「悪だくみから救い出された」 使徒言行録 12章6~24節
ヘロデ・アンティパス王は、バプテスマのヨハネを殺害しました。ユダヤの人々の前で、自分の面目を保つためでした。その息子、ヘロデ・アグリッパ王は、使徒であるヤコブを殺害しました。それは、ユダヤ人を喜ばすためでした。二人の王は、政治的な目的のために人を殺害しました。またヘロデ・アグリッパ王は、ペトロも殺そうと考えて牢屋に入れ、4人一組の兵士、四組に見張りをさせました。引き出される前夜、ペトロは二本の鎖でつながれ、二人の兵士の間で眠っていました。そこに主の天使が現れて、ペトロを外へと連れ出し、第1、第2の衛兵所を通り過ぎ、何事もなかったかのように脱出しました。振り返ると、たいへん技巧的な文章であるように感じます。歴史と政治的な視点あり、数字の語呂合わせあり、現実の物語と幻の物語が交差するという文学的な面白さもあります。
悪だくみから救い出されたペトロが、仲間の家の戸を叩いたとき、ペトロが帰ってきたことを、門を開けて確かめもせずに信じたロデと、ペトロが救われるようにと熱心に祈っていたにも関わらず信じなかった人々のことが伝えられています。女中の仕事に追われていたロデが信じ、熱心に祈っていた人が信じなかったという逆説的なことが起こっています。この後、ヘロデ王が急死するという物語が伝えられています。食料輸入にまつわるティルスとシドンの住民とヘロデとの対立と和解という、政治的な問題が取り上げられています。和解の席上(政治交渉の場)で神のように振る舞ったヘロデは、主の天使によって打ち倒され、急死しました。これらの物語は、宗教を政治利用してはならないと考える、教会の姿勢を表明しているものではないかと思います。