今日は、「知らない情報を持ち寄って、物事を解決するということは、効率的に行えるのか?」ということについてのお話です(心理学では、隠れたプロフールというお話になります)。
■■ 前回までのお話。
その1のとき、ペアプログラミングだと、効率的だ!と主張するには、ふつう、4つのことが考えられると書きました。
(1)生産量が上がる
(2)品質があがる
(3)1人では思いつかなかったことが思いつき、できるようになる
(4)専門分野が違う人たちが協力して、1つのことができるようになる。
で、(1)、(2)については、社会心理学では、「集団的手抜き」という問題で論じられ、これは、集団でやったほうが(個別でやるよりも)、生産性が低くなるということを書きました。
(3)については、その2で、これはいわゆる文殊の知恵といわれるやつだが、そういうものはおきにくく、むしろ、周りの空気により、正しい考えもつぶされてしまうことがあるというのを、書きました。
で、今日は(4)です。
■■ 1人のひとしか知らない情報を皆に提供しあって、物事を解決できるか
(4)の「専門分野が違う人たちが協力して、1つのことができるようになる」は、いいかえると、「1人のひとしか知らない情報を皆に提供しあって、物事を解決できるか」ということになります。そして、「1人のひとしか知らない」=他の人からは、隠されている属性ということで、「隠れたプロフィール」といいます。
で、この実験結果が、放送大学大学院の「認知過程研究」のテキストp146からでているんだけど、結果は衝撃的?つーか、あたりまえっつーか??
メンバーの数が増えるほど、そして情報を完全に共有しあおうとすればするほど、1人しか知らない情報(隠れたプロフィール)は共有されず、皆が知っている情報が、より共有されるようになる。
そりゃーそーっすよねえ。だって、相手しか知らない情報を聞き出すって、難しいよ!
自分は知らないんだから。。
つまり、情報を共有するためには、あらかじめ、皆が知っていないと共有できないって言うことになる。
たとえば、会議なんかするとき、「今度の新しいシステムについて、考えますので、皆さん集まってください」といって、各分野の専門家を集めても。。。皆が知っていることしか意見が出なくて、堂堂巡りになるということ(>_<!)
この場合、あらかじめ、レジュメをくばって、「これとこれとこれについて話します。これについての資料はこれで、これの資料はこれで。。。」という形で、専門外の人にも、情報を提供しておいて、あらかじめ情報を共有しないと、話にも登らないつーこと。。
。。って、あたりまえだよねえ。。
だけど、実際には、たしかに、「専門の人を集めれば、どーにかなるだろう!」で終わってしまったりする。
つーことで、「専門分野が違う人たちが協力して、1つのことができるようになる」かというと、「人を集めただけでは、情報は共有されず、できない」という結論になるのだ。まずさきに、情報を共有してから、人を集めないと。。
ただ、じゃあ、(1)から(4)まで、ダメだとしても、「じゃあ、ペアプログラミングは生産的ではないですね。やらないでおきましょう」って、それで済む問題ではないのだ。
ふつう、SEやプログラマには、プロジェクトの進捗方法を決める権限はない。マネージャーやその上の上層部が、「ペアプログラミングで行きましょう!」といったら、非効率だろうがなんだろうが、それでやらなければならない。
つまり、ペアプログラミングが、効率的かどうかなんていうことが問題ではなく、効率的にペアプログラミングをやる方法が問題になる。
認知心理学的に言うと、集団による問題解決を、有効に働かせるには、どうしたらよいかが問題である。
で、そのことだが。。それは、また今度書くことにします。
もう、けっこう長く書いたし、きりいいので。。