突然の師走解散・選挙。巷の迷惑や大義が無いと批判されようが700億円かけた選挙は走り出している。「アベノミクス」への信任投票と位置付ける政権党、その看板の「3本の矢」。事実、「首相官邸」ホームページを見ると株価・経済成長率・企業業績・雇用等の数値を誇示、桜の花びらのイラストまで付けて「成果、続々開花中!」と自信満々である。果たして本当なのだろうか。景気回復の実感に乏しく、地方の状況はさらに厳しい。娘世帯の給与生活が楽になったとも聞いていない。せいぜい僅かの株の目減りを戻しているぐらいだ。そんな素朴な疑問に、この本は一助となる。第一の矢「金融政策」は<なぜ株価は上がり、円安になったのか>、第二の「財政政策」も中心となる<国土強靭化政策の年20兆円の公共投資は不可能>、そして<人口の減少を考慮していない>第三の「成長戦略」など、データを駆使して<そのいずれも誤りのものと断ぜざるを得ない>と説く。今の株価上昇に企業業績の反映という健全さは無く、政治がつくった人為的相場の危険性がある、というのに納得。加えて書いている<政治体制の改変こそが真の目的であり、「隠された」第四の矢である>ことも頷ける。倒れてリハビリ中という老経済学者の口述筆記での労作。まだまだ読み込みが必要だが、マスメディアが書かないだけに貴重なメッセージと思える。