昭和ガメラのターニングポイント

　特撮ファンの間で好評だったのが、金子修介が監督をした
平成ガメラ。
　当時毎年上映されていた平成ゴジラシリーズよりも、完成
度が高く、うるさ型のマニアックなファンまでもを魅了する
ものだった。

　一方で昭和のガメラは‘子供の味方’というキャラクター
が有名で子供向けのイメージが強かった。

　ところが意外にも昭和ガメラの初期作品はそうではない。

　最初の‘大怪獣ガメラ’では原爆の影響で目覚め・・・と
いうようにゴジラと設定が似てはいた。
　そしてガメラに対しアメリカ軍の核ミサイルが照準を合わ
せているという恐ろしい場面すらある。
　燈台に取り残された少年を救うというシーンがあったもの
の、以後ほどは子供好きの一面は目立ってない。

　2作目の‘ガメラ対バルゴン’では子供は全く登場しない。
　音楽が‘水戸黄門’の木下忠司で出演も本郷功次郎や江波
杏子、早川雄三、藤岡琢也といったそうそうたる面々が名を
連ねているのだ。
　ニューギニア戦線の生き残りの復員兵が発見していた巨大
オパールを遺骨収拾と偽って探しに行き、発見したものの
早川雄三演じる小野寺が独り占めするために仲間を次々と
殺害していくという子供向けにはハードな内容だ。
　しかもそのオパールの正体がバルゴンの卵で、小野寺が
持ち帰ったばかりに・・・・という具合に話が進む。
　この小野寺は最後にバルゴンを誘導するダイアを奪おうと
してバルゴンからダイアごと食べられるという非業の死を
遂げる。
　自衛隊との攻防戦も戦車や戦闘機による攻撃後、長距離ミ
サイル攻撃、淡水に弱いバルゴンを人工降雨による足止め
作戦やダイアで琵琶湖まで誘導して沈める作戦。
　更に熱線である虹を出させて反射して撃ち返す反射鏡作戦
など多彩な作戦が立案されて実行している。

　3作目のガメラ対ギャオスはシリーズ中最高傑作と言われて
いる。
　高速道路工事に反対する村長一派は反対運動で違約金を吊り
上げようとする。
　その村長が所持している裏山にギャオスが出現し・・・と
いう展開から始まるが、ここでギャオスに食べられそうになっ
た村長の孫をガメラが助ける。
　ここいらからガメラの子供好きが始まったとしか思えない。
　違約金を吊り上げようとする村長を日活時代からの悪役で
ある上田吉ニ郎が演じているのも見事だ。

　ところが4作目のガメラ対バイラスから、一気に子供向けの
要素が前面に押し出されてきた。
　その象徴が菊池俊輔作曲の‘ガメラマーチ’
　この作品こそ本郷功次郎がバルゴン、ギャオスに続いて主役
だが次の対ギロン、対ジャイガー、対ジグラでは脇を固める有名
俳優が見かけなくなるのだ。（大村昆などがチョイ役で登場
するが）
　
　これを考えると対ギャオスまでは大人向けを意識して作って
いたが、対バイラスからは完全に子供向けになってしまったの
が分る。
　
　これのカウンターカルチャーとして作られたのが平成ガメラ
のような気がしてならない。