元の木阿弥という言葉がある。
現状を打破するために何らかの変革を打ち出すのだが、今ひとつ
結果が捗々しくなく手を加えているうちに気がついたら最初に戻っ
ていたというもの。
ヒーロー作品ではゴジラが当初は核の恐怖を体現する存在だった
のが徐々に怪獣対決モノになり、70年代に入ると人類の脅威から
一気に人類の味方に成り下がったので人気も下り坂となって75年の
メカゴジラの逆襲で一旦シリーズを打ち切り84年に単体でゴジラを
復活させた。
この時に東宝はゴジラを最初の核の恐怖を体現し人類の脅威という
位置付けに戻すべく、メカゴジラの逆襲の続編ではなく54ゴジラの
続編という形でリセットしたのだった。
たしかに84ゴジラは面白かったもののエンターテイメント的には
インパクトに欠けたため89年のvsビオランテ以降は怪獣対決モノに
路線変更したのだったが、91年からはキングギドラを皮切りにモス
ラやラドンにメカゴジラといった旧シリーズに登場した怪獣を復活
させたのだ。
これだけならよかったのだがvsメカゴジラではゴジラの種の幼体
ともいえるベビーゴジラが登場すると、リトルゴジラからゴジラジュ
ニアに成長させてレギュラー出演させるなど昭和のミニラの悪夢を
思い起こさせるような状況になった。
海外作品を見てもギャレス・エドワーズ版ゴジラでもムートーと
いう敵キャラが登場しており人類の脅威でもあるものの、ムートー
を倒して結果的に人類の味方という事になっている。
こうしてみると結果的にではあるがゴジラが人類の味方になるなど
否定していた昭和の設定に戻ってしまうという皮肉な結末を繰り返
している。