27日(木)。わが家に来てから今日で3698日目を迎え、トランプ米大統領は25日、外国人富裕層に米国の永住権を500万ドル(約7億5000万円)で「販売する」と表明、2週間後をめどに正式発表する というニュースを見て感想を述べるモコタロです
現在の米国に それほどの価値を見出す外国人富裕層がいるとは 思えないんだけど
昨夜、新国立劇場「オペラパレス」でビゼー「カルメン」初日公演を観ました キャストは カルメン=サマンサ・ハンキー、ドン・ホセ=アタラ・アヤン、エスカミーリョ=ルーカス・ゴリンスキー、ミカエラ=伊藤晴、スニガ=田中大輝、モラレス=森口賢二、ダンカイロ=成田博之、レメンダード=糸賀修平、フラスキータ=冨平安希子、メルセデス=十合翔子。合唱=新国立劇場合唱団、児童合唱=TOKYO FM少年合唱団、管弦楽=東京交響楽団、指揮=ガエタノ・デスピノーザ、演出=アレックス・オリエです
歌劇「カルメン」はジョルジュ・ビゼー(1838-1875)が1873年から翌74年にかけて作曲、1875年にパリのオペラ・コミック座で初演されました
スペインのセビリアのたばこ工場で働く魔性の美女カルメンは伍長のドン・ホセに興味を抱き、誘惑する 彼にはミカエラという許嫁がいたが、カルメンの魅力と誘惑に負け、軍隊を脱走しロマの密輸団の一員となる
しかし、カルメンのホセへの愛は続かず、花形闘牛士エスカミーリョに心変わりするなか、ホセは危篤の母親のもとに駆けつけるため密輸団を離れる
闘牛の日、ホセは再びカルメンの前に現れ復縁を迫るが、きっぱりと拒否される
逆上したホセは短剣でカルメンを刺し殺す
私が新国立オペラ「カルメン」を観るのは2002年、2004年、2007年、2010年、2014年、2017年、2018年、2021年に次いで、今回が9回目です アレックス・オリエの演出では前回=2021年の新制作公演に次いで2回目です
2021年の初公演は新型コロナウイルス感染拡大防止策を講じての上演でしたが、今回は制約を外した演出に練り直した上で上演されました
人気演目の「カルメン」の初日公演ということでしょうか、会場はほぼ満席です なぜか中高生くらいの若者の姿をあちこちで見かけました
招待でもされたのだろうか
指揮を執るガエタノ・デスピノーザはイタリア・パレルモ生まれ 1996年にロヴェレ・ドーロ国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で最高位を獲得
ファビオ・ルイージと出会った後、2008年から指揮者として活動を開始。2013~17年にはミラノ・ヴェルディ交響楽団首席客演指揮者を務める。新国立劇場では「さまよえるオランダ人」「愛の妙薬」を指揮した
デスピノーザの指揮で有名な「前奏曲」がスピード感あふれる演奏で開始され、ドラマティックな音楽を聴かせます 1~3月の3か月間だけオーケストラ・ピットに入る東京交響楽団も絶好調です
最初にアレックス・オリエと彼の演出についてご紹介しておいた方がよいでしょう
アレックス・オリエはスペイン・バルセロナ生まれ パフォーマンス集団「ラ・フーラ・デルス・バウス」の6人の芸術監督の一人で、同カンパニーは世界的な評価を確立した
バルセロナ・オリンピック開会式をはじめとする大規模イベントや、演劇、映画など幅広く活躍している
新国立劇場では2019年オペラ夏の祭典「トゥーランドット」、21年「カルメン」を演出している
舞台はロック・コンサートでよく使われるような鉄パイプ構造のステージになっています 主人公のカルメンは有名なバンド歌手、ドン・ホセは警察官という設定になっています
カルメンの周囲には、ミュージシャン、音響技術者、警備員、プロデューサー、そしてカルメンを追いかけるファンがいます。密輸商人はドラッグ・ディーラーです
アレックス・オリエが「カルメン」のモデルとして想定したのはイギリスのシンガーソングライター、エイミー・ワインシュタイン(1983-2011)でした 彼女は録音したアルバムが次々と賞を受賞するなど高い評価を受けた一方、薬物中毒やアルコール依存症などに悩まされ、27歳の若さで死去しました
私はオペラに関しては、基本的にオーソドックスな演出を好みます 基本スタンスは「演出は音楽の邪魔をしてはならない」「演出家のための演出はお断り」というものです
そのスタンスに照らして、アレックス・オリエの演出はどうなのか、ということが問題になります
結論から言うと、許される範囲だと思います
保守的なスタンスの人は「カルメンがバンド歌手で、ホセが警察官ってどうなのよ?」と疑問を持つことでしょう
しかし、オペラの演出は「100年以上も前の作品を、いかに現在の人々にリアリティーをもって受け止めてもらえるか」ということを目指しているはずです
その点、エイミー・ワインシュタインという人物をモデルとして設定したことによって、よりリアルな演出が可能になったと思います
カルメン役のサマンサ・ハンキー(メゾソプラノ)はジュリアード音楽院で学士号と修士号を取得した後、グラインドボーン・カップやオペラリア・コンクール、メトロポリタン歌劇場ナショナル・カウンシル・オーディションなどで入賞 2019~21年にはバイエルン州立歌劇場と契約し、多くの役に出演する傍ら、チューリヒ歌劇場、ノルウェー国立オペラなどにデビュー、世界中のオペラハウスで活躍しています
最初はインパクトが弱いかな、と思いましたが、徐々に存在感を示すようになりました
この人の大きな特徴は演技力が素晴らしいことです
「カルメン」に関してはエリーナ・ガランチャといい勝負だと思います
ドン・ホセ役のアタラ・アヤンはブラジル出身のテノールです 2007年にブラジルの平和劇場で「ジャン二・スキッキ」リヌッチョでデビュー
ボローニャ歌劇場イタリア・オペラ研修所などを経て、世界の歌劇場で活躍しています
本公演の出演者の中で一番良かったと思います
リリカルな歌唱が印象的でした
エスカミーリョ役のルーカス・ゴリンスキーはポーランド出身のバス・バリトンです 現在 ポーランド国立歌劇場を中心に活躍中ですが、艶のある低音が魅力で、聴衆を魅了しました
ミカエラ役の伊藤晴(はれ)は三重大学卒業。武蔵野音楽大学大学院修了。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第25期生修了のソプラノです パリで研鑽を積み、2013年にパリ地方音楽院修了。新国立劇場では「修道女アンジェリカ」オスミーナ、「夢遊病の女」リーザに出演
藤原歌劇団団員
純粋で真摯なミカエラにピッタリの歌唱が印象に残りました
新国立劇場合唱団とTOKYO FM少年合唱団のパフォーマンスも素晴らしかったです
ガエタノ・デスピノーザ指揮東京交響楽団は「前奏曲」「第2幕への間奏曲」「第3幕への間奏曲」の素晴らしい演奏をはじめ、歌手に寄り添いつつカルメンの強い意志やホセのやるせなさ等を表情豊かに演奏しました 「第3幕への間奏曲」でフルートを吹いたのは竹山愛さんでしょう
素晴らしい演奏でした
満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました