八木重吉「石」
半紙
石
ながい間からだが悪るく
うつむいて歩いてきたら
夕陽につつまれたひとつの小石がころがっていた
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八木重吉の詩集「貧しき信徒」の中の詩です。
「ながい間からだが悪るく」の一行は、
幼稚な印象さえ受ける表現ですが
重吉の背負った病を考えると、万感の思いが胸にせまります。
重吉は、肺結核のためにわずか29歳で亡くなっているのですから。
「うつむいて歩いてきた」とは、たぶん、それまでの重吉の人生そのものかもしれません。
そして最終行、「夕陽につつまれたひとつの小石がころがっていた」と書く。
「夕陽にてらされた」でも「夕陽に輝く」でもなく
「夕陽につつまれた」という表現に注目です。
そんな自分でも「神様がやさしく包んでくれている」ということでしょう。