先行のトランプ現象はいつまで続く? トランプで占ってみる? 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「鶏ももキャベツの味噌マヨガーリック」,「生野菜とアボガドとサーモンのサラダ」,「インゲンのお浸し」を作りました 寒い夜は熱燗ですね

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

来年4月17日(月)午後7時から東京オペラシティコンサートホールで開かれる「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」の公演チケットを買いました このコンサートは毎年サントリーホールで開かれてきましたが,来年の2月6日から8月31日までサントリーホールが全面的な改修工事を行うことから会場が変更になったものです

プログラムは①ベートーヴェン「コリオラン」序曲,②同「ピアノ協奏曲第4番ト長調」,③モーツアルト「交響曲第35番ニ長調”ハフナー”K.385」,④シューベルト「交響曲第6番ハ長調」です ②のピアノ独奏は金子三勇士,芸術監督はウィーン・フィルのコンサートマスター,フォルクハルト・シュトイデです

 

          

 

実は12月3日がチケット発売開始日だったので,さっそく チケットぴあ に行ったのですが,即日完売だったのです 半ばあきらめていたのですが,会場となる東京オペラシティのチケットセンターならまだ残券があるだろうと思って行ってみたらS席が残っていました かなり後方の席ですが,仕方ありません.聴けるだけで良いのです ウィーン・フィルのメンバーを中心とするこのオケは「少数精鋭」を絵に描いたような音楽集団で,毎年聴くのを楽しみにしています

 

  最後の,閑話休題  

 

昨日,神楽坂のギンレイホールで是枝裕和監督「海よりもまだ深く」を観ました これは2016年公開 117分の映画です

中年男の良多(阿部寛)は15年前に文学賞を受賞したものの,その後はまったく売れず,作家として成功する夢を追い続けている 彼は探偵事務所で働いて生計を立てているが,周りにも自分自身にも「小説のための取材だ」と言い訳をしている 良多は別れた妻・響子(真木よう子)への未練があり,彼女を張り込みしていて,新しい恋人とデートしているところを目撃してショックを受ける ある日,団地で一人暮らしをする母・淑子(樹木希林)の家に集まった良多と響子と11歳の息子・真悟は,台風で帰れなくなり一晩を過ごすことになる

 

          

 

現状を顧みて「私の人生は こんなはずじゃなかった」という家族それぞれの人生模様が浮かび上がってくる作品です しかし,この作品は悲劇ではなくコメディーです 母親(樹木希林)と長男(阿部寛),その姉(小林聡美)との丁々発止のやり取りが,どこの家庭にもありそうな会話なので,思わず笑ってしまいます 核になっているのは母親役の樹木希林です.この人の存在感は凄いと思います.そこに居るだけでも重みがあり,台詞をしゃべると軽いのに深みがあります

台風の夜,良多は真悟を誘って暴風雨の中 公園に行ってタコの形の滑り台の下に潜り込んで,真悟に響子の新しい恋人はどんな男かと聞いたりします そこへ響子が様子を見にやってきますが,二人で買った宝くじが風で飛ばされてしまいます 「宝くじなんてギャンブルなんだから 子供に知恵を付けないで.どうせ当たらないんだから」という響子に,良多は「宝くじはギャンブルじゃない.夢を買うんだ」と反論します.ここに二人の人生観の違いが現れています

この映画では,母・淑子が密かに慕う”先生”(橋爪功)の主催する「レコード・コンサート」でLPレコードを聴くシーンがありますが,ここで流れたのはベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の傑作「第14番嬰ハ短調作品131番」第7楽章「アレグロ」のフィナーレでした この曲はベートーヴェンの死の8か月前,1826年7月に完成しましたが,全7楽章は休みなく続けて演奏されます ベートーヴェンの死後,カール・ホルツがシューベルトを連れてこの曲の初演を聴いた時,シューベルトはたいへん興奮したと伝えられています

  

  最後の,閑話休題  

 

「ギンレイ・シネ・パスポート」が12日に期限切れになるので,更新手続きをしました 1人用のシングルカードは1年間有効で税込み10,800円です.ギンレイホールは基本的に2本立てで2週間のサイクルで映画を上映しているので,年間52本の映画が何度でも観ることができる計算(1本当たり208円)になります ただし,上演するのは半年くらい前に公開された作品です.ロードショー映画館では1本1,800円が普通なので6本観ただけで10,800円になってしまいます ギンレイが いかに割安かが分るでしょう 場所がJR飯田橋駅,地下鉄有楽町線,東西線,南北線,大江戸線の飯田橋駅のB4出口からすぐ と交通の便が良いので,土・日はもちろんのこと,ウィークデーも朝からかなりの観客が鑑賞しています

最新のロードショー作品にこだわらない映画好きの方にお薦めします

 

          

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シプリアン・カツァリス+広瀬悦子のピアノ・デュオ公演を聴く~東京オペラシティ・ブランチタイムコンサート

2016年12月08日 07時54分54秒 | 日記

8日(木).わが家に来てから今日で ちょうど800日目を迎え,ソフトバンクの孫社長がトランプ次期米大統領と会談し,総額500億ドル(約5兆7000億円)を米国でIT分野を中心にした新興企業に投資し,5万人の雇用を生み出すとトランプ氏に約束したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

              孫さんて 常に大胆なことをやるよね 孫して得するってか

                               あっ  デカい顔で 二人の顔をつぶしちゃって メンゴ  メンゴ

 

  閑話休題  

 

昨日,東京芸術劇場から「モーツアルト/歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』出演者変更のお知らせ」が届きました 12月11日(日)15時開演のオペラ公演に出演予定だった歌手2人が”急病のため”来日できなくなったので,代役を立てるという内容です

フェルランド役(テノール)はショーン・マゼイに代わりアレック・シュレイダーが,フィオルディリージ役(ソプラノ)はミア・パーションに代わりヴィクトリヤ・カミンスカイテが出演するとのことです ショーン・マゼイは良く知りませんが,ミア・パーションは2013年6月の新国立劇場「コジ・ファン・トゥッテ」で同名役を歌っており,聴いた印象が良かったので, 来日できないのは非常に残念です 代役の二人の歌手に期待するしかありませんが,ドン・アルフォンソを含めた5人の主役陣のうち2人が代役というのはどうなんでしょうか? 『急病』ってなあに

 

          

