今から10年前の昨日06年8月2日 有明コロシアムで行われた
WBA:Lフライ級王座決定戦で、亀田興毅はファン・ランダエダ
相手にダウンを奪われながら僅差の判定勝ちで世界王者になった。
デビュー前から熱血親父が育てた3兄弟としてマスコミが取り上
げていた亀田一家だが、特に長男はデビュー戦から派手な言動とパ
フォーマンスで注目を集めKO勝ちを量産し「亀田とKOはセット」
と力説していた。
当時K-1やPRIDEといった総合格闘技などに人気を奪われていた
ボクシング界はマスコミの注目を一身に受ける亀田一家の人気に肖ろ
うという姿勢で全面バックアップする形だったし、サマン・ソーチャ
トロンやノエル・アランブレッドら日本人ボクサーが苦戦しまくった
かつての強豪達を倒す姿にファンも新たなスター誕生へ期待していた
のだ。
ところが前哨戦と名打たれた06年3月のカルロス・ボウチャン戦
では大して鋭くもないジャブを被弾し続けて顔を腫らしフック主体の
攻撃も悉くシャットアウトされる大苦戦の末に、レフェリーの死角で
放ったローブローで倒すという勝ち方から心あるファンは実力に疑問
を持ち始めた。
そして迎えた5ヵ月後のランダエダ戦で1Rに痛烈なダウンを喫す
るとボウチャン戦同様、フックを振るって単調な突進を巧く捌かれる
だけでなく時折カウンターまで貰う始末で12Rを終了し負けは確実と
思われたものの意外にも判定は亀田に上がる。
これ以降 亀田の試合からは名の知れた強敵との試合がなくなり、
決して強くない相手を選んでも「亀田とKOはセット」どころか僅
差の判定勝ちが増えるばかりで極めつけはバンタム級で正規王者の
アンセルモ・モレノをスーパー王者に祭り上げ半年前まで引退状態
のアレクサンドル・ムニョス相手に決定戦を行なって3階級制覇を
名乗るなど賞賛よりヒンシュクを買いまくる事になった。
ビッグマウスで相手を挑発するキャラといえば辰吉丈一郎が思い
出されるがデビューした時から知名度は辰吉を上回っていただけに、
もう少しマシなマッチメイクをしていれば炎上キャラにならずに済
んだのではないかと思う。
最初は噛ませ犬系の選手から始まり力の落ちたビッグネームとの
対戦もよくある事だから文句を言う筋合いはないが、辰吉が世界戦
前にアブラハム・トーレスと戦ったようにランダエダ戦の前に一桁
の世界ランカー相手に試合をしたりするなど世界に行く前に強豪と
戦わせなかった事が悔やまれる。
カウンターパンチャーである亀田にとって噛ませ犬とばかり対戦
した後に強豪相手にカウンターを取るというのは至難の技だろうか
ら、父親を中心にした陣営やTV局に持ち上げまくったマスコミの
罪は重いと思うし まっとうなマッチメイクで鍛えていればそれな
りの才能はあっただけに惜しいと今さらながら思うのだ。