ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「ハーパー・リーガン」

2010-09-14 17:30:03 | 芝居
9月6日パルコ劇場で、サイモン・スティーヴンス作「ハーパー・リーガン」を観た(演出:長塚圭史)。(ネタバレあります)

作者は現代イギリスの劇作家らしい。「ライス国務長官」という一語で時代が分かる。
11人の人物を7人の役者が演じ分ける。
ハーパーという変わった名前を持つ女性。失業中の夫と17歳の娘を抱え、会社員として働いているが、故郷の父が糖尿病で危篤という知らせを聞く。休暇を願い出るが、会社のボスは、この忙しい時に、とにべもない。悩んだ挙句、クビを覚悟で衝動的に飛行機に乗ってしまうハーパー。しかし父の容態は急変し・・・。

彼女の夫は数年前、少女の裸を撮影した罪に問われ、そのために失職。彼女らはその町に居づらくなり引っ越してきたのだった。

少しずつ嘘や誤解がはがれ、真相が見えてくる。彼女自身、夫は無実だと主張していたが、実は信じていたわけではなかった。父は長年彼女のヒーローだったが、父の死後、嫌っていた母の話をいやいや聞いてみると、父はどうも思っていたようなイメージの人ではなかったらしいことが分かってくる。だが「いやな奴」という言い方は解せない。ごく普通の父親のように思えるが・・。

一番分からないのは酒場で会った男ミッキーに対するハーパーの振舞い。彼女は突然グラスを彼の顔に叩きつけてケガをさせ、借りていたジャンパーを着たまま立ち去る。オイオイ、何があったにせよ泥棒はいかんぜよ。「そうされるだけのことをした」と彼女は言うが、これもさっぱりだ。

次に分からないのはラスト。それまで舞台中央にデンとあった灰色の分厚い重苦しい壁が突如上空に取り払われ、まぶしくも美しい緑の庭が現れる(美術:松井るみ)。時は朝の8時。ハーパーは秋植え球根を植えている。夫が起きてくると、彼女は朝食を勧めながら、行きずりの男との情事を告げる。決して「告白」ではなく、むしろ「よい」思い出として語るのだ。何??一度夫を裏切ったことで「復讐」できて、ふっ切れたのか?
そこに娘が起きてくると、夫は10年後の夢を語り出し、妻も何やら話すが、まるでかみ合っていない。娘は目をパチクリだ。
これは一体何なのか。形だけの平穏?そもそもハーパーは解雇されなかったのだろうか。

台本(原作)は傑作とは言い難いが、役者、特に娘サラ役の美波がうまい。張りのある声はよく通るし、切れのいい演技で思春期の女の子をくっきりと鮮やかに描き出す。

松井るみの美術もいつもながら素晴しい。







コメント
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