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日11時半から初台の東京オペラシティコンサートホールで,「ブランチタイムコンサート~シプリアン・カツァリス&広瀬悦子 ピアノ・デュオ」公演を聴きました プログラムは①チャイコフスキー「くるみ割り人形」組曲から「小序曲」「行進曲」「金平糖の踊り」「ロシアの踊り(トレパック)」,「アラビアの踊り」「中国の踊り」「葦笛の踊り」「花のワルツ」,②同「白鳥の湖」から「ロシアの踊り」「スペインの踊り」「ナポリの踊り」,③同「眠れる森の美女」から「薔薇のアダージョ」,④ハチャトゥリアン「ガイーヌ」より「剣の舞」「レズギンカ」,⑤ボロディン「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」です ピアノ演奏はシプリアン・カツァリスと広瀬悦子です

 

          

 

シプリアン・カツァリスはキプロス系フランス人です.1972年エリーザベト王妃国際音楽コンクールで入賞しています 彼の名前を世界に知らしめたのは,1984年にベートーヴェン/リスト編「交響曲全曲」をピアノ独奏で弾いたアルバムが「レコード・オブ・ザ・イヤー」を受賞したことです

一方,広瀬悦子は1996年パリ・エコールノルマル音楽院を,その後 パリ国立高等音楽院をともに首席で卒業,ヴィオッティ国際コンクールとミュンヘン国際コンクールに入賞したほか,1999年にマルタ・アルゲリッチ国際コンクールで優勝しています

 

          

 

自席は1階6列23番,右ブロック左通路側席です.すぐ前の席に 未就学児と思われる(小学生だったら学校に行っている時間なので)男児が座っていたので,ブレーキとアクセルを間違えて暴走車が病院に突っ込んでくるようなイヤーな予感がしました 嫌な予感は往々にして当たるものです.会場は8割程度埋まっている感じでしょうか

ステージ上にはヤマハCFXが左右向かい合わせに置かれています.淡い紫色のステージ衣装の広瀬悦子とカツァリスが登場し,カツァリスが正面に向かって左に、広瀬悦子が右にスタンバイします 自席は広瀬悦子の指使いが良く見える位置です

最初にチャイコフスキー「くるみ割り人形」組曲が演奏されます 二人の息はピッタリです.気持ちよく聴いていると,すぐ前の男児がさかんに後ろを振り向いたり,手を上に挙げたり,後ろにのけぞったりし始めました イヤーな予感は演奏開始から5分も経たないうちに当たってしました その隣席は若い父親ですが,注意が行き届きません.幸い この男児は声を出して騒ぐことはしないので,唯一の防御策は目を瞑って演奏を聴くことです でも,指使いも見たいではありませんか

開演直前にやってきて最前列の席に座る目立ちたがり屋のどこかのおじさんのように 落ち着きのない子供(とくに男児)は本当に目障りです 5分も持たないのですから 音楽にまったく興味がないのです.結局最後まで落ち着きませんでした 二度と連れてこないで欲しいと思います.無料コンサートなら我慢しますが,お金を払ってまで不愉快な思いを強いられる理由はありません

ここまで書いて,あらためてこのコンサートのチラシ(裏)を見たら「チケットのお申込み」の注意事項に小さな文字で「未就学児のご入場はご遠慮いただいております」としっかりと書かれていました こういう大事なことは もっと大きな文字で書いてほしいと思います

 

          

 

気を取り直して.2曲目の「白鳥の湖」からは左右が入れ替わり,広瀬が左に,カツァリスが右にスタンバイします ロシアの踊り,スペインの踊り,ナポリの踊りと3曲演奏されますが,上半身をさかんに動かして演奏する”動”の広瀬に対し,腕から先しか動かさない”静”のカツァリスという対比を面白く感じながら聴きました

3曲目「眠れる森の美女」から「薔薇のアダージョ」は抒情的で深い感動がありました

4曲目はハチャトゥリアン「ガイーヌ」から「剣の舞」と「レズギンカ」が演奏されましたが,ピアノ連弾の極意を聴いたように思います 二人の丁々発止のやり取りが見事でした

最後はボロディン「イーゴリ公」から「だったん人の踊り」です この曲はスケールの大きな曲で,二人の演奏はピアノ2台で演奏しているのが信じられないくらい迫力に満ちていました

会場いっぱいの拍手に,ストラヴィンスキー「火の鳥」のフィナーレを鮮やかにアンコール演奏し,コンサートを締めくくりました

マナー違反親子の存在さえなければ,終始 リラックスして気持ちよく聴けたコンサートでした

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METライブビューイングでモーツアルト「ドン・ジョバンニ」を観る~セクシーなキーンリーサイドのドン・ジョバンニ

2016年12月07日 07時53分43秒 | 日記

7日(水).最近どうも身体が重いな,と思って久しぶりに体重計に乗ったら2キロ増えていました 原因は明らかで,1日8,000歩のノルマは辛うじてクリアしているものの,右肩の痛みのため ここ1か月ほど いつもの軽い運動(ストレッチと腹筋運動などの組み合わせ:15分程度)を休止していたからです 幸い整骨院通いで ほぼ回復したので そろそろ再開しようかと思います

ということで,わが家に来てから今日で799日目を迎え,政府が今年度の税収不足を穴埋めするため 赤字国債を1.9兆円追加で発行する方針を固めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

            たしか日本は世界一の借金大国だよね 大丈夫なの?

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「大根とひき肉の煮物」と「生野菜とアボガドのサラダ」を作りました 初めてサラダにアボガドを入れてみましたが,子供たちにも好評だったので,これからは頻繁に登場します

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,新宿ピカデリーでMETライブビューイング,モーツアルト「ドン・ジョバンニ」を観ました これは今年10月22日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です

キャストは,ドン=ジョバン二=サイモン・キーンリーサイド(バリトン),ドンナ・アンナ=ヒブラ・ゲルツマーヴァ(ソプラノ),ドン・オッターヴォ=ポール・アップルビー(テノール),ツェルリーナ=セレーナ・マルフィ(メゾソプラノ),マゼット=マシュー・ローズ(バス),ドンナ・エルヴィーラ=マリン・ビストラム(ソプラノ),レポレッロ=アダム・プラヘトカ(バスバリトン),騎士長=クワンチュル・ユン(バス).演出=マイケル・グランデージ,演奏はファビオ・ルイージ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団です

 

          

 

ファビオ・ルイージがオーケストラ・ピットに入って,序曲の演奏に入ります カメラはピット内も映し出しますが,オケはヴァイオリン・セクションが左右に分かれる対向配置をとっています.舞台は極めてトラディショナルでオーソドックスです 現代的に奇をてらった舞台作りよりずっと好ましいと思います

