【2010年10月11日】 京都シネマ
言わずと知れた、「幸せの黄色いハンカチ」のリメイク版である。
リメイク版というのは、もとの出来がいいほど、「移植」が難しく、しっくり来ないのが通例である。
最近で思いつくのは「SHALL WE ダンス!!」があるが、日本とアメリカの文化・風習・価値観の違いがいかんともしがたく、なじめなかった。だいたい、草刈民代の繊細なイメージあるところへ別のものは入り込む余地が無い。
黒澤映画も最近、多くがリメイクされているが、海外のものはこの際論外にして、同じ日本国内のレメイクでも最初から拒否感があった。
黒澤映画には三船敏郎や志村喬が居てこそ「黒澤映画」で、ストーリーも完璧だから、それに替わるものなんかあり得ないという先入観があって、私なども最初から観る気も起こらないのだが、妻は「SHALL WE ダンス!!」の“ぶち壊し”のイメージで懲りたのか、今回の「イエロー・ハンカチーフ」も最初から観に行こうともしない。
とは言っても、今回のストーリーの“もともと”の原作はアメリカだから、里帰りしたみたいなもので、向こうの話としてはありうることだ。どんな出来栄えか探る気持ちもあって、ひとりで観に行ってきた。
比べるには「幸せの黄色いハンカチ」は完璧すぎる。
高倉健と賠償千恵子の個人的魅力とすんぷんの隙も無い、綿密に練り上げられた脚本、ストーリー展開が絶妙な映画だ。
今までに何十回も家族ぐるみで観たし、夕張やその他のロケ地を訪ねて一家で北海道に行ってきたから、
「いいぞ、いいぞ北海道!」から始まり、映画の場面場面に出てくる台詞も、逐次覚えている。
「あんたって、勝手な人だねー。一緒になるときも別れるときも。」
「(ガソリン代)、損行しちゃった。」
「おにいさん、そんな風にはみえないんだがなー。」
「まっ、何とかなるんじゃないの。」
など、自分らの生活の多くの場面においてギャグ半分、実感半分で何回も口ずさんできた。
で、「イエロー・ハンカチーフ」はというと。
当然舞台設定は変わるのだが、大きな流れ、構成は「黄色いハンカチ」とまるで同じだ。
訳あって服役していた主人公が刑期を終え監獄から出てくるところから始まり、その直後、たまたま居合わせた若い男女の車に同乗し、一緒に行くの行かないので車を降りたり乗ったりのストーリの展開まで同じだ。途中、これも訳あって期限の切れた免許証で運転をし、警察のご厄介になるが、偶然居合わせた過去の事件を担当した巡査長が居て無罪放免されるのもいっしょ。そこで初めて事情を知った若いふたりがはじめは躊躇するが、「奥さんの待っているかもしれない街に行ってみよう。」ということになる。
夕張の炭坑が、ニュー・オリンズの港湾近くの水辺になっているのと若いふたりの家庭環境・境遇もちょっと変わっている。
かににあたって腹をこわしトイレに駆け込むのが、ザリガニを食べて腹をこわすのになっていたり、車をやめて列車で(後者はバスで)行こうとするのが次の列車までに2時間もあるのが理由だったのが、ストでバスが全然動いていないから迎えに戻ってきたと、その国の事情にあわせアレンジしてある。
しかしあとの肝心なところは、ほとんどいっしょである。
面白かったのは、宿に泊まるとき「黄色いハンカチ」でタコ社長-太宰久夫がやっていた役-「部屋は1つだよ。夕食はないよ。やだったら、他さがしなよ。」の憎まれ役を桃井かおりがしていたことである。思わず笑ってしまった。監督が敬意を表して友情出演をお願いしたらしい。
で、どちらがいいか-だが。やっぱり「黄色いハンカチ」の方が日本人の感性に合うし、完成度も。
刑務所から最初に出てきて食堂でビールを飲むシーンがある。あれだけとっても健さんのビールの方がどれだけ感慨がこもっていたことか。
ピート・ハミルの原作をこの映画の直後に読んだが、あのクライマックスシーンだけのほんとに短いもので、山田洋次が要約みたいなものから、「黄色いハンカチ」を作り上げていく創造力というものに驚かされる。
「イエロー・ハンカチーフ」・「幸せの黄色いハンカチ」-公式サイト
