ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「セツアンの善人」

2024-11-06 23:07:37 | 芝居
10月21日世田谷パブリックシアターで、ベルトルト・ブレヒト作「セツアンの善人」を見た(上演台本・演出:白井晃、音楽・パウル・デッサウ)。





9月に俳優座劇場で見たばかりの芝居を、世田谷パブリックシアターでもやるというので急きょ見ることにした。
前回は田中壮太郎の脚色・上演台本・演出で、今回は白井晃の上演台本・演出。
これが、同じ原作の戯曲とは思えないほど違う。

善人を探し出すという目的でアジアの都市とおぼしきセツアンの貧民窟に降り立った3人の神様(ラサール石井、小宮孝泰、、松澤一之)たちは
水売りのワン(渡部豪太)に一夜の宿を貸して欲しいと頼む。ワンは街中を走り回って神様を泊めてくれる家を探したが、その日暮らしの街の人々は、
そんな余裕は無いと断る。ようやく部屋を提供したのは、貧しい娼婦シェン・テ(葵わかな)だった。
その心根に感動した神様たちは彼女を善人と認め、大金を与えて去っていった。
それを元手にシェン・テはタバコ屋を開いたのだが、店には知人たちが居座り始め、元来お人好しの彼女は彼らの世話までやくことになってしまう。
ある日、シェン・テは、首を括ろうとしていたヤン・スン(木村達成)という失業中の元パイロットの青年に出会い、
一目惚れしてしまう。その日からシェン・テはヤンが復職できるように奔走し、金銭的援助もしはじめるのだが、
その一方で、人助けを続けることに疲れはじめていた彼女は、冷酷にビジネスに徹する架空の従兄、シュイ・タ(葵わかなの二役)を
作り出し、自らその従兄に変装して、邪魔者を一掃するという計画を思いつく・・(チラシより)。

まず、音楽が大音量で、耳が痛くて困った。
水売りワンの売っている水のボトルを持ち上げて、「上げ底だ」と神様の一人。だから彼は善人とは言えない、と。
それでもシェン・テは神様たちから千元もらい、それでたばこ屋を開く。

床屋のシュー・フーがシェン・テにプロポーズするが、シェン・テは彼ではなくヤン・スンを選び、二人で手に手を取って出て行くところで1幕終わり。
<休憩>
ヤンのズボンがシェン・テの家にあるのをシン(あめくみちこ)が見つけて不審に思うが、シェン・テはちゃんと説明できない。
それでシンはシェン・テの秘密に気づく。
シェン・テは時々めまいがする。シンは彼女が妊娠していることにも気がつく。

じゅうたん屋の夫婦に借りた200元を返し、たばこ屋を売るのをやめて一緒にたばこ屋をやる、とシェン・テは主張するが、
ヤンは断る。「この俺がたばこ屋を?」
結婚式には黄土色の衣を着た坊さんがいる。
ヤンは、シュイ・タが300元持って現れるのを待つと言う。
シェン・テはようやく気がつく。
「この人は悪人です。私にも悪人になれと言います」

シュイ・タはタバコ工場を始め、ヤンも雇う。
シュイ・タはまためまいがする。
ヤン「この頃よく目まいを起こすし、なかなか決められない・・」
シンはシュイ・タと二人だけになると、「もう7ヶ月だもんねぇ」といたわり、上着を脱がせ、ネクタイをゆるめてやる。
ある時、シュイ・タは部屋の奥ですすり泣く。
そこにやって来たヤンは、女の泣き声が聞こえるので驚いて奥を探す。
彼は、シュイ・タがシェン・テを監禁しているんじゃないかと疑い、警察に通報する。

裁判。裁判官3人は神様たち。黒い衣をつけている。
人々はシュイ・タの悪い点を口々に挙げる。
シュイ・タは追い詰められ、「お人払いを」。
みな去り、裁判官たちだけになると、彼女は上着を脱ぎ、顔につけた面を剝がす。
3人は驚くが、シェン・テが「私は善人ではありません」と言うと、「お前は善人だ」と言う。
人々はそろそろと出て来て、彼女を見て驚く。
神様たちは黒い衣を脱ぐと、薄青いスーツ姿!
また旅に出ると言う。
みな固まり、一人が口上を述べる。
「これで終わりかと思われるでしょうが・・・何の解決もない・・・」
暗転。終わり。
~~~~~~~ ~~~~~~~ ~~~~~~~
歌が多いが、それが残念ながら退屈。
主役の葵わかなは好演。
ヤンの母親役の七瀬なつみも期待通り。

今回、ヤンは死なない(一体原作はどうなっているのか?)。
ラストの口上が興醒め。
ところで妊娠したら目まいがするのだろうか?そんなの聞いたことないけど。

同じ原作から、こうも違うものができるのが不思議。
いつか疑問を解くために原作の戯曲を読んでみたい。

面白い芝居を二種類の上演台本と演出で見比べることができて、楽しかった。
主人公の変装(変身)の仕方が違うのも面白い。
総じて、田中壮太郎版の方が胸に迫るものがあり、感銘深かった。
今回は有名な俳優が多く、前回は俳優座の重鎮が何人かいたとは言え桐朋学園短大の学生たちもたくさんいて、
いずれにせよ無名な人たちだったが、みな驚くほどうまかったし、音楽も素晴らしかった。




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