私は「ドン・ジョバンニ」では第1幕の冒頭10分間が一番好きです まずレポレッロが「旦那の召使いは もうまっぴらだ」と歌っていると,騎士長の館からドン・ジョバンニがドンナ・アンナに追われて出てきて,「悪党」「正体がばれてたまるか」「うちの旦那が またやらかした」と三重唱が歌われます テンポ感の良いこのアンサンブルを聴くと,いよいよドン・ジョバンニが始まった とワクワクします

イギリス生まれのキーンリーサイドのドン・ジョバンニは精力的でセクシーです 第1幕で村娘のツェルリーナを誘惑する有名なシーンは,「カタログ」のリストが増えるのは時間の問題と思わせるほど魅惑に満ちています マゼットと結婚したばかりのツェルリーナがほんの3分で貴族のドン・ジョバンニに口説かれて”落ちる”のはいかに何でも早過ぎだと思いますが,この時のツェルリーナを演じたイタリア出身のセレーナ・マルフィは 揺れ動く女心を見事に歌い 演じていました.彼女のメゾの声は魅力的です

キーンリーサイドで言えば,第2幕終盤でドンナ・エルヴィーラがドン・ジョバンニの館に改心するよう最後の説得に来た時,食卓のテーブルに両足飛びで飛び乗ったのにはビックリしました 何という身軽さ,運動神経の俊敏なこと

ドンナ・アンナを歌ったヒブラ・ゲルツマ―ヴァはロシア出身のソプラノですが,透明感のある美しい声が特徴です このオペラでのアリアは 恵まれた豊かな身体を生かして,どれもが力があり美しく響きました

驚いたのはドンナ・エルヴィーラを歌ったマリン・ビストラムです スウェーデン出身のソプラノですが,申し分のない歌唱力に加え,顔の表情で演技ができる才能を持っています エルヴィーラはドン・ジョバンニに裏切られたことから,怒っているか 泣いているかというシーンが多いのですが,彼女が歌うと説得力を持ちます

ドン・オッターヴォを歌ったポール・アップルビーはシカゴ生まれのテノールですが,澄み切った声の持ち主で豊かな歌唱力を持っています

レポレッロを歌ったアダム・プラヘトカはプラハ出身のバスバリトンですが,喜劇的なこの役柄にピッタリです 「カタログの歌」は聴きごたえがありました

ところで,オペラ「ドン・ジョバンニ」を観て いつも思うのは,自分を襲ったドン・ジョバンニが死んだ後,ドンナ・アンナが なぜ許嫁のドン・オッターヴォに「(結婚を)あと1年待って欲しい」と申し出たのかということです 1年間父親の死に対して喪に服すため,あるいは,ロレンツォ・ダ・ポンテの台本がそうなっているから,と言えばそれまでですが,本当は,彼女はドン・ジョバンニを愛していたのではないか,という疑問が頭をかすめます 1年間 父親と同時にドン・ジョバン二の死に対しても喪に服し 心の整理をするためではないか,と もっともこれは個人的な推論に過ぎませんが

もう一つ思うのは,モーツアルトはこのオペラの楽譜に「ドラマ・ジョコーソ(こっけいな劇)」と書き,作品カタログでは「オペラ・ブッファ」としているのですが,ドンナ・アンナやドンナ・エルヴィーラをはじめとする”被害者”の女性たちからすれば,あるいは無茶苦茶な主人からこき使われるレポレッロからすれば,喜劇どころか悲劇でないのか,という疑問が湧いてきます また「フィガロの結婚」にしても「コジ・ファン・トゥッテ」にしても,登場人物は誰も死なずにハッピーエンドを迎えるのに,このオペラは主人公のドン・ジョバン二が死んでしまいます.これも悲劇と言えば悲劇です もっとも,悪者が死ぬわけですから喜劇でも良いかも知れませんが

いずれにしても「ドン・ジョバン二」は,オペラ・セリアを特徴づける悲劇性とオペラ・ブッファの喜劇性が見事に融合した傑作中の傑作オペラと言えるでしょう

 

          

 

第1幕93分,第2幕87分,インタビュー,シーズン作品予告,休憩等を含めて3時間31分の上映でした ウィークデーの昼間にも関わらず,シニア層を中心にかなりの観客が鑑賞していました.数年前のライブビューイングでは空席が目立っていたのが信じられないくらいです 数万円もするオペラはそう簡単には観られないけれど,映画であっても3600円で超一流のオペラが観られるのなら ということで 年を追うごとに観客が増えているようです 私としては「風が吹けば桶屋が儲かる」式に,チケット代が高い現状 ⇒ 観客が増える ⇒ チケット代を高くしないでもペイするようになる ⇒ チケット代が下がる,となることを期待するばかりです

 

          

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「教授のおかしな妄想殺人」「ヤング・アダルト・ニューヨーク」を観る~クラシック音楽もふんだんに使われている映画

2016年12月06日 08時00分28秒 | 日記

6日(火).昨日の日経朝刊 文化面に「回顧 2016 音楽」が載りました 毎年楽しみにしているコラムですが,もうそういう時期になったかと感慨深いものがあります 見出しが「ワーグナーオペラで力演」となっているように,今年はオペラの部門でワーグナーの作品に高水準の上演が多かったように思います 記事にあるように,シュターツカペレ・ドレスデンが「ラインの黄金」を,ウィーン国立歌劇場と新国立劇場が「ワルキューレ」を,東京・春・音楽祭でN響が「ジークフリート」を上演し,それぞれ大きな話題を浴びました 私はウィーン国立歌劇場を除く3公演を聴きましたが,言われている通り揃って水準の高い公演でした

また,記事にあるように,今年は在京オケのトップ指揮者の就任が相次ぎました 新日本フィルは音楽監督に上岡敏之が,日本フィルは首席指揮者にインキネンが,東京フィルは首席指揮者にバッティストーニが,それぞれ就任し話題を呼びました

また 記事は 中村紘子,ピエール・ブーレーズ,ニコラス・アーノンクールの訃報にも触れています 今年もいろいろありましたね ということで,わが家に来てから今日で798日目を迎え,トランプ次期米大統領が 中国が南シナ海に人工島を造成し軍事複合施設を建設していることを批判した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

                             米中問題はトランプの言う通りだけど 日中問題は「日中寒いね」くらいか?

