【 2020年3月16日 】 京都シネマ
世の中には様々な仕事があるが、画商とか鑑定士とか古美術商というのがどういう仕組みで、どのように生計を立てているのか不思議でならなかったが、最近見た映画の世界から多少分かってきたような気がしていた。それにしてももっとわからないのは、街で見かける古本屋である。繁華街の一等地にあって、間口が狭いながらも立派な構えの店がある。たまに覗くと、古い本が所狭しと積まれていて、一方では店頭に100円均一であったする古本が乱雑に並べられている。商品が頻繁に入れ替わっているようにも思えない。新刊を扱う本屋でも最近は「本離れ」が進み経営が苦しくなってきていると聞いているのに、古本屋はどこで利益を稼いでいるのかが不思議でならなかった。
『男はつらいよ』シリーズの第17作に、宇野重吉が演ずる日本画壇の大家が当座の金を工面するのに、即興で色紙のようなものを書いて、それを寅さんに持たせ、指定した古本屋(古美術商)に向かわせるシーンがある。神田神保町の『大雅堂』というのがそれで、その店主(大滝秀治)が見せる挙動が面白い。それを見て、「なるほどこういうことで商売をしているのか」と納得するところがあった。
前置きが長くなったが、この映画の母子家庭の娘を持つ主人公のお祖父さんは、画商である。家庭も顧みず商売に腐心してきて、かつては大きな取引もあったのだろうが、最近は在庫の絵もなかなか売れずに店をたたもうと思っている。
そこへ、問題を起こした孫の世話を依頼される。(この辺の事情が、日本と違ったフィンランドの教育・保護システムがあるのかもしれないが、映画の中ではよくわからない。)
ここからがこの映画の一つのハイライトだ。もう一度、《起死回生》の大勝負にかけようという叔父と孫の奮闘が始まる。
たまたま行ったオークションの下見会場で気になる作品を見つける。
叔父は問題の絵画がレーピンの作品だと確信するが、サインがないため決め手がない。
オークションの主催者はそのことに気づいていない。
本物と確信する叔父は何とかそれを競り落とそうとするが、値は予想以上にせり上がる。
たとえ競り値が上がっても、さばける相手がいれば何とかなる。
ここで大きな役割を果たすのが《ディーラー》と《顧客》の関係である。 一大勝負に出るが・・・。
このあとが、第二のクライマックスである。全部書いてしまうと興ざめになるので止めておく。
『鑑定士と顔のない依頼人』という映画は、絵画取引の世界を面白おかしく垣間見せてくれた。今回の映画も、その裏表の奥深さを堪能させてくれた。
それ以上に、人生とはいかなるものかを深く考えさせてくれたいい映画だった。
『ヤコブへの手紙』も心に沁みるいい映画だったが、こんな映画を生み出すフィンランドという国に魅力を感じる。
『ラスト・ディール-名を無くした肖像』-公式サイト
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