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一日一書 916 源氏物語・若紫 4

2016-06-22 15:25:59 | 一日一書

 

源氏物語・若紫の巻より

 

半紙

 

「何ごとぞや。童べと腹だちたまへるか。」とて

尼君の見上げたるに、すこしおぼえたるところあれば、

子なめりと見たまふ。

「雀の子を犬君が逃がしつる。伏籠のうちに籠めたりつるものを。」とて

いと口惜しと思へり。

 

【口語訳】

「いったいどうしたの? お友達と喧嘩でもなさったの?」といって

尼君が見上げた顔にすこし似ているところがあるので

(源氏は)これはこの尼君の子どもなのであろうと思って(女の子を)ご覧になる。

「雀の子を、犬ちゃんが逃がしちゃったの。籠の中にちゃんと入れておいたのに。」といって

ひどく悔しそうにしている。

 

 

けだるそうにうつむいてお経を見ていた尼君が、

女の子をふと見上げたその顔と女の子がどこか似ている。

それに気づいて、源氏は、ははん、この子は尼君の子どもなんだなと思うのです。

実は孫だったわけですけど。

その後の、女の子のセリフがカワイイ。

「犬君」っていうのは、別の女の子のあだ名で、犬じゃありません。

いたずら者の「犬ちゃん」が、わざと(たぶん)せっかく捕まえた雀の子を

逃がしてしまったらしい。

それをべそをかきながらおばあちゃんに(といっても40代ですが)訴えているわけです。

これが、1000年も前の作品とは到底信じられない。

今、ここに、いそうな子どもです。

紫式部は子どもを描くのがうまいということですが

うますぎです。

いつも脱帽してしまいます。

 

 

 

 


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