宝石ざくざく◇ほらあなJournal3

ロシア語をはじめ、外国語学習に関するあれこれを書いておりましたが、最近は…?

非成果主義について

2017年04月28日 | 
小説で新刊が出ると気になる数少ない作家の一人が津村記久子さんで、前に図書館で借りていると書いたけれど、近年は単行本を買ったりもしている。

テレビドラマにもなったらしいけど、『この世にたやすい仕事はない』を読んで以来、私はおかきの袋裏の豆知識的な文章を読むたびに、この小説のことを思い出している。
最近読んだのでは短編集『浮遊霊ブラジル』に入っている『地獄』というのがおもしろかったー必読!
これは図書館で借りたので詳細を振り返れないけど、読後なんかすごく明るい気持ちになった。

エッセイも好きだ。
ということで、『まぬけなこよみ』も購入。
このタイトルはどうかと思うけれども、平凡社のスマホアプリ『くらしのこよみ』にちなんでいるそうで、歳時記をテーマにしたエッセイである。

今現在の季節のページからぽつぽつと読んでいるのだけど、「四月の重い眠り」と「非成果主義的GW」に、これだけで買ったモトは取れた!と思った。

4月のいやな感じというのは意外と(花粉症は抜きにして)他に読んだことがなかったと思う。
「非成果主義的GW」には、連休になるとやたら海外に行ったり、遊びに行って渋滞に巻き込まれたりする現象について
「いったいこの休みは何だったんだ?と愕然とすることを防止するためだろう。休みに対する成果主義を突き詰めると、海外旅行に行きつくのではないか。」
と書いていて、ゴールデンウィークでなくても、「意味のないことに耐え」られなくて、「何か微小なことでも、成果が出ることをやりたい」という心の状況を、あんまりよろしくないと津村さんは思っている。

電車の窓からの風景を眺めるように、
柏餅の葉っぱをめくること自体が楽しかった子供の頃のように、
ただ目の前のことを受け入れて楽しむ。
ぼおっとする。

このエッセイなんだかいいなーと思って、ゴールデンウィーク前に書いておきたかった次第。

私の場合は、今まであまりにも非成果主義だったもので(それは自分の怠惰を肯定するためだったりもする)、残り時間を考えてあせったりもしているのですが(^^;

関係ないのだけれど、津村さんが高校の時、税務署のアルバイトで「ストラトキャスターを買った」というのにビックリ。ストラトキャスターという言葉自体私はつい最近知った(^^;)バンドTシャツの話も好きだ。カッコいいなー。

気の抜けた炭酸水

2017年04月28日 | 
炭酸飲料のコマーシャルは、「青春」とリンクしていることが多いようだけど、
「なるほどなーたしかになーCMプランナーというのはさすが見識が高いなー」
と、ふと新しい発見をしたように思った。

というのは、前述の中野翠さんの著書『あのころ、早稲田で』を読んだのち、ふと浮かんだ言葉が
「気の抜けた炭酸水」
だったもので。

悪口や批判と取られると困るのですが。
開栓して時間が経って、炭酸がほとんど抜けてしまったジュース、意外とほっとするおいしさがありませんか?
炭酸のヒリヒリしたのど越しがなくなったことで、マイルドに、より甘く感じられる。

「炭酸飲料が苦手」という人の話を聞いて、夏場は水も炭酸水を選んで飲んでいた私はびっくりしたのだけど、たしかにあののど越しは、スカッと爽やかと言えばそうだけど、時によって「こんなものは要らない」「なんか疲れる」という異物感があるかもしれない。
そしてあの爽快なヒリヒリは、時によっては、無数の微細な針で刺されているような痛みに感じられるかもしれない。

そうか、そういう二面性も「青春」に通じるんだなー。

何が書きたかったかというと、同じエピソードでも昔の中野さんの文章にはまだ青春の「ヒリヒリした痛み」が感じられて、読んでいるこちらも青春からそんなに離れていなかったこともあって、もっと切実にその痛みを感じ取って共感していたように思う。
(私が中野さんの本を読み始めたのは20代半ばだったので、学生時代よりも、それ以降のほうに強く共感していたんだけれど)

歳を取るということは、炭酸水からだんだん気が抜けていくようなものなのかなー
などと思った次第です。

炭酸水からだんだん気が抜けていくように、
ヒリヒリした記憶も時が経つにつれてマイルドに、
最期には、ほのかな甘味だけが舌に残る...
のかも?