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚肉の甘酢ねぎごまだれ」と「生野菜とサーモンのサラダ」を作りました 娘が「豚肉の~」について「これ この前作ったのと同じメニューだよね?」と言うので,「そうですけど,何か?」と答えておきました

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,早稲田松竹で「教授のおかしな妄想殺人」と「ヤング・アダルト・ニューヨーク」の2本立て映画を観ました 

「教授のおかしな妄想殺人」はウディ・アレン監督による2015年 アメリカ映画(95分)です

 

          

 

「人生は無意味である」という考えに囚われ,仕事にも恋愛にも身が入らなくなった哲学教授エイブ(ホアキン・フェニックス)がアメリカ東部の大学に赴任してきた そんな彼をミステリアスで刺激的な男と勘違いして恋心を抱く女子大生ジル(エマ・ストーン)は,恋人がいるのに彼にも興味津々の様子 ある日,たまたま悪徳検事の噂を耳にしたエイブは,その瞬間とんでもない妄想を抱く.それは”世のため人のため”に その悪徳検事を完全犯罪によって抹殺することだった エイブは検事の行動パターンを把握し,ジュースに青酸カリを入れて毒殺することに成功する.それがキッカケになり,彼はバイタリティを取り戻しジルに迫る.しかし,世の中そうはうまくいかなかった ジルに問い詰められ,自首を求められたエイブは一大決心をする

 

          

 

生きる意味を問う哲学の教授が,”世のため人のため”という大義名分を掲げて,殺人に生きる意味を見出すというのは いかにもウディ・アレンらしい皮肉に満ちたストーリーだと思います

ウディ・アレン監督の映画をよく観るのは,必ずと言ってよいほどクラシック音楽を使うからです この映画ではバッハの音楽が使われていました ジルがピアノの先生に習っていた曲はJ.S.バッハの「プレリュードとフーガ」でした また,大学のキャンパスらしき所で女子学生が弾いていたのは無伴奏チェロ組曲第1番の「プレリュード」でした バッハはBACHと書いてバックと読みますが,すべての音楽のバックボーンです

 

  最後の,閑話休題  

 

2本目の「ヤング・アダルト・ニューヨーク」はノア・バームバック監督による2014年 アメリカ映画(97分)です

 

          

 

ジョシュ(ベン・スティラー)とコーネリア(ナオミ・ワッツ)は40代前半の夫婦.ジョシュはドキュメンタリー映画の監督をしているが8年も新作を完成させておらず,アートスクールの講師をして生計を立てている 二人には子供がいないこともあり,何かが物足りない気持ちを抱いたまま過ごしていた そんな時,20代のカップル,ジェイミーとダービーと知り合いになり,映画を撮りたいという彼らの手助けをすることになる.若い二人に刺激を受け,ジョシュとコーネリアもまだまだイケてると思いエネルギーを取り戻していく コーネリアは映画の巨匠監督の娘だが,ジョシュと巨匠とはウマが合っていなかった ジョシュとコーネリアはジェイミーの映画作りに巻き込まれていくうちに,彼の本当の目的が,自分たちを利用して巨匠とコネを作り映画界でのし上がっていくことだということに気が付く

 

          

 

興味深かったのは,ドキュメンタリー映画を撮ると言っても,20代の若いジェイミーは多少は事実を曲げて”やらせ”をやっても良いと考えているのに対して,40代のジョシュは”ドキュメンタリーには一切ウソがあってはならない”という主義主張を崩していないところです もっとも これは世代の問題というよりも,ドキュメンタリー映画製作に対する こだわりのプロ と 何でも合理的に考えがちな経験の浅いセミプロの”姿勢”の違いと言えるかもしれませんが

この映画では,モーツアルトのピアノ協奏曲(何番かは不明)の他,ヴィヴァルディの音楽がふんだんに使われていました 主にヴァイオリン協奏曲のアレグロ楽章が使われていましたが,いちばん印象に残ったのはヴィヴァルディの「マンドリン協奏曲ハ長調」の第1楽章「アレグロ」です この曲は,1979年 ロバート・ベントン監督,ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープ共演の映画「クレイマークレイマー」のテーマ・ミュージックのように使われていた音楽です 悲しい物語なのに明るく弾むような音楽だったので強く印象に残っています もちろん,バームバック監督はそうした事実を知った上でこの音楽を使っていると思います

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新国立オペラでロッシーニ「セヴィリアの理髪師」を聴く~マキシム・ミロノフ=フローレス以来のロッシーニ歌いの出現か!

2016年12月05日 07時57分25秒 | 日記

5日(月).わが家に来てから今日で797日目を迎え,お歳暮に届いた箱いっぱいの蜜柑を前にして感想を述べるモコタロです

 

          

            シューベルトが交響曲を作っていたね あれは蜜柑盛か

 

  閑話休題  

 

昨日,初台の新国立劇場でロッシーニの歌劇「セヴィリアの理髪師」を聴きました  新国立劇場の入口もクリスマス・モードです

 

          

 

実は,11月27日のプルミエ公演がクァルテット・エクセルシオのコンサートと重なったため,新国立オペラの振替サービスを利用してこの日に振り替えてもらったのです そのためいつもより1つ後ろの列の1階19列31番です.人気演目とあって会場はほぼ満席です

 

          

 

出演は,アルマヴィーヴァ伯爵=マキシム・ミロノフ、ロジーナ=レナ・ベルキナ,バルトロ=ルチアーノ・ディ・パスクアーレ,フィガロ=ダリボール・イェニス,ドン・バジリオ=妻屋秀和,ベルタ=加納悦子ほか,管弦楽=東京フィル,合唱=新国立劇場合唱団,演出=ヨーゼフ・E・ケップリンガー,指揮=フランチェスコ・アンジェリコです

 

          

 

アルマヴィ-ヴァ伯爵は,プラドで見初めたロジーナを追ってセビリアに来た しかしロジーナの財産目当ての後見人バルトロのせいで彼女は外に出られない文字通りの”箱入り娘”状態だった そこで伯爵は,金さえもらえれば散髪から恋の仲介まで何でも引き受ける”町の便利屋”フィガロに助けを求める 伯爵はリンド―ロと名を変え,あの手この手を使ってバルトロ家に侵入を試み,彼女への想いを伝えるが,大混乱を引き起こす フィガロの転機でピンチを脱し,ハッピーエンドで幕が降りる

 

          

 

