「古都逍遥 京都・奈良編」「花の詩」「日常のこと」や花や風景写真

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「矢田寺」(やたでら)

2010年06月11日 00時00分57秒 | 古都逍遥「奈良篇」
 飛鳥時代から続く由緒ある寺院で、日本のお地蔵さま発祥の地「矢田のお地蔵さん」で親しまれている矢田寺(矢田山金剛山寺)は、城下町・郡山より西へ三・五キロ、矢田丘陵の中心矢田山の中腹にあり、日本最古の延命地蔵菩薩を安置している。「矢田寺」という名で親しまれているのは、万葉の昔より「矢田の里」と呼ばれていたことからで、今では「紫陽花寺」(庭園)としても親しまれている。

 寺伝によれば天武天皇の勅願により天武天皇8年(679)に智通が開基し、七堂伽藍四十八坊を造営、十一面観音菩薩と吉祥天を安置したという。その後の戦乱などにより多くを焼失し、現在は北僧坊、大門坊、念仏院、南僧坊の四つの僧坊を総称して矢田寺と呼んでいる。弘仁年間に、満米上人により「延命地蔵菩薩」(重要文化財)が安置されて以来、地蔵信仰の中心地として栄えてきた。
一口に「お地蔵さん」といっても、矢田寺の「お地蔵さん」は珍しい特徴を備えている。

 一般的なお地蔵さんは、右手に杖、左手に如意宝珠を持っているのだが、矢田寺のお地蔵さんは、そのほとんどが右手の親指と人差し指を結んだ独特のスタイルで、「矢田型地蔵」と呼ばれている。 説明によれば、その姿が、あたかも阿弥陀如来の来迎印のようであることから、このスタイルのお地蔵さんは地蔵・阿弥陀両方の功徳を備えているのだという。この他、何も持たない型や、勝軍地蔵と称する、鎧甲に身をかため、馬に乗って幡をひるがえす、勇ましい像もあった。

 境内付近一帯は、県立矢田自然公園に指定されており、矢田丘陵ハイキングコースとして、幼児からお年寄りにまで人気があり、また斑鳩の法隆寺より、北は追分の本陣を経て霊山寺に至る古道は、山辺の道、葛城道とともに、大和のもっとも美しい道のひとつと言われている。
 境内は、早春の梅花に始まり、春の桜と躑躅(つつじ)、初夏の紫陽花にホトトギス、夏のキョウチクトウ、秋の萩に紅葉、晩秋初冬の山茶花まで、四季折々の情景を見せてくれる。

 特に昭和四十年頃から植え始めたという紫陽花が有名で、山紫陽花や西洋紫陽花など約六〇種一万株が六月上旬から七月上旬にかけてお地蔵さんの間から身を寄せ合うように咲き誇る景観に酔いしれる。
 紫陽花を愛でた後は一如庵でお茶を楽しむとよい。茶室からは奈良盆地、若草山が見渡せる。
 「咲く花は 過すぐる時あれど わが恋ふる 心のうちは 止やむ時もなし」(万葉集)

 所在地:奈良県大和郡山市矢田町。
 交通:近鉄「郡山駅」から、奈良交通バス矢田寺前行き、矢田寺で下車徒歩5分。
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