記憶の断片

2017年04月26日 | 
上京時に買った本3冊
『創作あーちすとNON』(のん 太田出版)
『あのころ、早稲田で』(中野翠 文藝春秋)
『まぬけなこよみ』(津村記久子 平凡社)

後2冊は、後日県内書店でも見かけたけれど、のんさんの本(写真集か)はいまだ見ない。
地域格差。
神保町東京堂では山積みだったのに。
中野さんの本は店内ベストセラーに入っていた。

中野翠さんの『あのころ、早稲田で』
学生運動そのものだけでなく、周辺の些細な事柄、人物群像、当時の日常生活や流行風俗の話、けっこう短い文章で話題が変わっていったりするんだけれど、そのフラグメントの積み重なりという感じが、回想録としてはリアルでいいんじゃないかと思った。
早大闘争とか事象そのものへの興味で読んだ人にとっては期待はずれだったかもと思ったりもするけれど、中野さんの文章の特質は違うところにあるのだ。

今放映中のNHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』で、ビートルズの話がちらっと出て、はっと思ったのだけど、このドラマの主人公みね子と中野さんは同い年なのだった。

「後日談いくつか」の最後に、「くわえタバコで」というコラムが収録されている。
古いスクラップ帳を点検していたら出てきたという。
中野さんの本質が表れているステキなコラムだと思うんだけど、
「単行本にも収録していない」ことはない。
2004年分のコラムをまとめた『ここに幸あり』の中に入ってましたよー。
印象に残っていたので覚えている。

中野さんが覚えていないのはしょうがないとして(^^;担当編集者の人はチェックしなかったのか、単行本初出としたほうが価値が上がるという意図もあったりして?でも毎年コラム集を出している毎日新聞社の担当の人としてはひっかかるよね・・・
まぁ、時評コラムは書店から消えるのも早いから、こういう形で収録されたのはよかったと思うけれども。

走り書きで失礼

音・言葉

2017年04月20日 | 音楽
(4/22記)

休みを取っていたので20日は1日フリーだった。
都内美術館展覧会の一覧を眺めながら、どこに行こうか迷っていたのだけれど、思い切ってこちらへ。

「坂本龍一 設置音楽展」@ワタリウム美術館

「思い切って」というのは大げさではなく。
このブログの最初のほう2009年末に坂本さんのコンサートに行っているけれど、その後は遠ざかっていた。
新しいアルバムも買っていない。
環境音楽っぽい?と聞いて、まぁなんというか敬遠していたのだ。

東京での貴重な1日、つまらなく思ったらどうしようーという不安もあったのだけど、
絵画を観るよりも「体験した」という実感が持てそうで、
「東京での体験」としては良い選択ではないか、とか思ったり。
19日放送のNHK『クローズアップ現代』出演を知って、予約録画しておいたのだけど、
帰宅後に番組を観たときに、行った後悔より行かなかった後悔のほうが大きいかもなー、
などと逡巡の末。

結果。
行ってよかった。すごくよかった。
「設置音楽」という企画、いいなと思った。
自分の家では、こんなふうに音に耳を澄ませられる環境や心構えはつくれない。
チケットは私は1回券だったけど、会期中何度でも入れるものもあって、もし私がホームレスだったら、毎日来て1日中いるかもなどと思ってしまった。
私はここで初めて最新アルバム『async』の音を聴いたわけなんだけれど、
初めて聴いたのがこの場所でよかったなーと思った。
(アルバムを聴き込んでから行くとまた感想が違うと思いますが)
フルに聴けるだけの時間の余裕があったこともよかった。

