「方丈記」より
半紙
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世の中にある人と栖(すみか)とまたかくのごとし。
たましきの都のうちに棟を並べ、甍(いらか)を争へる
高き賤しき人の住ひは世々を経て尽きせぬものなれど
これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家は稀なり。
或は去年(こぞ)焼けて今年作れり。
或は大家ほろびて小家となる。
住む人もこれに同じ。
【口語訳】
世間の人を見、その住居を見ても、やはりこの調子だ。
壮麗な京の町に競い建っている貴賤(きせん)の住居は、
永久になくならないもののようだけれども、
ほんとうにそうかと一軒一軒あたってみると、
昔からある家というのは稀だ。
去年焼けて今年建てたのもあれば、
大きな家が没落して小さくなったのもある。
住んでいる人にしても、同じこと。
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先日、鎌倉生涯学習センターで、熊本支援チャリティー上映会として
行定勲監督の「うつくしいひと」という映画を見ました。
この映画は、熊本県が県のPRとして資金援助して作成された短編のドラマですが、
完成したのが、今年の春。
その直後に熊本地震が起きたのでした。
映画の中には、壮麗な熊本城の天守閣や、石垣が印象深く登場するのですが
もう、その景色は当分見ることができないのです。
完全修復には20年もかかるとのことで、ぼくなど生きているかどうか。
日本に生きていると、
やはりこの「無常(すべては変化する)」を実感せずにはいられないようです。