6月23日 水曜日 手術当日 1
8時半に手術室の外まで歩いて行く、そこでM子さんにお礼を言ってお別れ。
手術室のドアを開けると3人ほど入れるような小さな部屋で僕の受け渡し式が行われた。
次のドアを開け真っ白に輝く照明の施された大きな部屋に入り、
僕は2と書かれた手術室に通うされた。
手術台に座り病衣を脱がされ横たわり「眠る薬を入れます、8ミリ入りました」と聞こえたと同時にあとはもう意識はありません。
次の瞬間「Yさん、終わりましたよ、目を開けてください」と言われ目を開けると真っ白な照明が見え「M子さんがいますよ」と言われ横を向くと「よかったね、長くかかったのはいい証だってよ」と言っていた。後で知ったのだが彼女は切った物を見せられたと言って感心していた、
でも「8ミリ入れました」と言われてから数分しかたっていないような感覚は一体どういうことなのだろう。手術の所要時間は7時間。
これもあの不思議な全身麻酔のなせる技か。
6月23日 水曜日 手術当日 2
「これからお部屋に行きますよ」と言われたものの一向に動く気配がないと自分では思っていたが、おそらく再び意識がなくなっていたのだろう、
気がつくと目の上で看護師さんらしき人が何かをしているが手を動かすこともできなければ話すこともできない。
問いかけられると「あ」とか「う」と言うのがやっとだった。
後で考えるとこの時点で手術開始から9時間ほどしか経っていないはずだ、
この日の夜の時間の過ぎる遅さといったらナメクジが這っているようなものだった。
窓からうっすら陽が明けて来る頃だから朝4時半頃なのだろう、口元にある酸素マスクに触りたいのだがなかなか指が届かない。
目を開き天井を見つめるが天井がスライドし始めたのですぐに閉じた。
酸素がシューシューと流れる音や血栓を防ぐために足にはかせられているバルーンのようなものが交互に膨らみ眠りは妨げられ病院内の人のざわめき音やらで幻聴かと思える音さえも聞こえた。
全てはあの強力な麻酔のなすすべなのだろう。