この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

「北アルプス・裏銀座を行く」-その3

2011-05-28 12:46:47 | 山・旅行


【2010年9月20日(月)】 (半年ぶりの投稿になってしまった。)

 今日の日程の小屋間の行程は、今回の山行中で最も短く、地図上のデータで6時間である。昨日の小屋到着も遅くなったので今日ばかりは早めに水晶小屋に入りたい。それに天気が心配だ。



    
        【烏帽子小屋からの前日の夕陽】



 もし天気が崩れず、体力に余裕があったら水晶小屋から水晶岳かもしくは鷲羽岳をピストンしようと考えていた。そうしたら、次の日の行動が楽になる。
 それと今回の目標は、百名山2つの内1つ以上はその頂に立とうというものだったので、1つを今日中に行っておけば目標も現実のものになる。

 

                   
                        【烏帽子小屋朝食】


 早目の朝食を済ませ、午後2時ころの水晶小屋到着を目指し、烏帽子小屋を6時に出発する。下り坂という天気予報だが、空にはまだ青空が見える。天気は持ちそうな気もしたが、三ツ岳あたりから、だんだん雲が厚くなってきた。
 左の谷のはるか下方に尾根の切れ目からは高瀬湖が見える。向かい側の対面する尾根筋に唐沢岳、その右手奥に餓鬼岳の尖塔が認められる。



    
        【唐沢岳・餓鬼岳と高瀬湖】


 前方には常に槍ヶ岳が雲見えておかしくない場所に来ているはずだが、まったく見通しが利かない。と、ガスが流れて、槍が姿を見せる。


         
                【今回、最後に見た槍の姿】


 同時にほんの一瞬だけ、はるか遠方に富士の姿が見えた。富士山は本当にどこから見てもわかりやすい山だ。手前には昨年行った南アルプスの北方の山々が見える。



                      
     【雲間から一瞬、富士山の影が覗く 右端は南ア・北岳】


 
 11時過ぎ、野口五郎小屋の手前あたりから雨が降り出した。はじめはカッパを着るほどではなかったが、だんだんきつくなってくる。
 



                           
                               【野口五郎小屋】

 小屋は閑散としている。中には入らず濡れたベンチ腰をかけ、早目の昼食をとることにする。野口五郎岳の方向はガスがかかってまったく見えない。そのうち30m先も見えなくなってきた。見切りをつけて出発する。

烏帽子岳からの『裏銀座コース』は、今回のコースの中で最も景色がよく楽ちんな縦走路のはずだった。起伏もそれほどなく、黒部側と高瀬渓谷に挟まれた尾根道を、徐々に近くに迫ってくる槍ヶ岳を見ながら、快適な山歩きを満喫するつもりだった。
 しかし、今日は何も見えない。

 ガスの中を踏み後を頼りに緩やかな傾斜を上っていくと、30分ほどで野口五郎岳の頂上に着いた。先を歩いていたYさんが私の姿を認めると、山頂を後に反対側の斜面を下りていく。10mも進むとその姿はガスの中に消えていく。



                                       
                                                  【野口五郎岳頂上標識】



 写真を1枚撮り、身支度を再度整え、私も出発する。岩屑と背丈の低い草木をぬってかすかなふみ跡がつづいている。周りの景色はまったく見えない。30分も歩いたろうか。右方向から合流するはずの縦走路にかさならない。見ると、いつしか踏み跡も不鮮明になり走路にしては不自然でそのまま進むと高度をどんどん下げていくような気がする。じっと目を凝らして周囲を見渡すが、白い煙幕が張り込めていて何も見えない。地図を広げてみると縦走路は等高線に平行に走っていてこんなに下るわけがない。


                        
                            【迷う、視界のきかない山道】




 15分ほどガスが切れるのを待つ。すこしだけガスが薄くなり雲が流れるのが見えるようになった。と、一瞬雲の切れ目から稜線が見えた。それは思っていたよりずっと上方に見えた。道をそれて谷筋に下っていたのだ。縦走路はあのはるか上方の稜線上にあるはずだから直角に進路を変更し稜線を目指す。足元のハイマツが進路を妨害する。石も不安定だが上れないことはない。岩屑が滑って1mのギャップにもてこずる。1時間以上ロスをして、ようやく本来の縦走路と合流する。

 自分が遭難するとは思っていなかったが、通常のルートを探し当てるまで相方のことを考える余裕はなかった。もう1時間以上2時間近くYさんの姿を見ていないのだから心配になってきた。携帯電話はもちろん圏外である。またガスが出てきて雨も降っていて、見通しは全く利かない。Yさんも同じように道に迷っていないだろうかとか、足を滑らせてどこかで動けなくなっているのではとか、悪いことばかり考える。あたりには人影は全然ない。どこでどうしているのだろうか。
 滑落するような場所はなかったはずだし、先に小屋に着いて私の遅い到着を待っているのだろうかと思い、足を進める。13時50分、真砂岳分岐点にようやく到着する。やはり2時間近くロスをしている。最終日はここから湯俣方面に下りる予定だ。





どの辺を歩いているときだったろうか。真砂岳の分岐を過ぎ、やせ尾根の岩場で手こずっているとき、後方のガスの中から声がする。耳をそばだて声を聞くとYさんが私を呼んでいる声だった。と、ガスの中から暗い影がうっすらと浮かびこちらに近づいてくる。Yさんに間違いなかった。良かった。むこうも私が思う以上に、そう思っていたに違いなかった。

 Yさんの話によると、しばらく待っても私が現れないので心配になって野口五郎小屋までの道を引き返したそうである。小屋で事情を説明して、もし私が戻ってきたら、水晶小屋まで行っている旨、伝言をお願いしたそうである。えらい心配と迷惑をかけてしまった。

 雨は降り止まず、見通しも全くきかない。その日に水晶岳や鷲羽岳に行くのはあきらめるしかない。それより小屋への到着もまた遅くなるかもしれない。夕食の確保と小屋への連絡もあるので、Yさんに先に行ってもらうことにする。




                              


 
 思った以上時間がかかり、16時近くようやく東沢乗越に到着。ここからふたたび登りで、雨に打たれ足場が悪い。雷鳥の親が五~六歩先を間隔を変えず先導するようにこちらを振り返りながら前を進む。近くに巣があるに違いない。いつまで誘導してくれるのかと思っていると、岩場に停まりこちらの様子をしばらく見たあと、元の方向に飛び去っていった。



        
             【親の雷鳥-Yさんの写真(時間が30分くらい早い)】


 それから30分以上かかって、ようやく水晶小屋に到着する。やはり5時前ぎりぎりの到着で、夕食は「正式」な夕食メニューだったが、今日もカレーだ。


                                        
                                              【水晶小屋夕食-今日もカレー】



 水晶小屋は居場所も狭く、水も買えず、外もあれた天気で出られず、あてがわれた寝具に横になると、そのまま寝てしまった。明日の天気はどうなることやら。


                                     【つづく】








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