芭蕉「奥の細道」より
卯の花は白妙に茨の花も咲そひて、雪にも越ゆる心地ぞする。
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久しぶりの「コラ書」です。
この初夏、ぼくは生まれて初めて「卯の花」を知りました。
今まで何度となく耳にしてきた「卯の花」でしたが、それがどういう花か
確かめようともしてこなかったわけです。
有名な「夏は来ぬ」の「卯の花の匂う垣根に」の歌詞。
そしてこの「奥の細道」の白川の関での記述。
この部分は、古文の教科書にとられることも多く
何度か授業でやってきたにもかかわらず、「卯の花」の実物を生徒に示すことはおろか
写真すら見せることなく「通過」してきたというわけです。
何という怠慢な教師だったのでしょう。
今年、舞岡公園での花の撮影をしていて、この真っ白に、こぼれるように咲いている花こそ
ウツギの花、つまり「卯の花」であることを知ったというわけです。
芭蕉が、白川の関で、この花の中を歩き、「雪にも越ゆる心地ぞする」と書いたのは
何も誇張した表現ではなくて、まさに実感だったのだと、今更ながら
わが身の不明を恥じるとともに、深い感慨を味わったのでした。
文学の鑑賞において、そこに出てくる土地や風俗を知っていることは重要なことですが
植物もまた、とても重要です。
学校に「庭」には、こうした文学に登場するような植物をつとめて植えるべきだなあと
学校をやめてしまった後で、痛感しています。
卯の花と一緒に咲いていた「茨」はこの「ノイバラ」だったのだろうと思います。
これも白くてカワイイ花です。