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一日一書 915 源氏物語・若紫 3

2016-06-21 15:36:16 | 一日一書

 

源氏物語・若紫の巻より

 

35×47cm

 

 

 

 

清げなる大人二人ばかり、さては童(わらわ)べぞ出で入り遊ぶ。

中に、十ばかりにやあらむと見えて、白き衣(きぬ)、山吹などの

なれたる着て、走り来たる女子、あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、

いみじく生(お)ひ先見えて、うつくしげなる容貌(かたち)なり。

髪は扇を広げたるやうにゆらゆらして、顔はいと赤くすりなして立てり。

 

【口語訳】

 こざっぱりした女房が二人ほど、それから女童(めのわらわ)が出たり入ったりして遊んでいる。

その中に、十歳くらいかと見えて、白い下着に山吹襲(やまぶきがさね)などの

着なれた表着(うわぎ)を着て、走って来た女の子は、大勢姿を見せていた子供たちとは比べものにならず、

成人後の美貌もさぞかしと思いやられて、見るからにかわいらしい顔だちである。

髪は扇を広げたようにゆらゆらとして、顔は手でこすってひどく赤くして立っている。



前回の「尼君」の描写も見事でしたが、

ここに登場してくる少女(後の紫の上・源氏の最愛の女性)の描写の見事さは他に類をみません。

「山吹襲」というのは、表が「薄朽葉(赤みがかった黄色)」で、裏が黄色の着物。

その下に白い着物という、何ともすがすがしい衣装の少女。

髪型がいわゆるおかっぱで、広げた扇のような形。その先端が走ってきたのでゆらゆら揺れている。

注目すべきは「生ひ先見えて」の語。決して「老い先」ではありません。

この子は、きっと将来美人になるだろうなあ、楽しみだなあと思わせる、それが「生ひ先見えて」です。

そういう子役は、テレビにもたくさん登場しますが、たいていは「がっかり」てなことになりがち。

でも、この子は、源氏の予想を裏切らないどころか、まさに理想的な女性に成長していくわけです。

 

 

長いので、半紙よりちょっと大きめの紙に書いてみました。

雁皮紙といって、にじみの少ない紙です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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