言わずと知れた、「幸せの黄色いハンカチ」のリメイク版である。
リメイク版というのは、もとの出来がいいほど、「移植」が難しく、しっくり来ないのが通例である。
最近で思いつくのは「SHALL WE ダンス!!」があるが、日本とアメリカの文化・風習・価値観の違いがいかんともしがたく、なじめなかった。だいたい、草刈民代の繊細なイメージあるところへ別のものは入り込む余地が無い。
黒澤映画も最近、多くがリメイクされているが、海外のものはこの際論外にして、同じ日本国内のレメイクでも最初から拒否感があった。
黒澤映画には三船敏郎や志村喬が居てこそ「黒澤映画」で、ストーリーも完璧だから、それに替わるものなんかあり得ないという先入観があって、私なども最初から観る気も起こらないのだが、妻は「SHALL WE ダンス!!」の“ぶち壊し”のイメージで懲りたのか、今回の「イエロー・ハンカチーフ」も最初から観に行こうともしない。
とは言っても、今回のストーリーの“もともと”の原作はアメリカだから、里帰りしたみたいなもので、向こうの話としてはありうることだ。どんな出来栄えか探る気持ちもあって、ひとりで観に行ってきた。
比べるには「幸せの黄色いハンカチ」は完璧すぎる。
高倉健と賠償千恵子の個人的魅力とすんぷんの隙も無い、綿密に練り上げられた脚本、ストーリー展開が絶妙な映画だ。
今までに何十回も家族ぐるみで観たし、夕張やその他のロケ地を訪ねて一家で北海道に行ってきたから、
「いいぞ、いいぞ北海道!」から始まり、映画の場面場面に出てくる台詞も、逐次覚えている。
「あんたって、勝手な人だねー。一緒になるときも別れるときも。」
「(ガソリン代)、損行しちゃった。」
「おにいさん、そんな風にはみえないんだがなー。」
「まっ、何とかなるんじゃないの。」
など、自分らの生活の多くの場面においてギャグ半分、実感半分で何回も口ずさんできた。
で、「イエロー・ハンカチーフ」はというと。
当然舞台設定は変わるのだが、大きな流れ、構成は「黄色いハンカチ」とまるで同じだ。
訳あって服役していた主人公が刑期を終え監獄から出てくるところから始まり、その直後、たまたま居合わせた若い男女の車に同乗し、一緒に行くの行かないので車を降りたり乗ったりのストーリの展開まで同じだ。途中、これも訳あって期限の切れた免許証で運転をし、警察のご厄介になるが、偶然居合わせた過去の事件を担当した巡査長が居て無罪放免されるのもいっしょ。そこで初めて事情を知った若いふたりがはじめは躊躇するが、「奥さんの待っているかもしれない街に行ってみよう。」ということになる。
夕張の炭坑が、ニュー・オリンズの港湾近くの水辺になっているのと若いふたりの家庭環境・境遇もちょっと変わっている。
かににあたって腹をこわしトイレに駆け込むのが、ザリガニを食べて腹をこわすのになっていたり、車をやめて列車で(後者はバスで)行こうとするのが次の列車までに2時間もあるのが理由だったのが、ストでバスが全然動いていないから迎えに戻ってきたと、その国の事情にあわせアレンジしてある。
しかしあとの肝心なところは、ほとんどいっしょである。
面白かったのは、宿に泊まるとき「黄色いハンカチ」でタコ社長-太宰久夫がやっていた役-「部屋は1つだよ。夕食はないよ。やだったら、他さがしなよ。」の憎まれ役を桃井かおりがしていたことである。思わず笑ってしまった。監督が敬意を表して友情出演をお願いしたらしい。
で、どちらがいいか-だが。やっぱり「黄色いハンカチ」の方が日本人の感性に合うし、完成度も。
刑務所から最初に出てきて食堂でビールを飲むシーンがある。あれだけとっても健さんのビールの方がどれだけ感慨がこもっていたことか。
ピート・ハミルの原作をこの映画の直後に読んだが、あのクライマックスシーンだけのほんとに短いもので、山田洋次が要約みたいなものから、「黄色いハンカチ」を作り上げていく創造力というものに驚かされる。
「イエロー・ハンカチーフ」・「幸せの黄色いハンカチ」-公式サイト