ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

D.ハロワー作「BLACKBIRD」

2009-08-17 15:42:48 | 芝居
 8月7日、世田谷パブリックシアターでD.ハロワー作「BLACKBIRD」を観た(演出:栗山民也、翻訳:小田島恒志)。
 2007年度オリビエ賞最優秀作品賞受賞作品とのこと。

 音楽は一切ない。これは非常に珍しい。
 舞台はある会社の一室。
 若い女の突然の訪問に怯える中年男。次第に二人の過去が明らかになってくる。男は12歳の少女だった彼女と関係を持った罪で服役し、今は名前も住所も変えて生きている。
 だが彼女の方は同じ名前で同じ家に住み続け、町の人たちから白い目で見られ、友人たちを失っていた。
 ということは、彼女は復讐のためにやって来たのだろうか。

 しかし、事の真相は我々が想像していたような単純なものではなかった。
 男が異常だったと言うよりは、むしろ少女の方が異常に早熟だったのだ。
 彼女はあの日よりずっと前から男に恋していた、と言う。男と男の恋人との仲を裂こうとまでしていた、と。
 
 この場合、少女だけが被害者と言えるだろうか。
 もちろん、まともな40男なら12歳の少女の誘いに乗ったりはしないだろうから、男の側にも問題はある。
 だが事件の後、通りで彼女を見つけた男の恋人は、彼女に近づいて平手打ちしたという。つまり彼女にとって、この少女こそが誘惑者であり、加害者とまでは言えなくとも、少なくとも少女さえいなければ二人の仲は裂かれることなく、男は刑務所に入ることもなかったということなのだ。

 男と成長した少女、この二人のセリフの応酬だけで、「あの日」の情景がまざまざと浮かび上がる。このあたりのセリフの巧みさ。

 二人の愛の逃避行は、ちょっとした行き違いから失敗し、刑事事件に発展してしまう。だが、少女があと数年年取ってさえいれば、特に問題にもならず、よくある「少女の家出」に過ぎなかっただろう。

 ところで、途中で男が突然ゴミ箱の中身を撒き散らし始め、女も一緒になって部屋中ゴミだらけにするシーンがあるが、あれは一体何なのか?さっぱり分からない。イギリス人なら分かるのか??
 
 伊藤歩は声もよく、セリフ回しもなかなかうまい。舞台経験は浅いらしいが、熱演だ。内野聖陽も少女に振り回される情けない男を好演。

 終わり方はあっけなく、力が足りない。それまでは非常に面白いのに残念だ。ただ、曖昧さは大いに結構。

 蛇足だが、「クリネックス」は日本語では普通「ティシュー」もとい「ティッシュ」と言うのだから、そう訳したほうがいいのでは?

コメント (2)
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