新国立オペラで「セヴィリアの理髪師」を観るのは今回が6回目です.オーストリア生まれのケップリンガーの演出では2005年,2006年,2012年に次いで4回目です

このオペラは2幕から成りますが,回転舞台を有効に使ったテンポのよい進行で飽きさせません 舞台も衣装もカラフルでロッシーニのオペラの楽しさを一層引き立てます

第1幕冒頭で,フィガロ役のダリボール・イェニスが登場してカヴァティーナ「ラ・ラン・ラ・レラ・・・町の何でも屋に道を開けろ」を歌い出した時は,でかい声だけが取り柄か,この人は・・・と思いましたが,物語が進行するにつれて,しっかりしたバリトンであることが分かってきました 実は前回(2012年)の時もフィガロを歌っているのです スロヴァキア生まれのイェニスはウィーン国立歌劇場,ミラノ・スカラ座ほかでも歌っている実力者です この人の優れているのは歌唱力もさることながら,その演技力です 一例を挙げると,第1幕でリンド―ロに扮したアルマヴィーヴァ伯爵が2階にいるロジーナに向けて求愛のカンツォーネを歌う時に,バックでギターを弾いて伴奏する(もちろん本人は弾いていない)のですが,音に合わせてギターをつま弾く『エア・ギター』がピッタリと合っているのです まるで本人が弾いているようでした

一番驚いたのはアルマヴィーヴァ伯爵を歌ったマキシム・ミロノフです ロシア生まれのテノールで,現在ロッシーニ歌いとしてスカラ座やウィーン国立歌劇場などで活躍しているそうですが,現在世界一のロッシーニ歌い,ペルー出身のリリックテノール,ファン・ディエゴ・フローレスに肉迫するかのような素晴らしい声質と歌唱力です シラク―ザといい勝負かも知れません.この役柄は喜劇的な演技も求められますが,その点も申し分なくそつなくこなしていました

ロジーナを歌ったレナ・ベルキナはウクライナ出身のメゾソプラノですが,2013年の新国立オペラ「フィガロの結婚」ではケルビーノを歌っています 少年役から今回は大人の女性役へと”成長”したわけですが,歌唱力も一段とアップしたように思います 第1幕のカヴァティーナ「今しがた一つの声が」は美しい声で伸びがありました

バルトロを歌ったルチアーノ・ディ・パスクアーレはイタリア出身のバリトンです 第1幕のアリア「私のような医者に向かって」は,居丈高に歌い始め,途中からロジーナを言いくるめようと最後は早口で畳みかける”超舌技巧曲”ですが,舌を噛むこともなく見事に歌い切りました

いつも感心するのは,今回ドン・バジリオを歌った妻屋秀和です 第1幕のアリア「中傷はその風です」はロッシーニ・クレッシェンドにのって味わい深いバスを聴かせました

長いオペラの中でたった1度だけ歌う役割を担うベルタを歌った加納悦子は,第2幕のアリア「年寄りは妻を求め」にすべてを賭けました

全体的に見て 前回の主役はフィガロ役のイェニスでしたが,今回は明らかにアルマヴィーヴァ伯爵役のマキシム・ミロノフでした

最後に,この公演の立役者としてシチリア出身の若き指揮者フランチェスコ・アンジェリコ指揮東京フィルの小気味の良いテンポによる演奏を挙げておきます

 

          

 

この公演を聴くに当たって,アルマヴィーヴァ伯爵=ルイジ・アルヴァ,ロジーナ=マリア・カラス,バルトロ=フリッツ・オレンドルフ,フィガロ=ティト・ゴッピ,ドン・バジリオ=二コラ・ザッカリア他,アルチュオ・ガリエラ指揮フィルハーモニア管弦楽団・合唱団によるCD(1957年2月録音)で予習しておきました マリア・カラスは素晴らしいです

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

新国立オペラのアンケートに答えたら特性クリア・ファイルをもらいました.2016-2017シーズンのラインアップがデザインされています.チラシの整理に使えそうです

 

          

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ジョナサン・ノット+東響でシューマン「交響曲第2番」他を聴く~クレンペラーの演奏との比較で聴くと?

2016年12月04日 09時47分12秒 | 日記

4日(日).昨日,新装開店の巣鴨駅前のマックに行ってハンバーガーを買ったのですが,700円以上で三角くじが1回引けるというので引いたら,何と「1等賞」と書かれていました 何か?と期待して待っていたらマックカード(500円分)でした 普段から行いの良い人には たまにはこういうこともありますね すぐ前の人はクリアケースをもらっていました.あれは参加賞だろうな ということで,わが家に来てから今日で796日目を迎え,マックカードを前に独り言を言っているモコタロです

 

          

             マックでぼくが食べられるものはないよ 意味ないじゃん お先マックら

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで東京交響楽団第647回定期演奏会を聴きました 12月に入ってサントリーホールもクリスマス・モードです

 

          

 

プログラムは①ワーグナー「楽劇”トリスタンとイゾルデ”」より第1幕への前奏曲,②生誕100年を迎えるデュティーユの「チェロ協奏曲”遥かなる遠い国へ”」,③シューマン「交響曲第2番ハ長調」です ②のチェロ独奏はヨハネス・モーザー,指揮はジョナサン・ノットです

 

          

 

いつものようにノットが指揮する時は,ヴァイオリン・セクションが左右に分かれる対向配置をとります.コンマスは水谷晃です

1曲目はワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲ですが,チェロ独奏者のヨハネス・モーザーが,指揮者ノットとともに登場します ノットの意向で次のデュティーユ「チェロ協奏曲”遥かなる遠い国へ”」と続けて演奏するためです 両曲ともチェロから入るという共通点があります.したがって1曲目のトリスタンとイゾルデの前奏曲では,モーザーはチェロ・セクションを真後ろに控えて いっしょに演奏することになります  かなり背の高いモーザーは1979年ミュンヘン生まれのドイツ系カナダ人です.2002年チャイコフスキー・コンクールで最高位を獲得しています

ノットの指揮で前奏曲の演奏に入ります.いわゆる”トリスタン和音”の浮遊感を伴う音階を聴くと不安に駆られます 弱音の弦楽器に管楽器が加わりワーグナー独特の世界に引き込まれます ノットはかなりゆったりとしたテンポで音楽を進めます.静かに曲が閉じ,一瞬のしじまのあと,2曲目のデュティーユ「チェロ協奏曲」に入ります この曲は半年前の6月24日,読響定期演奏会でジャン・ギアン・ケラスのチェロ独奏,カンブルランの指揮で聴いているので,途切れることなく演奏される5つの楽章の所々のメロディーを思い出すことが出来ました この手の曲はまったく初めて聴くのと 一度聴いたことがあるのとでは,印象がまったく違ってきます 弱音から強音までチェロの魅力が生かされた曲だと思いました

会場いっぱいの拍手とブラボーに,モーザーはバッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」から「サラバンド」をしみじみと弾き,大きな拍手を受けました

