内山、現役引退を表明=日本男子歴代3位の11連続防衛―ボクシング
早いもので元WBA:Sフェザー級王者の内山高志が引退を発表し
てから10日が経つ。
内山といえばKOダイナマイトの異名を持つ強打者で10年1月に
前年10月にホルヘ・リナレスを1RでKOしたファン・カルロス・
サルガドを圧倒した末に12RでKOしてタイトルを奪取して以来、
昨年4月にジェスレル・コラレスに敗れるまで6年もの間に11度の
防衛に成功していた名王者である。
年齢的にも37歳と高齢になっているしジムの後輩・京口紘人が
新王者になり田口良一と共に売り出せる事からの決断だろうが、ア
メリカでメインを張った三浦隆司を左一本でストップするだけの力
量を持ちながらジムの方針でニコラス・ウォータースをはじめとし
た本物の強豪と対戦する事なく終わったわけで11度も防衛しながら
ファンの間では‘不運’と言われる所以だ。
個人的にも初防衛戦でカルロス・グラナドスを豪快にKOした試
合を生観戦したのだが、アリーナ席の最後列で見ていたにも拘らず
フィニッシュの右を打ち込んだ時の‘ボコッ’という音は忘れられな
いし凄い王者が出たと思ったわけである。
ただ内山の海外進出を阻んだ要素の1つがケガの多さで三浦隆司
相手の3度目の防衛戦で右拳を痛めて手術をするだけでなく、左肘
の手術もするなど11年以降は年に2度のペースでしか試合ができな
かった事。
しかも11年から始まった大晦日シリーズの顔となったため大晦
日に必ず試合が組まれていたわけで、例えば15年10月に河野公平
がシカゴで亀田興毅と防衛戦をした時にノンタイトルでもいいから
リングに上げて試合をさせればいいのにと思っていたが大晦日の防
衛戦に差し支えるという理由で組まれなかった。
これは長谷川穂積や山中慎介のように地上波TVの顔になっていた
選手の宿命で、どうしても局の都合が絡むので海外進出というのは難
しくなる。
さらにジムの会長・渡辺均の方針が具志堅用高越えという昭和的な
感覚だったのが災いした事もあるだろう。
3度目の防衛戦でダウンを奪われながら完勝した三浦が初防衛戦を
メキシコで行い5度目がラスベガス、さらにロスでメインを張るなど
海外で評価されたのが地上波TVの庇護を受けてなかったという皮肉
な事になっている。
それを考えるとフジTVの顔でありながら9月10日にアメリカで
防衛戦を行なえる井上尚弥が、その呪縛を解いてくれるか大いに注目
したい。