昭和11年の2月26日に起きた二・二六事件を題材とした内容。事件後、首謀者の一人として拘束された青年将校と取り調べにあたる憲兵との2か月間を濃密に描く。将校の経歴、思想を探るために何人もの関係者からの聞き取りを通して浮かび上がるのは本人の事件との関わりだけではない。当時の社会情勢、陸軍内部の序列人事や派閥抗争、事件の誘発となる事柄があまりに多く存在。そして捜査の憲兵に度重なる妨害や襲撃。真相を暴かれることに困る大きな敵、黒幕がいるのではないか。小説とは言え昭和天皇はじめ実在の人物の考えや行動は、教科書などの表面的な知識に深い刺激を与える。20名近くが死刑となった日本の近代歴史のひとコマ。題名にあるサクリファイス(犠牲)とは誰か、誰のために、何のために。今、なお問題提起に考えてみた。
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