休憩後はシューマン「交響曲第2番ハ長調」です この曲は1845年~46年に作曲され,1846年11月5日 ライプツィヒでメンデルスゾーンの指揮で初演されました 4つの楽章から成ります

私はコンサートを聴く前に,時間的に余裕があれば必ずCDで予習することにしています 今回 シューマン「交響曲第2番」を聴くに当たっては,オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア・オーケストラによるCDで予習しておきました なぜクレンペラーのCDを選んだかと言えば,おそらくジョナサン・ノットのアプローチと対極にある演奏だと思ったからです クレンペラーはシューマンの交響曲に限らず,全体的に遅いテンポで,しかもテンポを変えず終始泰然自若の演奏を展開しているからです

 

          

 

ノットの指揮で第1楽章が開始されます.冒頭,トランペットの静かなファンファーレ風のメロディーから入りますが,残念ながらトランペットが合いませんでした しかし,さすがに東響のブラス・セクションです.その後はしっかり修正して鋭い演奏を展開しました 第2楽章,第4楽章ともにノットのテンポは相当速いと言ってよいでしょう.しかもテンポを微妙に変化させることによって躍動感あふれるダイナミックな音楽を現出します これがノットの音楽作りの特徴と言えるでしょう 私にとって,これは クレンペラーの演奏と比較したからこそ分かったノットの演奏の特徴です また,ノットの指揮を見ていて思うのは,タクトを持つ右手とともに,左手が雄弁なことです.右手でリズムを刻み メロディーを作る一方で,左手で表情を付けハーモニーを形作っているかのようです

演奏で印象に残ったのは第3楽章におけるオーボエ首席・荒絵理子による演奏です 東響の強みは荒絵理子と荒木奏美の二人の首席(アラアラ・コンビ)を擁するオーボエセクションだと思います どちらが出番でも安心して聴けます

それにしても,ジョナサン・ノットは人気がありますね.われわれ聴衆だけでなく,楽員にも圧倒的な人気があるようです それもそのはず,ノットは東京交響楽団では2011年10月の定期演奏会にデビューしましたが,この共演でお互いに”一目ぼれ”し,翌2012年10月には次期音楽監督の就任発表となり,2014年度から秋山和慶,ユベール・スダーンに続く第3代音楽監督に就任したのですから.よほど相性が良いのでしょう 毎回 独特なプログラミングにより素晴らしい演奏を展開しています

話は360度変わりますが,12月号プログラム「Symphony」に10月下旬に東京交響楽団が挙行したヨーロッパ公演のリポートが載っています このうち オーストリアのウィーン楽友協会大ホールでの演奏会の報告に

「同じ演目をサントリーホールで演奏した際に,ノット監督はコントラバスを真後ろに置く配置をとりましたが,それもこの日のためでした」

と書かれています これについては,10月16日の当ブログに

「コントラバスがステージ中央後方に横一列に配置されている.これは,ヨーロッパ公演旅行に備え,欧州諸国のコンサートホールをイメージして低音部の配置を考慮したのかも知れない」

旨を書きました.推測が当たっていましたが,たまにはこういうこともあります

 

          

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トム・ハンクス主演「インフェルノ」を観る/佐藤正午「書くインタビュー①」を読む

2016年12月03日 07時54分14秒 | 日記

3日(土).わが家に来てから今日で795日目を迎え,「カジノ解禁法案」が2日の衆院内閣委員会で自民党,日本維新の会などの賛成多数で可決したというニュースを見て 独り言を語っているモコタロです

 

          

              ご主人は いっさいギャンブルやらないから 関係ないらしい

 

  閑話休題  

 

昨日,シネマサンシャイン池袋でダン・ブラウン原作,ロン・ハワード監督「インフェルノ」を観ました これは現在ロードショー公開中の121分のアメリカ映画です 「ダヴィンチ・コード」「天使と悪魔」に続いてトム・ハンクスがハーバード大学教授で宗教象徴学者のロバート・ラングドンを演じています

ラングドン教授は,直前の記憶を失った状態でフィレンツェの病院で目を覚ます 謎の暗殺者から狙われた彼は,女医シエナ・ブルックス(フェリシティ・ジョーンズ)に助けられ病院を脱出する.彼らは,天才生物学者バートランド・ゾブリストが,人類増加問題の解決策として人類の半分が犠牲となるウィルスによる恐ろしい伝染病を世界に広めようとしていることを知る そして,ゾブリストが詩人ダンテの叙事詩「神曲」の「地獄篇」になぞられて計画を実行していることに気付いて,暗殺者の追求を逃れながらそれを阻止すべく奔走する

 

          

 

「ダヴィンチ・コード」も「天使と悪魔」も原作を読んでから映画を観たのですが,この「インフェルノ」はいきなり映画から観ました この映画は,中盤でのまさかのどんでん返しの驚きとともに,ラングドン教授とシエナがダンテの「神曲」に絡んだ謎を解きながら訪れるフィレンツェ,ベネチア,イスタンブールにあるボッティチェリの「地獄の見取り図」,ヴァザーリの「マルチャーノの戦い」などの絵画や,ダンテが洗礼を受けた「サン・ジョヴァンニ洗礼堂」,ベネチアの総督が多く埋葬されている「サン・マルコ大聖堂」,イスタンブールの大聖堂「アヤソフィア」などを映像で楽しむことが出来ます

それにしても,トム・ハンクスは先日観た「ハドソン川の奇跡」のパイロット役といい,この「インフェルノ」のラングドン教授役といい,何を演じても様になっています

 

  も一度,閑話休題  

 

佐藤正午「書くインタビュー①」(小学館文庫)を読み終わりました 佐藤正午は1955年長崎県生まれ.長編小説「ジャンプ」が「本の雑誌」2000年度ベスト1「身の上話」が「ダカーポ最高の本!2010」国内ミステリだ1位に選出されました

この本は,長崎県在住の作家・佐藤正午と出版社に雇われたフリーライターとの間で交わされたインタビューの内容を再現したものです それは,面と向かって言葉をやり取りするのでなく,メールによって作家にインタビューする形の”書くインタビュー”です 名作「身の上話」の上梓直前から,「鳩の撃退法」執筆準備に至るまで1年半に及ぶ質疑応答を収録しています

 

          

 

