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高音部の作り方

2004-09-22 12:48:42 | 調律師の仕事
年2~3回ペースで仕事に行くお得意様がいますが、今回相談が
あって、高音部を高めに合わせてきました。
ピアノの音は高音部は高めに、低音部は低めに合わせないと、正しい音階
に聴こえないので、そのように広げるのだけど、その広げ方はピアノの
大きさ、メーカーごとの型式によっても違うし、調律師の好みにも
影響されます。
もちろん、お客さんの要望でということもあるわけですが、そこまで
細かい要求をする方は専門家のなかでも、非常に少ない。
仕事歴25年のなかで、そういった注文をしてこられた方は数人です。

調律師は、仕事を続けて行くうちに高音部をより高めに合わせる傾向が
出てくる例が少なくなくて、友人の調律師も私も自分の調律を見直し
高音の広げ方をやや抑えるように改良したことがあります。
それで低め傾向が続いていたところ、今回久々に高めを要求されたわけ。
ラベルとかドビュッシー、リストなどを得意とする方なので、そういう
曲には向いた調律と思われるけど、合わせ終わった時は気に入っていて
も、他の傾向の曲を弾いた時にどう感ずるか、次回はどう希望を出される
か気になりつつ時期を待つことに。

以前に、私が高め傾向にあった頃、あるピアノの先生に高音を低めに
してと何度も修正をさせられたことがあって、これ以上下げると和音が
汚くなりますよ、とお話したのだけど、なかなか一致点が見出せない時が
ありました。
まだ高い気がする…と言いつつ、私の作業を脇で見ているうちに、
調律師の音の確認の仕方に発見があったようで、それまで絶対的と
思っていたであろう自分の音感を、ちょっと見直してみる気持ちに
なっていただけたよう。
音感って中年になってからも変わるものなんですよね、調律師の合わせ方
にも微妙な変化はあるし、長年ピアノを教えている様な人でも変わります。
1~2年してその先生の選ぶ曲傾向に変化が出たきたのか、私の調律が
しっくり来るようになったようで、最近は一発で気に入ってもらえ
るようになったけど、辛抱強くお互い歩み寄った結果と思う。

お客様の要望にはできるだけ応えたいけれど、好みとか癖という以前の
技術者として譲れない基本線というのはありますから、気難しい方も多い
指導者や演奏家などのご機嫌を伺いながら、双方納得するところに
持って行くというのも、なかなか技の要ることです。

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