【 2018年7月11日 】 TOHOシネマズ二条
映画の時代背景は1970年の大阪万博を間近に控えた高度経済成長期を迎える日本の片隅、伊丹空港界隈の朝鮮人。徴用で日本に連れて来られそのまま日本に定住せざるを得ない家族の、ウソも妥協もない突っ張り合いの物語である。
タイトルだけ見て、『ドラゴン・ボール』ではないけれど、はじめはマンガの世界の奇想天外なアクションストーリーをアニメ化した映画かと思っていたら全然違っていた。大泉洋が何かのトーク番組でこの映画のことにふれ、「いい映画です、是非劇場で見てください。」みたいなことを言っていたのを聞いて、それと大泉洋が出ていたずっと以前の映画『アフター・ファイブ』の印象が良かったもので興味を持った。
もともと舞台でヒットした作品という事だ。監督は、鄭義信で、『血と骨』や『愛を乞う人』の脚本を書いた人だというから、それを知ってなるほどと思った。話も性格描写も《濃い》くて、中途半端じゃない。
夫婦を演ずるふたりの韓国人俳優が、圧倒的存在感を出していてすごく良かった。圧巻は、オモニが娘の結婚を「絶対に許さない!」とすごい剣幕でまくし立てているのを「もう、二人とも子供じゃない。」といってなだめたあとに、「少し古い話をしていいか?」と断った後、結婚相手に語る、自分ら家族がたどった、短くはないが、それでも聞き込んでしまう苦難の話だ。それは、映画の中の男に対してでなく、それを見ている自分たち日本人に問いかけてくるような迫力を感じた。
3人の娘と末っ子の息子がそれぞれの問題を抱え、コメディタッチに描かれたりしているが、その背景にあるのは《笑い》で済まされるような簡単なもんではない。
【 哲夫と静香 】
1969年という年は、私が京都の大学に入学した年だ。自分の大学に限らず日本中が『学園紛争』が湧きかえっていて、その前年には多くの大学の入学試験が中止となっていた。キャンパスには、ゲバ棒を振り回す様々なセクトが入り乱れ、その中に割り込んで毛沢東やら北朝鮮の金日成の思想を掲げる集団もいて、いろいろな働きかけをしていた。その主張するところは、あまりにも自己執着的で自分本位というか自己を絶対化する、そうした主張には決して同調できるのではなかったが、それまでの自分の世界にはなかった問題意識を喚起するものではあった。
話の展開を固い政治的な緊張関係で進めるのでなく、個性豊かな三人の娘と不幸な一人息子の話を絡ませながら展開するところにこの映画(舞台?)の醍醐味がある。
【 次女・梨花:井上真央 】
【 長女・静花;真木よう子 】
【 三女・美花:桜庭ななみ 】
喜劇のように面白くて、それに終わらない。
家族の喜怒哀楽を通じて、この間の歴史をきちんと織り込んでいる。そう、万博は、確かに日本の高度成長の一つの記念碑だったかもしれない。
あれから40年以上経っているのに、在日の問題-日本と朝鮮の問題は、それ以降あまり変わっていないように思える。
【 親父と時生 】
それが今、それまで予想がつかなかった方向に歩み始めている。しかし、当事者の日本がそのことに関して、一番責任を負わねばならないのに、あっちを向いていて大丈夫なのだろうかと思っていしまう。
近いようで遠い朝鮮半島の事を、今真剣に考えないといけないと思った。
コミカルな表現もあるが、中身は意味深長である。日本と朝鮮半島の今につながる戦前戦後の関係が凝縮されている。
『パッチギ!』や『在日』、『かぞくのくに』に続く、朝鮮と日本の近くて遠い関係を、再度考えさせらた映画だった。
『焼肉ドラゴン』-公式サイト
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