その場では買わなかったけど、後日アルバム『async』購入。
聴きながら、ふっと展示でのインスタレーションが頭に浮かんだり。
タルコフスキーの詩、『ザ・シェルタリング・スカイ』の文章を活字で見たいというのもあった。
『ザ・シェルタリング・スカイ』の満月の文章はフランス語、ロシア語、中国語と広東語?、アラビア語があった。
その昔「Thatness and Thereness」とか辞書片手に解読しようとしていたことなど思い出したり(^^;
タルコフスキーの映画、観てみたいけど、これも家では絶対無理そう。
どこかで上映会やらないかなー。

この展覧会ではメッセージを書くコーナーがあったのだけど、こういうのとか、その場で感想ノートを書くのとか、短時間でささっと書くのはほんとに苦手だー。いいことを書きたいと自意識過剰になるのがいけないんだと思うけど・・・今『async』の特設サイトを見たら、アルバムに対する感想とか疑問とかには坂本さんから返信があったりするのですね。ああ、その場では何も具体的な言葉が思いつかなかった・・・今も思いつかないけど・・・

ピアノ!ラーメン!恐竜!

2017年04月19日 | 音楽
(4/22記)
行ってきました!
「矢野顕子×上原ひろみ TOUR2017 ラーメンな女たち」@東京文化会館

初めて行く東京文化会館は上野公園内、JR上野駅の目の前。
雲ひとつない青空に新緑が映える。
早く着いたので、ツアーグッズを買ったり(先行販売していた)、レストランで腹ごしらえしたり。
開場後は5階席までのぼってステージを見下ろしてみたり。
見晴らしよく音も良さそう。1階のいちばん前とかよりもかえっていいかも。
(蛇足ながら、各階にトイレがあり、上階のトイレは空いていた。急ぎの時は1階トイレではなく階段を駆け上がるのが吉かも。と豆知識)
開演前のBGM(レイ・ハラカミ)に耳を傾けながら、座席でぼおっとしている時間もなかなかよかった。

そしていよいよ開演!
ネットでもういろんな感想が書かれているので、付け足すことはなく、新しいことは書けない!
とにかく、すごかった!楽しかった!ハッピーだった!

まったく蛇足ながら思い出のために衣装のことを書くと、ひろみさんの最初のお衣装、ん?浮世絵柄?というのは気になったが(^^;休憩後のドレスは「曇り空の下の桜」という感じのピンクで、日本の春らしい感じがしていいなーと思った。矢野さん休憩後は真赤なロングドレス。
あ、そうそう、ひろみさんがツアーグッズ紹介のために、トートバッグを肩から下げてとことこ歩いてくる姿がめちゃくちゃキュートだった。まったく演奏とは無関係だけど(^^;
矢野さんのうながしへのぼそっとした返しが絶妙で、まさに「打てば響くような」。
MCの相方としてもかなりの相性のよさとみた。
(ひろみさん本人は「私は演奏に専念しますので」と思っているのかもしれないけど(^^;)

休憩後のひろみさんのソロは「トムとジェリー」に「アイ・ガット・リズム」が挟まっていて、「!浅田真央ちゃんが競技で使っていた曲だー」(というのが個人的な認識(^^;)と、なんとなく嬉しかった。
それにしても、緩急自在、高速にして正確無比、強弱硬軟ピアノの音ってこんなに幅があるんだーと、シロウトながらひろみさんの演奏にはあらためて驚愕驚嘆。会場中からどよめき。
このテクニックに張り合おうとするミュージシャンだと、この後にソロで演奏するのはなかなかツライものがあるのではないかと思ったりするのですが。
そこはわれらが矢野さん、速度がひろみさんの4分の1(で弾きますと本人談)でも、即興歌詞でもスバラシイ!
ひろみさんと演奏スタイルがまったく違うのがやっぱりいいのかな。
私、今回あらためて、矢野さんのピアノ(と歌唱)はやっぱり特別に好きだーと思った。
でも何が特別にいいんだかは言葉で説明できない。
この矢野さんのピアノの魅力について誰か解明してほしい。
『ユリイカ』の特集号を読み直せば分かるかなー・・・

(タイトルはツアーグッズであるキーホルダーに付いているモチーフより。これで三題噺をつくるのは難しいなー、あ、このコンサートの内容がそれか(^^;)

