各競技発祥の地ゆえの拘り

 今年の野球界はWBCの年だったのだが大会3連覇を狙った日本はベスト4で敗退
しただけでなく第1回の準優勝国のキューバや、開催国のアメリカが2次リーグ敗退
だったのも意外だった。


 長嶋茂雄の著書ネバーギブアップではキューバを訪問した長嶋にベースボール
発祥の地はアメリカではなくキューバという事を首脳が語っていた事が記されている。


 つまりベースボール発祥の地を自負するアメリカとキューバがベスト4にも残れな
かった事に他の競技との共通項を感じるのである。


 サッカーやラグビー発祥の地がイングランドという事は衆目の一致するところだが、
発祥の地であるイングランドが肝心の世界一を決めるW杯では それぞれ1度づつ
しか優勝してない事に注目したい。


 日本でも発祥の地である柔道がロンドン五輪では男子が遂に金メダル0に終わる
など凋落著しい事を示してしまった。


 発祥の地が必ずしも世界一ではないというのは関係者だけでなく観客の‘拘り’が
戦い方の幅を狭めてしまい、柔軟性を欠くという事実がある。


 柔道でいえば関係者や観客は‘全試合一本勝ち’という理想がありポイント勝ちを
重ねて優勝しても評価は低いのに対し、実利主義の国などは勝ち方に拘らず評価
される傾向が強いので どうしても勝ち方に拘る日本が不利になるのは当然だ。


 サッカーでもイングランドは伝統の放り込みによるパワープレーが重視されるので、
スペインなどがやっているボールをキープしショートパスをつないでいくスタイルに
対しては分が悪い。


 それを考えると‘ベースボールのベストスコアは8対7’というアメリカの理想はWBCの
ような短期決戦では‘ロースコア勝負で競り勝つ’という日本のスタイルに比べて不利
だし、大会がシーズン開幕前の3月に行われるという事がアメリカ不利に拍車をかけて
いる。


 ただ発祥の地ならではの文化の大切さは柔道の母国である日本人も身に沁みて
分かっているわけで、例え日本柔道が一本勝ちが1試合もなくポイント勝ちばかりで
金メダルを量産しても決して喜ばないだろうというのは容易に想像がつく。


 それを考えると今年のWBCのファイナリストがアメリカ&キューバスタイルに近い
ドミニカとプエルトリコだったのは極論すればベースボールが‘ロースコアで競り勝つ’
という事がセオリーにならないための天の配材による結果だったと思えるのだ。


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