7月12日世田谷パブリック・シアターで、マリウス・フォン・マイエンブルク作「醜男」を観た(演出:河原雅彦)。
現代ドイツの演劇と言うと、もはやすっかりおじけづいてしまう私だが、おっかなびっくり観に行くと、思ったよりずっと分かり易く、
何よりグロテスクなところがなくて助かった。
4人の俳優、シンプルな装置、スピーディな演出、80分の短い芝居だった。
会社員レッテは自分が開発した商品のプレゼンに行くはずが、代わりに部下が行くことになり、上司シェフラーにそのわけを問いただす。
上司は言いにくそうに言う、「君は顔が醜いから」と。
悄然と帰宅した彼が妻ファニーにこのことを話すと、彼女は「私も知り合った当初は驚いたけど(何にって彼の顔のあまりの醜さにだ!!)すぐに気にならなくなったわ。
あなたは人柄がいいし、私、いつも顔を見ていないから全然気にならないわ」と言う。
またも愕然とした彼は、ついに整形手術を受けることにする。
医者は「どこから手をつけていいやら」「これほど醜い顔はやったことがない」とびびるが、結果は大成功、上司は手の平を返したように彼を厚遇し、
彼は急に女たちにもて始めて戸惑う・・。ところが、手術の大成功が評判となり、医者の元には手術を求める患者が押しかける。
そして彼らは手術を受けるとみな彼と同じ顔になってしまい・・・。
無駄のないスピーディな演出(河原雅彦)がいい。
出演は山内圭哉、内山理名、斎藤工、入江雅人の4人。いくつかの役の早替わりをそつなくこなす。
ファニー役内山理名は妻と「マダム」との切り替えがうまい。キャピキャピした妻像を生き生きと造形する。しかし時々セリフが聞き取りにくい所がある。
稽古を重ねていると麻痺してくるだろうが、我々観客にとっては初めて聴くセリフ、たった一度だけ聴くセリフなのだから、そのことを肝に銘じて、
早過ぎることのないように発音してほしい(かと言って劇団四季のように、セリフが聞こえることを最優先する余り、全く感情移入できないような
アナウンサー養成学校みたいな芝居をしてほしいわけでは決してないが)。
主人公は新しい顔の所有権・オリジナル性を主張するが、「もともとあなたの顔じゃない」と言われてしまう。
自分とは何か、という哲学的な問いを孕んだ芝居と言えるかも。
ところで作者がどんな容貌なのか、ちょっと興味が湧いた。
自分の顔にコンプレックスを抱いてきた人なのか、それとも単に芝居のテーマとして面白いから容貌のことを取り上げただけなのか。
マリウスと言えば個人的には「ああ無情」(「レ・ミゼラブル」の子供向けダイジェスト版)に出てきた、薄幸の少女コゼットの恋人の名であり、
ハンサムでかっこいいという勝手なイメージがあるが・・・。
現代ドイツの演劇と言うと、もはやすっかりおじけづいてしまう私だが、おっかなびっくり観に行くと、思ったよりずっと分かり易く、
何よりグロテスクなところがなくて助かった。
4人の俳優、シンプルな装置、スピーディな演出、80分の短い芝居だった。
会社員レッテは自分が開発した商品のプレゼンに行くはずが、代わりに部下が行くことになり、上司シェフラーにそのわけを問いただす。
上司は言いにくそうに言う、「君は顔が醜いから」と。
悄然と帰宅した彼が妻ファニーにこのことを話すと、彼女は「私も知り合った当初は驚いたけど(何にって彼の顔のあまりの醜さにだ!!)すぐに気にならなくなったわ。
あなたは人柄がいいし、私、いつも顔を見ていないから全然気にならないわ」と言う。
またも愕然とした彼は、ついに整形手術を受けることにする。
医者は「どこから手をつけていいやら」「これほど醜い顔はやったことがない」とびびるが、結果は大成功、上司は手の平を返したように彼を厚遇し、
彼は急に女たちにもて始めて戸惑う・・。ところが、手術の大成功が評判となり、医者の元には手術を求める患者が押しかける。
そして彼らは手術を受けるとみな彼と同じ顔になってしまい・・・。
無駄のないスピーディな演出(河原雅彦)がいい。
出演は山内圭哉、内山理名、斎藤工、入江雅人の4人。いくつかの役の早替わりをそつなくこなす。
ファニー役内山理名は妻と「マダム」との切り替えがうまい。キャピキャピした妻像を生き生きと造形する。しかし時々セリフが聞き取りにくい所がある。
稽古を重ねていると麻痺してくるだろうが、我々観客にとっては初めて聴くセリフ、たった一度だけ聴くセリフなのだから、そのことを肝に銘じて、
早過ぎることのないように発音してほしい(かと言って劇団四季のように、セリフが聞こえることを最優先する余り、全く感情移入できないような
アナウンサー養成学校みたいな芝居をしてほしいわけでは決してないが)。
主人公は新しい顔の所有権・オリジナル性を主張するが、「もともとあなたの顔じゃない」と言われてしまう。
自分とは何か、という哲学的な問いを孕んだ芝居と言えるかも。
ところで作者がどんな容貌なのか、ちょっと興味が湧いた。
自分の顔にコンプレックスを抱いてきた人なのか、それとも単に芝居のテーマとして面白いから容貌のことを取り上げただけなのか。
マリウスと言えば個人的には「ああ無情」(「レ・ミゼラブル」の子供向けダイジェスト版)に出てきた、薄幸の少女コゼットの恋人の名であり、
ハンサムでかっこいいという勝手なイメージがあるが・・・。