日本人ボクサーが目指すべき到達点は

伊藤雅雪 米大手プロモーターと1年3試合の3年契約「期待してもらっていると感じます」

 先日WBO:Sフェザー級王者の伊藤雅雪が世界的プロモーター
であるボブ・アラム率いるトップランク社との、1年3試合&3年
契約を結んだというニュースがあった。

 この契約で伊藤は5月の防衛戦からアメリカを中心に3年間で
9試合を行う事になったわけで勝ち進んでいけば、強豪相手との
ビッグマッチができるのだから実力さえあれば凄くありがたい事
になる。

 一方で昨年9月に田中恒成と激戦の末に判定で敗れWBOフラ
イ級タイトルを失った元王者の木村翔が3月30日に上海で再起を
飾り、今後は中国を主戦場にする意向を表明しているとの事。

 WBAバンタム級王者・井上尚弥が出場するWBSSの準決勝も
スコットランドで行われるわけで、最近は日本人ボクサーの海外
での試合が目立ち始めている。

 思えば昭和から20世紀にかけては日本人ボクサーが出場する
世界戦は基本的に日本で行われるケースが多く、海外で戦うのは
大手TV局が付いてないジムの選手というのが定番で期待もされ
ずに当然勝率も悪かった。

 ところが21世紀に入ると視聴率の奴隷と化した民法地上波は
以前に比べてタイトルも増えた事から以前ほど視聴率が取れなく
なったためボクシング中継から手を引くケースが目立ち、複数の
世界戦を組まなければ単独興行で防衛戦ができない世界王者まで
出てくる始末。

 つまり民法地上波のTVマネーをアテにしたビジネスが曲がり
角を迎えているわけで、昭和の時代なら多くの人達が知っていた
世界王者を今では知らないという人が増えているので世界王者を
7人抱えているわりに昭和の時代のような充実感がないのだ。

 ただ昭和型のビジネスはTV局の都合で世界戦が組まれるため
本来なら今回の伊藤のように年3試合を行いたくてもTV局の事
情で2試合しかできないばかりか、内山高志や山中慎介のように
名のある強豪選手と戦いたくても呼ぶには資金が足りず敵地に乗り
込もうとしてもTV局が許さないという事になり噛ませ犬のような
相手と戦い続けさせられて才能を錆び付かせてしまうという弊害も
ある。

 思えば帝拳ジムではエースの山中慎介にTV局が付いていたため
バックアップが今ひとつだった三浦隆司が海外で強豪相手に戦えた
のに対し、三浦に世界戦で完勝していた内山高志はTV東京の看板
選手だったばかりに三浦が戦ったような強敵と対戦できずに終わっ
たという例が記憶に新しい。

 ボクサーというのは一部を除いてより強い選手と戦いたいという
気持ちを持っているのだが、民法地上波は以前ならボクサーをバッ
クアップしていたのが今では足かせになってしまっている事もある
のだ。

 伊藤や木村のように海外で試合を行う場合は強豪と試合をできる
チャンスが増える代わりに負けるリスクも高く、間違っても噛ませ
犬的な挑戦者との試合はできなくなる。

 しかしこういった厳しい境遇に身を置く事こそ本当のプロの姿に
なるわけだから、こういった流れはファンとして大いに歓迎するべ
きだと思うのだ。

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