カップル競技について

2017年04月12日 | にわかフィギュアスケート
小倉千加子さんのテレビコラムのタイトルにたしか「あの頃浅田真央がいた」というのがあって、記憶に残っていたのだった。
このコラムの頃は現役選手だったわけだけど、現役ながらのレジェンド感を的確に表現した秀逸タイトル。
後からこの時代を振り返った時に、確実にそういうふうに思い出すんだろうなー・・・

と、今現在の出来事への反応は、また後でじわじわと文章化することとして

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現在JSPORTS4での今季世界選手権の全滑走を放送中で、先日やっとペアのSPをざっと観たところなんだけれど、北朝鮮からも1組出場していたのに驚いた。
これが、技術的に上手なことに加えて、音楽へのノリもよく、見た目の印象も爽やか、衣装も素敵で似合っている。
最初の腕の動きに多少あちらの国っぽさを感じたくらいで、北朝鮮にこんなスケーターがいるなんて!とすごく意外に感じた。
意外に感じるということで、いかに自分が北朝鮮という国に偏見を持っているかを再認識させられる。
そして、国の政治への印象と国民一人一人への印象を同一視してはいかんなと思う。
そして、スポーツとか芸術とかってやっぱり世界平和に貢献するものだなーと思う。
少なくとも私はこのペアを見て、北朝鮮への印象が変わった。
まぁ、このペアは冬季アジア大会でのメダルはあるものの、国際大会への参加は初めてとのことで、点数稼ぎにがつがつしてなさそうだからこその爽やかさで、これがうっかり優勝争いに加わろうものならどんな恐ろしいことになるかというのは予想できるけれど・・・

そういえば土地柄スケートは盛んそうだし、北朝鮮で好まれそうな芸能と、フィギュアスケートで良しとされがちな独特な美的センスは親和性が高い、と思う。
それにしても、あのペアもコーチ陣も現代的で垢抜けている感じだった。普段はペア大国の中国で練習しているのか、または中国から招へいされた人たちなのかな?

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日本でペアやアイスダンスのカップル競技が隆盛するかについては、身体的な側面よりも、メンタル的な問題のほうが大きいと思っている。
個人的に、また日本人一般にシングルのほうが人気あるのは、たった一人で氷上に向き合う姿にサムライ的な美学を感じるからかなと思ったりして。
が、最近のテレビでのぺこ&りゅうちぇるの人気定着ぶりを見ると、将来は日本でもごく若いうちから異性のパートナーと組むことに抵抗なくなっていくのかもーと思ったりする。
そういえば、と唐突なようだけれど、日本には夫婦漫才という伝統があるではないの。
夫婦でなくても男女で組んだ漫才が人気を博してきている。
ああいう感じというか仕事に向き合うメンタリティをスポーツに持ち込めば、と思ったりする。
ああそういえば、あした順子・ひろしのお二人はステージでダンスしてたなー・・・漫才の場合、私見では、トシを取るにつれて魅力が出て人気がでるという感じ。
日本人はやっぱりあんまりナマナマしいのはダメなのかなーそういう意味でもぺこ&りゅうちぇるのファンタジー感は貴重。フィギュアスケート界で継承してほしい。

文章の極意を教えられる

2017年04月09日 | 
文庫になってからとも思ったけど、やっぱり今読みたいなと買ってしまった。
『いのちの車窓から』(星野源 KADOKAWA)
これがベストセラー本の力か。

装丁がすっきりしていて好き。
文章と挿絵イラストとのバランスが好き。
いい本だ。

「あとがき」に、おおげさだけど衝撃を受けた。
いい文章とはどういうものかについて、すごく腑に落ちた。

いい文章は
「『これを伝えることによって、こう思われたい』という自己承認欲求に基づいたエゴやナルシシズム」
が鼻につかない。
表現欲伝達欲の中にはどうしてもエゴやナルシシズムが入るものだからゼロにはできないけど、そういうものはなるだけ削ぎ落として、「ありのまま」を書く。
プロとアマチュアの違いもそこにある。

そういうことを、ほかで読んだことがあったかもしれないし、漠然と感じていたような気もするのだけれど、この本のあとがきは、すごく分かりやすくてなるほどーと思った。