4月25日パルコ劇場で、デヴィッド・リンゼイ=アベアー作「ラビット・ホール」を見た(翻訳:小田島創志、演出:藤田俊太郎)。
ベッカ(宮澤エマ)とハウイー(成河)は幼い息子を交通事故で亡くした。
それから8ヶ月たつが、ベッカはまだ息子の死を受け入れられず、先に進むことができないでいる。
ベッカの妹イジ―(土井ケイト)と母(シルビア・グラブ)は、そんなベッカとの関わりに心を砕いている。
息子を誤って轢いた少年ジェイソン(阿部顕嵐)が訪ねて来る。
彼との会話が、思いがけずベッカの再生のきっかけとなる・・。
前回これを見たのは、2022年11月、ピット昴の小さな空間で、翻訳と演出は田中壮太郎だった。
ついこの間見たばかりだが、成河という、たいてい変わった役をやる人が、ごく普通の夫を演じるところもたまには見たくて行った。
他にも土井ケイトとかシルビア・グラブとか、うまい人が出るし。
宮澤エマは、昨年の大河ドラマと映画「記憶にございません」で見たことがあるが、ミュージカル畑の人らしい。
ナマで見るのは初めて。
今回、翻訳も演出も違う上に、会場の大きさも全然違う。
その楽日を見た。
<1幕>
幕が上がると、舞台中央から二階に向かって白い階段が斜めにかかっていて美しい(美術:松井るみ)。
その白い階段の上から、青いゴムボールがゆっくり転がり落ちてくる。
二階に男の子がいたことがわかる、素敵な導入だ。
下手にキッチン。(前回は上手奥がキッチンで、評者の席からはほとんど見えなかった)
少し下がっていた幕が、途中で全部上がると、上手上方に男の子の部屋が出現。
ベッカは階段を上がって行ってその子供部屋に入り、ベッドに腰掛けて、ジェイソンからの手紙を見る。
1幕ラストでハウイーは、息子との最新の、一番長いビデオが永遠に消えてしまったことを知って号泣!
~休憩~
<2幕>
ハウイーがオープンハウスと書かれた赤い看板を舞台前方に置く。
仲介料を取られたくなくて OHBO (オープンハウス・バイ・オーナー)にしたが、やっぱりなかなか人が来ない。
イジ―が彼にアドバイスする。
ついでに、自分の友人が、レストランでハウイーが一人の女性の手を握っているのを見かけた、と言う。
ハウイー「彼女は支援グループの人で、娘を白血病で亡くした人だよ!」「慰めちゃいけないのか!?」
イジ―「わかった。誤解が解けてよかった」
今回、彼女はここで本心からそう言っているようだ。
そこに母娘が帰宅。
スーパーで、幼い男の子が母親にお菓子を買ってもらえず泣いていた。
その子の母親がいつまでも買ってやらないので、ベッカは説得しようとしたが、拒まれ、何とその女性をひっぱたいたという。
だが、話を聞いてイジ―は「私も殴る」と言う。(今回、ここで客席から笑いが起こる)
今回のイジ―は笑い担当のようによく笑いを取る。
この時、突然ジェイソンが入って来る。
驚いたことに今回、ハウイーは途中までこの高校生に敬語で話す。
もちろん突然のことなので、この日はすぐに帰ってもらうが、前回ほど怒ったり怒鳴りつけたりしない。
次にジェイソンが来た日、ベッカは手作りの菓子を振る舞う。
キッチンにディケンズの「荒涼館」があるのを見て、ジェイソン「読みかけたけど長くて・・」
「デヴィッド・カッパーフィールドは面白かったです」ベッカ「あれも長いでしょ?」ジェイソン「ええ、でも・・面白かったです」
話している間に、二人の間に何かしら温かいものが通い合う・・。
数ヶ月前に見た芝居なので、つい比較してしまったが、よくできた作品なので、やはり面白かった。
ベッカが大事なセリフ「4歳で事故死したダニーと、30歳でヤク中で首を吊ったアーサーを一緒にしないで!」を早口で言ったのが惜しい。
お客はベッカの兄の死の経緯を、ここで初めて知るのだから、もっとゆっくり言ってほしい。
確かにここで彼女は怒って叫ぶわけだが、それでも何とか工夫して、客席にいるすべての人が、よく吞み込めるように言うべきだ。
ラスト近く、イジ―が気をきかせて母を急き立てて帰るシーンで、もう少し間がほしい。
ここで彼女はまさに「空気を読んで」姉夫婦の仲を取り持とうとしたわけだが、それが感じ取れるくらいに間があると、なおよかった。
この日は満席。さらにスタンディングオベーション。
役者達は皆さん、期待通り好演。