始まりは伊藤ことこ いう女性ライターが「佐藤さん,疲れませんか」という 誰が見ても初めて対する人に向けて発する言葉とは言えない不躾なメールを送ります これに対し正午氏は「それが最初の質問ですか?」と疑問を呈します その後 何通かのやり取りがあり,ついに切れた正午氏が「喧嘩うってるのか」というメールを送ります.伊藤さんから「何もうっていません」と返信が届きますが,その後突然「編集部よりお詫び」が登場し,伊藤さんと連絡が取れなくなたったので担当者を代えることになった旨が書かれます つまり伊藤さんは正午氏とのやり取りが上手くいかず自信喪失に陥り 仕事を放り出してしまったのです 一癖も二癖もある小説家を相手に文書でインタビューするわけですから,よほどの根性がなければ務まりません

その後,東根ユミという女性ライターがインタビューを引き継ぐことになり,メールのやり取りが再開されます この人はなかなかの勉強家で,しかもいい根性の持ち主です 時に正午氏から罵倒されながらも,しつこくインタビューを続けます

小説の書き方として「ですます体」か「た」止めの文体かという問題について,名作「身の上話」を題材に,正午氏は語ります

「物語の内容について小説を書き出すまえに深く考えていけば当然『ですます体』にたどり着いただろう,と推測することはできます でも僕がここで言いたいのは,文体が先か物語が先か,文体がストーリーを決めるのかストーリーが文体を要請するのか,そこのところは経験からいって明確に区別できない むしろ両者の行ったり来たりのすり合わせから小説がかたちになっていくということです

続けて,小説「ダンスホール」を題材に正午氏は語ります

「僕は長年,文章のうまいへたにこだわってきました そしてうまく書くために長年,『た』止めの文末を連発することを避けてきました.若いころ編集者に忠告されたのか,文章読本で戒めてあるのを読んだのか,とにかく文末を『た』で止め続けると文章が単調になる,へたな文章になると考えていました.ただ,ほんとうに『た』止めの連続で書くと単調でへたくそな文章になるのか,自分で書いてみて実験するのもありじゃないか?試しに1回だけ,と思いついたのです で,じっさいにやってみた結果が『ダンスホール』という」小説です

これについて”根性のライター”東根ユミさんは「ダンスホール」の最初から最後まで読み通し,すべての文章の文末が過去形の「た」で終わっていたこと,それが1326もあったことを確認します このやり取りを読んで,こういう文章形態で徹底して小説を書く方も凄いし,それを数えて確かめる方も凄いと思いました

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アファナシエフ「ピアニストは語る」を読む/アファナシエフの弾くベートーヴェン「悲愴」「月光」「熱情」をCDで聴く

2016年12月02日 07時53分28秒 | 日記

2日(金).昨日の朝日朝刊社会面に「マーラー自筆譜6億円 交響曲『復活』ロンドンで落札」という見出しの記事が載りました 記事を超訳すると

「グスタフ・マーラー(1860~1911)の交響曲第2番『復活』の自筆譜が29日,ロンドンのサザビーズのオークションにかけられ,楽譜としては史上最高額の約455万ポンド(約6億3500万円)で落札された 落札者は公表されていない.5楽章232ページの自筆譜には,青いクレヨンや青紫色のインク,鉛筆で本人が書きこんだ修正が鮮やかに残っている.87年に落札されたモーツアルトの交響曲9曲分の約250万ポンドがこれまでの最高額だったが,それを大幅に上回った.自筆譜は,今年1月に亡くなった米実業家ギルバート・キャプラン氏が所有していた

キャプランといえば,マーラーの交響曲「復活」だけを指揮するためにゲオルグ・ショルティに師事して指揮法を学び,マーラーの自筆譜を自費で買い取り,アメリカやヨーロッパ諸国の20以上のオーケストラを振って「復活」を指揮した実業家です ウィーン・フィルとの録音もあります まさか,自筆譜に基づいて「復活」交響曲を指揮することを夢見ている第2のキャプランが落札したのでは?と勘繰りたくなりますが,6億3500万円は決して安くはありません どこの誰が落札したのか分かりませんが,失火で自筆譜が燃えるような「悲劇的」な事態が起こらないことを祈るばかりです

ということで,わが家に来てから今日で794日目を迎え,届いたお歳暮のビール・セットを前に独り言を呟いているモコタロです

 

          

            お返しにサンマを送るそうだよ 恵比寿の隣は目黒だからだとさ レベル低!

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚バラ 甘酢ネギ胡麻だれ」と「生野菜とタコのサラダ」を作りました 寒いので,最近は熱燗です

 

          

 

 

  も一度,閑話休題  

 

ヴァレリー・アファナシエフ「ピアニストは語る」(講談社現代新書)を読み終わりました アファナシエフは1947年モスクワ生まれ.モスクワ音楽院でヤコブ・ザークとエミール・ギレリスに師事.1968年のバッハ国際音楽コンクール(ライプツィヒ),1972年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝 1974年にベルギーへ亡命しました

 

          

 

この本は,2015年6月にアファナシエフが来日した際,東京 目白台の「蕉雨園(しょううえん)」で,音楽評論家・青澤隆明氏がインタビューした内容を収録しています

第1部「人生」では,生まれ故郷のこと,師エミール・ギレリスのこと,バッハ国際コンクールの予選から決勝までのこと,ベルギーへ亡命するまでの経緯などを中心に語っています

第2部「音楽」では,メロディーよりもハーモニーを大切にすること,最新のベートーヴェンのピアノ・ソナタのCDを巡る話,演奏におけるテンポの話などを中心に語っています

この本を読んで,いくつか感じたことがあります 一つ目は,彼が演奏する時に重視しているのはメロディー(旋律)ではなくハーモニー(和声)だということです.彼は語ります

「ハーモニーに沿って多くを聴き取るということが重要です.すると,メロディーそのものが横に延ばされて,時間を拡張したハーモニーになってくる 演奏していると,そのようなことが起こるのです.これを感じ取ることができると,私でなく,誰か別の人が演奏しているように思えてくる.コンサートホール自体が演奏している感じです.これは大切な感覚で,そこから自分のすべきことに熟達していくのです

この言葉は,メロディーがあってのハーモニーではないのかと思いがちな ピアノを弾いたことのない私のような素人には理解の及ばないことです 実際にピアノを弾かれる人に訊いてみたいくらいです

これに関連して,彼は影響を受けた芸術家について次のように語っています

「私自身はピアニストよりも指揮者から多くの影響を受けています.様式感と自然さとハーモニーをわが物にするためには,トスカニーニとブルーノ・ワルターの演奏を聴くことが非常に重要だと思います

