今から40年前の今日76年4月1日に奈良の橿原市体育館で行わ
れたWBC:Jライト級タイトルマッチのアルフレッド・エスカレラ
-バズソー山辺戦は、日本ボクシング史上に残る大混乱を引き起こ
した試合だった。
王者のエスカレラは前年7月に茨城で柴田国明に挑戦し2RKOで
タイトルを奪取して以来3度の防衛に成功していたのに対し、挑戦者
の山辺はハワイを主戦場にして‘丸太切り'と呼ばれる左強打を武器に
一時は日本王者にもなっていた事から山辺のタイトル奪取への期待は
大いに高まっていた。
実際に試合が始まると距離を取りながら戦う王者に山辺が肉薄する
一進一退の展開で進むのだが、迎えた6Rに意外な結末を迎える。
ロープに詰ってエスカレラの連打を上体を振って凌いでいた山辺に
対し、レフェリーのイスマエル・キニョネスが唐突にストップした事
からダメージのなかった山辺をはじめとした陣営は猛抗議をし納得い
かない観客は大激怒しリングに缶やビンが投げ込まれるなど大混乱に
なったのだ。
当時モハメド・アリがキンシャサでジョージ・フォアマンから逆転
KOでヘビー級タイトルを奪回した試合でアリが わざとロープに下が
り、相手に打たせて打ち疲れを狙ったりスキを見つけてカウンターを
叩き込んだりしていたのを他のボクサーがマネし始めており山辺自身
もアリのロープ・ア・ドープをやっていたとの事。
だからロープに詰って手が出なくなった状態の場合スタンディング
カウントを1度は取るというのがセオリーだったし大したダメージが
ないにも拘らず いきなりストップというのは珍しかったし、処置し
たレフェリーが王者と同じプレルトリコ人だったというのも混乱に拍
車をかける事になったのだ。
という事で3ヵ月後に同じ会場で再戦が行われ熱戦となったものの
終盤エスカレラが地力を発揮し、判定勝ちで5度目の防衛に成功して
いる。
ちなみに前年の4月1日に富山で行われたWBAフライ級王者・花形
進が初防衛戦で前王者のエルビト・サラバリア相手に ほぼ完璧な試合
運びで快勝と思われたものの、意外な逆転判定でタイトルを失ったため
判定に納得がいかない観客がリングにモノを投げ込んで大騒ぎになって
いたので2年続けて4月1日におかしな判定で大混乱という事になった
わけだ。