今回の翻訳は手慣れていて柔らかく、品がある。
よくできた芝居は、何度見ても面白い。
ベッカ(宮澤エマ)とハウイー(成河)は幼い息子を交通事故で亡くした。
それから8ヶ月たつが、ベッカはまだ息子の死を受け入れられず、先に進むことができないでいる。
ベッカの妹イジ―(土井ケイト)と母(シルビア・グラブ)は、そんなベッカとの関わりに心を砕いている。
息子を誤って轢いた少年ジェイソン(阿部顕嵐)が訪ねて来る。
彼との会話が、思いがけずベッカの再生のきっかけとなる・・。
前回これを見たのは、2022年11月、ピット昴の小さな空間で、翻訳と演出は田中壮太郎だった。
ついこの間見たばかりだが、成河という、たいてい変わった役をやる人が、ごく普通の夫を演じるところもたまには見たくて行った。
他にも土井ケイトとかシルビア・グラブとか、うまい人が出るし。
宮澤エマは、昨年の大河ドラマと映画「記憶にございません」で見たことがあるが、ミュージカル畑の人らしい。
ナマで見るのは初めて。
今回、翻訳も演出も違う上に、会場の大きさも全然違う。
その楽日を見た。
<1幕>
幕が上がると、舞台中央から二階に向かって白い階段が斜めにかかっていて美しい(美術:松井るみ)。
その白い階段の上から、青いゴムボールがゆっくり転がり落ちてくる。
二階に男の子がいたことがわかる、素敵な導入だ。
下手にキッチン。(前回は上手奥がキッチンで、評者の席からはほとんど見えなかった)
少し下がっていた幕が、途中で全部上がると、上手上方に男の子の部屋が出現。
ベッカは階段を上がって行ってその子供部屋に入り、ベッドに腰掛けて、ジェイソンからの手紙を見る。
1幕ラストでハウイーは、息子との最新の、一番長いビデオが永遠に消えてしまったことを知って号泣!
~休憩~
<2幕>
ハウイーがオープンハウスと書かれた赤い看板を舞台前方に置く。
仲介料を取られたくなくて OHBO (オープンハウス・バイ・オーナー)にしたが、やっぱりなかなか人が来ない。
イジ―が彼にアドバイスする。
ついでに、自分の友人が、レストランでハウイーが一人の女性の手を握っているのを見かけた、と言う。
ハウイー「彼女は支援グループの人で、娘を白血病で亡くした人だよ!」「慰めちゃいけないのか!?」
イジ―「わかった。誤解が解けてよかった」
今回、彼女はここで本心からそう言っているようだ。
そこに母娘が帰宅。
スーパーで、幼い男の子が母親にお菓子を買ってもらえず泣いていた。
その子の母親がいつまでも買ってやらないので、ベッカは説得しようとしたが、拒まれ、何とその女性をひっぱたいたという。
だが、話を聞いてイジ―は「私も殴る」と言う。(今回、ここで客席から笑いが起こる)
今回のイジ―は笑い担当のようによく笑いを取る。
この時、突然ジェイソンが入って来る。
驚いたことに今回、ハウイーは途中までこの高校生に敬語で話す。
もちろん突然のことなので、この日はすぐに帰ってもらうが、前回ほど怒ったり怒鳴りつけたりしない。
次にジェイソンが来た日、ベッカは手作りの菓子を振る舞う。
キッチンにディケンズの「荒涼館」があるのを見て、ジェイソン「読みかけたけど長くて・・」
「デヴィッド・カッパーフィールドは面白かったです」ベッカ「あれも長いでしょ?」ジェイソン「ええ、でも・・面白かったです」
話している間に、二人の間に何かしら温かいものが通い合う・・。
数ヶ月前に見た芝居なので、つい比較してしまったが、よくできた作品なので、やはり面白かった。
ベッカが大事なセリフ「4歳で事故死したダニーと、30歳でヤク中で首を吊ったアーサーを一緒にしないで!」を早口で言ったのが惜しい。
お客はベッカの兄の死の経緯を、ここで初めて知るのだから、もっとゆっくり言ってほしい。
確かにここで彼女は怒って叫ぶわけだが、それでも何とか工夫して、客席にいるすべての人が、よく吞み込めるように言うべきだ。
ラスト近く、イジ―が気をきかせて母を急き立てて帰るシーンで、もう少し間がほしい。
ここで彼女はまさに「空気を読んで」姉夫婦の仲を取り持とうとしたわけだが、それが感じ取れるくらいに間があると、なおよかった。
この日は満席。さらにスタンディングオベーション。
役者達は皆さん、期待通り好演。
今回の翻訳は手慣れていて柔らかく、品がある。
よくできた芝居は、何度見ても面白い。