今年の大河ドラマは徳川家康。タヌキと称される以前の若き日の姿を、松本潤さんが熱演しています。
その徳川家康が祀られているのが日光の東照宮。ここまでくれば、何の話かおわかりだと思います。そう、名人・左甚五郎作と言われる「眠り猫」です。
東照宮には、猫以外の動物の彫刻があります。見た目にゴージャスなキジ、神様の乗り物とも言われる鶴、知恵の象徴とされる猿……という中にあって、にゃんこはやや異質な印象。なぜにゃんこなのか? なぜ眠っているのか? を紐解くと家康の思いのようなものが見えてきます。
まず、なぜにゃんこか? ひとつは警戒心が強いにゃんこも眠れるくらい平和な世の中になったという説です。まあ、わかりやすくシンプルだけど、どことなく物足りない。もう少し、見てみましょう。
実は、眠り猫の裏側には雀の彫刻が施されています。にゃんこの裏に雀? にゃんこが気が付けば、たちまち襲われてしまうであろう位置に、わざわざ雀の彫刻。その理由は雀(弱者)がにゃんこ(強者)に怯えなくてもいいくらい、平和な世の中になったことを表しているという説です。恒久平和は、現代にもつながるテーマ。その意味では、眠り猫はもっと注目されていいかもしれません。
この他にも、これより先には家康公が眠る(奥社)神聖な場所であるので、不浄なものはネズミ一匹たりとも通さないぞと暗示しているという説もあります。でも、眠っていたら守れませんよね? そこで眠り猫は家康自身がモチーフで、平和なときは寝ているが、完全に寝ているのではなく、眠ったフリをしてあたりの様子を伺いイザ!というときには襲い掛かるぞという説、さらには眠り猫の態勢をよくみると寝ているのではなく寝たフリをしていて家康を守っているという説、などがあるようです。
ひとつに定まらない様々な説が浮上する眠り猫。家康は現在でいう終活のように生前に東照宮を作ったようですから、左甚五郎とも何を彫るか相談していたかもしれません。
甚五郎:大御所さま、奥社に続くところはどんな彫り物がいいすかね?
家康:そうだなぁ。トラとかどう? 大体、陸奥の伊達とか油断できねーから、これ以上進めないように怖がらせてやるのはどうかな?
甚五郎:いやぁ~、それって露骨過ぎません?
家康:じゃあ、タヌキは? オレ、巷でタヌキって言われているそうだし。
甚五郎:う〜ん、それってヒネリがないっすよね。
家康:そうだよなぁ。どうしようか?
甚五郎:ここはひとつ、見た人が勝手にいろんなことを考えるように含みのある動物がいいと思うんすよねぇ~。
家康:じゃあ、にゃんこなんかどう? こういう場所ににゃんこって珍しいから見た人がいろいろ考えてくれそうじゃね? オレにゃんこ好きだし。
甚五郎:おっ! にゃんこ、いいすね。さっそく彫っちゃいましょう!
実際に家康がにゃんこ好きだったかは、わかりませんし、こんなやりとりは絶対になかったと思いますが、大河ドラマの進行と合わせて眠り猫以外の東照宮についてもいろいろ調べていただけると、楽しいかもしれません。
ところで、写真は先日、大阪に行ったときに見かけたにゃんこ。写真を撮ろうとしたら、ひょいと夫婦善哉の提灯がバックになる位置でポーズを決めてくれました。この辺りの広報担当?