なお,彼が影響を受けたピアニストは師のエミール・ギレリスはもちろんですが,ミケランジェリの演奏も高く評価しています

感じたことの二つ目は,同じロシア(ソ連)の音楽家でも,ロシアに留まって活躍した作曲家のショスタコーヴィチやピアニストのスヴャトスラフ・リヒテルに対しては批判的に見ているということです 直接的にそう言っているわけではありませんが,そのように受け取れる発言をしています.自分の思う通りに演奏できない息苦しいソ連を捨てベルギーに亡命したアファナシエフから見れば,国家の批判を受け入れ”社会主義レアリズム”に沿った曲を書いたショスタコーヴィチは体制迎合主義者なのでしょう また,60年代以降 アメリカ・ニューヨークをはじめ諸外国でコンサートを開き,”鉄のカーテン”の向こう側から突然現れた幻のピアニストとしてもてはやされたリヒテルは,商業主義に脱した演奏家に過ぎないのでしょう

感じたことの三つ目は,演奏におけるテンポに対する考え方です.彼はベートーヴェンの「熱情ソナタ」を例に語ります

「冒頭楽章から終楽章まで全曲を通じて,私はテンポを楽譜の指定から変えていません.いつもそのように務めています 私にはテンポを変えることができないのです.マーラーもこうしたアプローチをとりましたし,その弟子にあたるブルーノ・ワルターやオットー・クレンペラーといった指揮者もテンポを決して変えませんでした

この発言で思い出すのは,数年前にアファナシエフが東京オペラシティコンサートホールで弾いたブラームスの「3つの間奏曲」です これほどゆったりしたテンポの演奏が他にあるだろうか,というほど遅いテンポで演奏されました.これが驚くほどの最弱音で,ピアノの音がとても美しく響いたのです テンポは一貫して変わりませんでした.今でもアファナシエフの白くて長い指が目に浮かびます.同じテンポによる演奏は1992年録音のCDで聴けます

 

          

 

感じたことの四つ目は,アンコールに対する考え方です.彼は語ります

「たとえばシューベルトの最後のソナタという,あのおそろしい作品をなんとか演奏し終わった後で,いったい何を弾けるでしょう 6曲も7曲もアンコールを弾いて客席のブラボーを浴びる.そしてシューベルトのことはすっかり忘れてしまい,もうどうでもよくなってしまう そんなことには耐えられない.私はシューベルトのことを考える方を選びます.こんなことを言うと,偉そうに聞こえるかも知れません.しかし,メインプログラムとは何の関係もない曲を6曲も7曲も弾くくらいなら,偉そうにしていると誤解された方がまだましです

この発言は,リヒテルが60年代にカーネギーホールで開いたコンサートで何曲もアンコールに応えていたことと関係があると思います

この本では,上に紹介したこと以外にも興味深い話が出てきます.ピアノが好きな方はもちろんのこと,クラシック愛好家に広く推薦します

 

  最後の,閑話休題  

 

この本を読んでいたら,どうしてもアファナシエフの演奏するベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴きたくなりました さっそく新宿のタワーレコードに行って,ベートーヴェン「悲愴,月光,熱情」のCDを買ってきました 2015年2月16~18日.ハノーファー,ベートーヴェンザールでの録音です

 

          

 

このCDには,ピアノ・ソナタ第8番ハ短調「悲愴」,同第14番嬰ハ短調「月光」,同第23番ヘ短調「熱情」の順に収録されています

「悲愴ソナタ」は第1楽章「グラ―ヴェ:アレグロ・ディ・モルト・エ・コン・ブリオ」,第2楽章「アダージョ:カンタービレ」,第3楽章「ロンド:アレグロ」から成ります 第1楽章冒頭から,ゆったりしたテンポの演奏が続き,第2楽章に入ってもテンポは変わりません.第3楽章はアレグロなのでさすがにテンポが上がります アファナシエフが語っていた通り,メロディーよりもハーモニーを重視するところから全体的にテンポが遅くなるという演奏が展開されています.つまり「ハーモニーこそがこうした遅さ,時間の進展を支えるものである」という考えに基づく演奏です

この演奏を聴いていると,私がいつも愛聴している韓国の女性ピアニスト,HJリムの小気味の良いテンポの演奏に慣れている身には,「もどかしさ」を感じます 

 

          

 

アファナシエフの演奏は,CDで言えばグレン・グールドの演奏するモーツアルトの「ピアノ・ソナタ第11番K.331”トルコ行進曲付き”」を,生演奏で言えばかつてラ・フォル・ジュルネ音楽祭で聴いたポゴレリッチが演奏したショパンの「ピアノ協奏曲第2番」のスローテンポの演奏を思い起こします 誤解のないように付言すると両者ともそれはそれで素晴らしい演奏でした

しかし,とつとつと語りかけてくるようなアファナシエフの演奏に慣れてくると,不思議なもので,彼の方が正しいテンポで演奏しているのではないか,と思うようになってきます それは多分,私が上記の本で彼のインタビューを読んでいるからだと思います

ちなみに「悲愴ソナタ」を私の愛聴盤 HJリムのCDと比較してみると次の通りになっています(数値は演奏時間の分・秒)

            第1楽章   第2楽章  第3楽章  合計

HJリム           8.15   4.28  4.27  17.10

アファナシエフ    11.13   6.10  5.33  23.04

上記のように合計で6分近くアファナシエフの方が長くなっています

同じように,「月光ソナタ」を比較すると次の通りです

            第1楽章   第2楽章  第3楽章  合計

HJリム           4.27   2.11  7.15  13.53

アファナシエフ     9.58   3.25  9.14  22.44

上記のように合計で9分近くアファナシエフの方が長くなっていますが,注目すべきは第1楽章です.2倍の違いがあります

同じように,「熱情ソナタ」を比較すると次の通りです

             第1楽章  第2楽章  第3楽章  合計

HJリム            9.31  5.31  7.34  22.36

アファナシエフ     12.20  8.05  9.33  30.10

上記のように合計で8分近くアファナシエフの方が長くなっています 3曲で共通するのは第1楽章,第2楽章での超スローテンポ,第3楽章アレグロ・プレストでの普通に近いスローテンポです テンポこの3曲合計の演奏時間は75分58秒ですが,これは史上最長の演奏時間ではないか,と思われます

これはどちらが正しいか,といった問題ではありません.同じ「アレグロ」でも,演奏するピアニストによって解釈が異なるということです ベートーヴェンは生きているわけではありませんから,ベートーヴェンが求めた正しい解釈など分かるはずがないのです 問題は,その演奏が独りよがりのものではなく,聴く側に対して説得力を持つかどうかです その意味では,先に挙げたグレン・グールドにしても,ポゴレリッチにしても,そしてアファナシエフにしても,説得力のある演奏を展開していることでは共通していると思います

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